不安障害とは?種類ごとの特徴や症状、治療法について詳しく解説
更新日 2025年02月05日

不安障害にはさまざまな種類があり、それぞれ不安の対象となる要因や、身体的・精神的な症状が現れる状況が異なります。
他の精神疾患を併発しやすいほか、不安障害のなかでも複数の症状を同時に引き起こすケースがあるため、心身の負担につながります。
では実際、不安障害にはどのような種類・特徴があり、どう治療していく必要があるのでしょうか。
この記事では、不安障害の特徴や症状、治療法などを紹介します。
自分は不安障害かもしれないという懸念がある人や、誰かに不安障害を指摘された経験がある人は参考にしてください。
不安障害とは

不安障害は、日常のさまざまな場面で感じる不安や恐怖が通常よりも強く、長時間続くことで生活に支障をきたす精神疾患です。
試験会場や面接、スポーツの試合や習い事の発表会などの多少の緊張を感じる場面は誰にでもありますが、過剰な不安や恐怖を感じたり、危険ではないものに危機感を覚えたりする場合は不安障害である可能性があります。
生活に支障が出るだけではなく、精神的な疲れが蓄積することにもつながるため、アルコール依存やうつ病に発展するケースも少なくありません。
単純な心配性と捉えずに、精神科や心療内科を受診し早めに対処することが大切です。
不安障害の種類

ここからは、不安障害の種類とその特徴・症状について紹介します。
不安障害の種類については以下の記事でも詳しく解説しています。
▶不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説
パニック障害
パニック障害は、前兆がなく激しい不安・恐怖に襲われ、動悸や息苦しさなどの発作を引き起こす精神疾患です。
突発的に発生するパニック発作から始まり、また発作が起こることを過度に恐れる予期不安、場所に対して発作が起こることを危惧する広場恐怖などに発展すると、この3要素が悪循環を形成して症状の悪化につながります。
パニック障害が重度になると、引きこもりやうつ病につながる恐れがあるため、予期不安や広場恐怖が現れる前の早い段階で治療を受けるのが望ましいです。
症状
パニック障害でみられる身体的・精神的な症状には以下のものがあります。
• 動悸や心拍数の上昇
• 冷や汗が出る
• 身体の震え
• 息切れ・息苦しさ・呼吸困難
• 胸が痛い・苦しい
• 腹部の異常・吐き気
• 身体が冷える・熱くなる感覚
• 感覚の麻痺や身体の疼き
• めまい・意識が遠のく
• 原因不明の不安・恐怖
• 現実感の消失・自分が自分でないように感じる
• 感情や身体がコントロールできずに、狂いそうになる
• 死ぬかもしれない恐怖を感じる
パニック障害は、日常生活で突然現れる動悸や呼吸困難などの身体症状や、激しい不安・恐怖などの精神症状が発症後10分以内にピークを迎え、時間を空けて繰り返されるのが特徴です。
パニック発作は場所や状況を問わず起こる可能性があるため、日常生活に大きな支障をきたします。
広場恐怖はパニック障害の患者さんに必ず現れる症状ではありませんが、特定の場所や状況で発作が起こりやすい人もいます。
社交不安障害
社交不安障害(別名:あがり症)は、人に注目される状況で話したり何かをしたりすることに対して極端な恐怖を感じる状態で、いわゆる対人恐怖症や赤面恐怖症などが含まれます。
人前でのスピーチや面接のほか、電話対応や会食などをきっかけに症状が現れる場合があり、進学や就職などの大切なイベントに悪影響を及ぼす可能性があります。
性格の問題と捉えられがちですが、適切な治療を受けることで多くのケースで改善が可能な病気です。
症状
社交不安障害でみられる症状には以下のものがあります。
• 手足の震え
• 顔のほてり・赤面
• 顔が引きつる
• 発汗
• 動悸・息苦しさ
• 吐き気
• 胃の不快感
• 声の震え・上手く話せない
社交不安障害では、人前で恥ずかしい思いをするかもしれないという不安から、顔のほてりや赤面、息が詰まる感じなどが症状として現れます。
人と会話をしない電車やバス、街中の人混みなどの場所で人目が気になって苦痛を感じることで、パニック障害と同じ発作を引き起こすケースもあります。
人と関わる場面を避ける状態までエスカレートすると、塞ぎこみがちになり引きこもってしまうケースも少なくありません。
一度経験した恥ずかしい体験や失敗が原因になることがありますが、思春期の場合では自分に自信がないことで発症するケースも多いです。
全般性不安障害
全般性不安障害は、日常のなかで漠然とした不安や恐怖などを強く感じ、その感情を自分で制御できないことで生活に支障を及ぼす精神疾患です。
家族・友人・学校・職場などの生活におけるさまざまなことが極度に気になり、身体的な症状のほかに、落ち着かない・集中できない・よく眠れないなどの症状もみられます。
他人からは心配性・神経質などの印象をもたれることがあるため、精神疾患からくる不安であることが発覚しにくい問題点があります。
しかし、全般性不安障害がある人は常に強い不安と隣り合わせであるため、普通に生活できずに苦労することが多いです。
症状
全般性不安障害でみられる身体的・精神的な症状には以下のものがあります。
• 頭の不快感
• 首や肩の凝り・強張り
• 動悸・冷や汗
• 焦燥感・そわそわ感
• めまいや息苦しさ
• 手足や全身の冷え・ほてり
• 冷や汗・下痢・吐き気
• 便秘・頻尿
• イライラを感じやすい
• じっとしていられなくなる
• 集中力の低下
• 些細なことが気になって仕方ない
• 睡眠障害がある
全般性不安障害は不安や恐怖を常に感じるのと同時に、強い身体症状を伴いやすい特徴があります。
イライラや筋肉の緊張、そわそわ感などを伴うことで寝付きにくくなり、睡眠障害に発展するケースもあります。
日常のすべての場面に不安の要素が散在している状態ですが、決まった不安要素があったり、2〜3日ほどの短い期間で終了したりする一時的な不安や恐怖の場合は全般性不安障害とは診断されません。
強迫性障害
強迫性障害は、特に大事ではないことが頭から離れず、同じ行動や確認動作を不必要に繰り返してしまう精神疾患です。
例えば、きれいになっていないと感じることで手洗いを過剰にしたり、火の元や戸締りの確認を何度行っても不安が拭えなかったりするなどの症状がみられます。
頭に浮かんだ思考が不合理だと分かっていても払いのけられない(強迫観念)、その思考に従った行動をせずにはいられない(強迫行為)などの特徴があり、うつ病を併発するリスクもあるため早めの受診が推奨されます。
症状
強迫性障害でみられる症状には以下のものがあります。
症状一覧 | 恐怖例・具体例 |
---|---|
不潔恐怖・過度な洗浄 | • 不潔への恐怖から手洗い・入浴・洗濯を繰り返す • 手すりやドアノブを汚いと思い込み、触れない |
加害恐怖 | • 知らない他人に危害を加えてないか不安になる • 事件や事故のニュース・新聞で報じられていないか心配になる • 周囲の人や警察に自分が問題を起こしていないか聞いて回る |
確認行為 | • ガスの元栓や戸締り、電子機器のスイッチなどのon/offを何度も確認する(見る・触る・しばらく見張る・指差しするなどの過剰な確認) |
儀式行為 | • 物事を決めた手順で行わないことに強い不安を感じる • 仕事や家事などの作業を毎回同じ順番で行わないと恐ろしいことが起こると恐怖を感じる |
数字へのこだわり | • 数字の縁起が良い・悪いに対して異常な執着がある |
物の配置や対称性へのこだわり | • 物の配置や対称性に強いこだわりがある • 自分の思う取りになっていないと不安を感じる |
強迫性障害では、考えすぎや気にしすぎからくるさまざまな症状がみられ、妄想からくる思い込みや不必要な心配を伴う場合があります。
ただの神経質や心配症なのか、強迫性障害なのかの区別が難しいケースもあるため、日常生活に支障をきたしているかや周囲の人を巻き込んでいるかなどを判断基準にするのが有効です。
手洗いや戸締りのしすぎで待ち合わせに遅れたり、ガスの元栓を確認しに家に戻ることでスケジュールが予定通り進まなかったりする場面が多いと、心身の疲弊にもつながります。
また、確認作業を他人にも無理強いしたり、手洗いや消毒を強制したりするなど、周囲の人を巻き込むことで人間関係に破綻が生まれる可能性もあります。
強迫性障害の場合は、「自分は大丈夫だ」「気にしすぎではない」など自覚が薄い場合があり、疾患に気が付かないケースもあるため、周りの人から指摘されたり困った様子があったりする際は受診を検討しましょう。
限局性恐怖症
限局性恐怖症は、通常では恐れるほどではない特定のものや状況に対して強い恐怖心や拒否反応を示す精神状態です。
例えば、クモ・ムカデなどの虫や、高所・暗所・閉所などの状況は多くの人がそれなりに怖いと感じるものですが、限局性恐怖症ではこのような対象に関して過度な恐怖を抱きます。
性格や環境、過去の出来事などの要因によって恐怖の対象には個人差が生じるため、負の感情がもっとも弱いものから徐々に慣らしていく心理療法が有効です。
症状
限局性恐怖症でみられる症状には以下があります。
• 動悸・呼吸のしづらさ
• 冷や汗・大量の発汗
• 足がすくむ・動けない
• 恐怖のあまりやるべきことが手につかない
• 恐怖の対象が常に気になる
限局性恐怖症の身体症状は、複数の症状を同時に発症するケースが多く、動機や息苦しさなどが恐怖心をさらに増強させる可能性があります。
パニック発作と同様の症状があると日常生活に支障をきたす可能性が高くなり、心身の負担も増加します。
恐怖の対象への嫌悪感で日常的に苦痛を感じる場合は、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。
不安障害の要因

以下の要因は、不安障害が発症する原因であるとされています。
子どもの不安障害については以下の記事で詳しく解説しています。
ネガティブなライフイベント
過去に体験した苦い思い出や、トラウマになるほどの出来事が原因になる可能性があります。
• 家族や配偶者など、かけがえのない人を失った
• 命の危険がある疾患や災害の経験
• 親から受けた虐待・愛情不足
• 大切な人との関係破綻
• 住み慣れた環境からの離別
記憶から消えないような悲しい・恐ろしい出来事や、安心できる環境から離れる経験があると不安障害になりやすいです。
不安や恐怖は人が自身を守るために持って生まれてくる感情であるため、完全になくなってしまうと危険ですが、精神面にダメージを受けることでそれが増強されてしまう可能性があります。
トラウマとなる疾患の種類によってはうつ病を併発するリスクが高まる可能性があるため、注意が必要です。
日常におけるストレス
日常におけるさまざまなストレスが不安障害の原因になる場合があります。
• 加齢による身体機能・認知機能の低下
• 経済的な問題
• 失業による社会的地位の喪失・社会的孤立
• 家族や恋人、同僚とのトラブル
ストレスは、人が普通に生活していくうえで常に共存しているものであるため、さまざまなストレスが不安障害の原因になる可能性があります。
ストレスを完全に排除することは難しいですが、不安障害の原因となるストレッサーが明確である場合は、それに対処したり治療によって克服したりすることが大切です。
生物学的要因
脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンなどの分泌に異常があることで発症リスクが上昇するとされています。
特に、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンは、脳の扁桃体の活動を抑えることで不安や恐怖を軽減する役割を果たします。
反対に、ノルアドレナリンは不安や恐怖の原因となる扁桃体を過活動状態にする働きをするため、過剰になると不安障害の悪化を引き起こしやすいです。
不安障害では、これらのホルモンの分泌が乱れることで強い不安や恐怖を感じる可能性があります。
不安障害の治療法

不安障害の治療法には、主に以下の種類があります。
• 薬物療法
• 抗うつ薬
• 抗不安薬
• 睡眠薬
• 漢方薬
• カウンセリング
• 認知行動療法
• 暴露療法
薬物療法では、主に抗うつ薬や抗不安薬が使用され、カウンセリングでは、認知行動療法や暴露療法によって症状の改善・緩和を図ります。
抗うつ薬や抗不安薬は、不安感や恐怖心の軽減や身体症状への即効性に効果が期待できます。
薬に依存しないように、医師に指示に従って服用する量や飲むタイミングを守ることが大切です。
カウンセリングでは、主に認知行動療法によって極端な思考を見つめ直し、ネガティブな方向に考えないように修正します。
不安や恐怖の対象に直接さらされることで少しずつ克服していく、暴露療法と組み合わされるケースもあります。
薬の使用は対症療法ですが、認知行動療法や暴露療法では不安障害の根本的な治療が可能です。
つらい不安は我慢せず早めの治療を
日常生活の出来事に対して過剰な不安や恐怖を感じる不安障害は、精神的・身体的に大きな負担がかかります。
自分で気が付きにくいケースもあるため、悪化や他の病気の合併が起こる前に精神科や心療内科を受診して適切な治療を受けることが大切です。
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