アスペルガー症候群の子どもの特徴は?自閉症との関係も解説

アスペルガー症候群は発達障害のひとつで、子どもから大人までさまざまな症状が見られます。
友だちとの関係が上手く築けない、こだわりが強いなどの特性が見られる場合は、もしかしたらアスペルガー症候群かもしれません。
この記事では、アスペルガー症候群の子どもの特徴や、自閉症とどのような違いがあるのかなどを解説します。
子どものアスペルガー症候群について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
アスペルガー症候群とは

アスペルガー症候群とは、1944年にオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーの報告により発見された、発達障害のひとつです。
当初はあまり注目されていませんでしたが、1980年代にイギリスの児童精神科医ローナ・ウィングにより再発見され、アスペルガー症候群という診断名で呼ばれるようになりました。
アスペルガー症候群の特性としては、対人関係やコミュニケーションの困難さ、こだわりの強さ、反復性、感覚過敏・感覚鈍麻などが挙げられますが、症状の現れ方は個人差があります。
自閉スペクトラム症との関係
アスペルガー症候群は、現在では自閉スペクトラム症(ASD)に含まれており、独立した診断名ではなくなっています。
自閉スペクトラム症には、アスペルガー症候群の他に、自閉症や広汎性発達障害が含まれ、これらは自閉症障害の連続体と考えられています。
2013年にアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5が発表されて以降、自閉スペクトラム症と総称されるようになりました。
(参照:「自閉スペクトラム症(ASD)の特性理解」傳田 健三)
アスペルガー症候群の原因
アスペルガー症候群を始めとする自閉スペクトラム症の原因は、まだ研究途中で明確に特定されていません。
先天的な脳の機能障害によるものとはわかっていますが、なぜ起こるのかは判明していない状態です。
遺伝的要因、遺伝子、妊娠前や妊娠中の環境的要因などが複雑に絡み合っていると考えられています。
アスペルガー症候群は生まれつきの脳の特性のため、親の関わり方や愛情のかけ方、虐待の有無など、生後の育児環境が原因ではありません。
アスペルガー症候群の発生頻度
アスペルガー症候群は現在自閉スペクトラム症に統一されており、自閉スペクトラム症の発生頻度は、5歳児で3.22%と報告があります。
(参照:「5歳における自閉スペクトラム症の有病率は推定3%以上であることを解明」弘前大学)
日本自閉症協会は、人口に対しておよそ20〜40人に1人(2.5〜5%)の割合で自閉スペクトラム症の方が存在するとしています。
男女比は4:1で男性の方が多いとされてきましたが、女性の発達障害は診断が難しく、見逃されやすい傾向があるため研究が少ない状態です。
(参照:「わが国における自閉症スペクトラム障害の女性への支援に関する文献的考察」岩男 芙美)
アスペルガー症候群と自閉症はどう違う?

アスペルガー症候群と自閉症は、広い意味で連続性があり、現在は自閉スペクトラム症と総称されています。
自閉スペクトラム症のなかでも、旧診断名として使い分けることもありますが、どのような違いがあるのか詳しく解説します。
アスペルガー症候群は知能や言葉の遅れの症状がない
アスペルガー症候群は、自閉症と類似した症状が現れますが、大きな違いとして知能や言葉の遅れがないことが挙げられます。
知的障害や言語遅延がないため、学習においては問題がない場合も多いです。
子どもの頃の特性は「個性」として捉えられ、アスペルガー症候群に気付かないケースも少なくありません。
大人になって社会生活において困りごとが多くなったり、仕事に支障をきたしたりして、二次障害(適応障害や不安障害など)を発症し、アスペルガー症候群の診断を受けることもあります。
アスペルガー症候群の子どもの特徴|主な症状

アスペルガー症候群の特性がある子どもは、大きく分けると「対人関係や社会的コミュニケーションの困難さ」と、「特定のものや行動における反復性やこだわり」の特徴があります。
自閉症と違い知能や言語の特性が見られないため、アスペルガー症候群と他の発達障害を見分けるのは困難です。
ここでは、アスペルガー症候群でよくある特徴をまとめました。
アスペルガー症候群の特性や現れる症状は一人ひとり異なるため、気になるときは専門機関に相談しましょう。
対人関係が苦手
アスペルガー症候群の子どもは一人遊びをすることが多く、他者への興味が薄い傾向があります。
周りの友だちが夢中になっていることに無関心だったり、距離感がわからなかったりすることもあり、「変わっている子ども」と認識されることもあります。
また、年上にリードされて遊ぶ、年下に指示しながら遊ぶことはできても、同年代の子ども同士で対等な関係で遊ぶのが苦手な子が多いです。
他の子どもを思いやるよりは仕切りたがる傾向があるため、同年代のなかでは思い通りにいかずに癇癪を起こしやすく、一人遊びの方が楽しいと感じます。
社会的コミュニケーション障害
アスペルガー症候群はコミュニケーションをとるのが苦手な特性があります。
言語の習得や知能の発達には問題がないため、会話をすることはできますが、上手なコミュニケーションは困難な傾向があります。
例えば、相手の顔や空気から感情を読み取る、言葉の裏を読む、言葉のキャッチボールをするのが苦手です。
大人の使う言葉をそのまま使ったり、自分のタイミングで言葉を発したりするため、コミュニケーション方法が独特で、同年代の友だちとの関係が上手くいかないことも少なくありません。
興味や行動の限定(こだわり)
アスペルガー症候群の子どもは、こだわりが強く興味や行動の向く範囲が狭いのが特徴です。
毎日決まったルーティンをこなすのが得意で、興味があることには驚くほどの集中力を発揮します。
反対に、変化への対応は苦手だったり、興味がないことは話も聞かなかったりするなど、極端な面が目立つのも特徴のひとつです。
機械的記憶(暗記力)に特性が現れている場合は、漢字の習得や地名の記憶などが優れているケースも見られます。
しかし、予定が変わることへの強い抵抗があってパニックになってしまうこともあり、こだわりの強さが日常生活に影響を与えてしまう可能性もあります。
感覚過敏・感覚鈍麻
アスペルガー症候群の子どもには、光や音、匂いなど五感の感覚過敏や、逆に痛みや温度の変化に気付かない感覚鈍麻が現れることがあります。
感覚鈍麻のある子どもは、危険なものから遠ざけ、触ってはいけないものを伝えるなどして、ケガの予防をすることが重要です。
乳幼児の頃から特性がある子どもは、特定の感覚が過敏すぎて激しい拒否反応を示すケースも見られます。
皮膚の感覚過敏があって服を着るのを嫌がったり、聴覚が過敏なため工事現場でパニックを起こしたり、一人ひとり症状の現れ方はさまざまです。
発達障害の特性で服を着たがらない理由については、以下の記事も参考にしてください。
▶発達障害の子どもが服を着たがらないのはなぜ?原因や対処法を紹介
身体を動かすのが苦手
アスペルガー症候群の子どもは、身体を動かすのが苦手な場合があります。
運動が苦手だったり、手先が不器用だったりと、症状の現れ方は人それぞれです。
身体をどう動かすのかのイメージがつきにくく、脳からの指令が上手く伝えられないことが関係していると考えられています。
動きがぎこちなくなるため運動ができず、体育が苦手な子どもが多いです。
手先の不器用さは細かい作業だけでなく、靴紐を結ぶ、箸を使うなどの日常にも影響があります。
発達障害と運動の関係については、以下の記事も参考にしてみてください。
▶運動音痴は発達障害?苦手な人・得意な人の違い&発達性協調運動障害(DCD)について解説
アスペルガー症候群の子どもの特徴|年齢別

アスペルガー症候群の子どもの特徴は、年齢によって現れ方が異なります。
ここでは、成長過程により変化する症状について、詳しく解説します。
ただし、当てはまったとしても必ずしもアスペルガー症候群の特性とは限らないため、心配な場合は早めに専門機関に相談しましょう。
乳児期(0~1歳頃)
アスペルガー症候群の特性は、知能や言語には現れず、行動や反応に見られます。
しかし、症状の程度は一人ひとり異なるため、乳児期の症状だけでは診断できないことも少なくありません。
アスペルガー症候群の乳幼児期によくある特徴は、以下の通りです。
- 視線が合わない
- 呼んでも振り向かない
- 笑わない
- 添い寝や抱っこを嫌がる
- 小さな音でも嫌がって泣く
- 絵本の同じページを見続ける
- 同じおもちゃで遊び続ける など
幼児期(2~5歳頃)
幼児期になると、保育園や幼稚園などで友だちとの関わり方により、アスペルガー症候群の特徴が見られるケースが増えてきます。
また、乳幼児健診(1歳6ヶ月健康診査、3歳健康診査)で発達障害の兆候が発見されることも多い時期です。
(参照:「乳幼児健康診査における発達障害の早期発見・早期支援のための取組事例に関する調査研究報告書」株式会社政策基礎研究所」(厚生労働省))
幼児期によくある特徴は、以下の通りです。
- 一人遊びが多い
- ごっこ遊びが苦手
- 集団行動が苦手
- 友だちとのトラブルが多い(言葉の行き違いやルールを守れないなど)
- 言葉のオウム返し
- 同じ言葉を繰り返す
- 好き嫌いが激しい
- 親が怒っても表情や雰囲気で伝わらない など
小学生(6~12歳頃)
アスペルガー症候群の子どもは、小学生になると困りごとが出てきて、過ごしにくくなる可能性が高まります。
特性によっては周囲の理解や支援が必要になることもあるため、子どもに合わせた対応を学校と相談してみましょう。
小学生の時期によくある特徴は、以下の通りです。
- 得意・不得意が極端で成績に現れる
- 体育が苦手
- 一人でいることが多く孤立する
- 相手の気持ちを理解するのが苦手
- 思ったことをすぐ言葉にしてしまう
- 時間割通りに行動するのが得意(変更があると混乱する) など
暗記は得意でも具体的なイメージがつきにくい分数や小数などは理解できないなど、知能の発達ではなく、アスペルガー症候群の特性によって苦手な分野がはっきりしてきます。
ただし、ADHD(注意欠如・多動症)や学習障害(LD)を併発している場合は、異なる症状が現れる可能性もあります。
学年が上がると対人関係も複雑になり、空気が読めない、冗談や大げさな表現をそのまま受け取ってしまうなどでトラブルも増える傾向があります。
本人も「どうして上手くできないのか」と悩んでいることが多いため、学校生活に支障が出る前に、専門機関に相談して対応策を一緒に考えましょう。
発達障害と勉強の関係や対策については、以下の記事も参考にしてください。
▶発達障害の子どもは勉強が苦手?種類ごとの学習困難の特徴や対策を紹介
中高生(12~18歳頃)
通常でも難しい時期である中高生では、思春期とも重なり、アスペルガー症候群の子どもが苦しんでいるケースも少なくありません。
助けが必要な場面も増えるため、子どもの様子をよく見て、専門機関や学校と相談しながら環境を整えるのが重要です。
中高生の時期によくある特徴は、以下の通りです。
- 学校に行かなくなる
- 友だちづくりが苦手
- からかわれると本気にして傷ついてしまう
- 得意と不得意な勉強がより明確になる
- 定期テストや受験に向けて勉強の計画を立てるのが苦手
- 自分の見た目に興味がなく、身だしなみに無頓着 など
アスペルガー症候群の特性で対人関係やコミュニケーションが苦手な子どもは、周りに合わせた会話や暗黙の了解を理解できず、友だちとの交流が上手くできずに悩んでいることも珍しくありません。
勉強面や生活面の悩みも重なり、学校へ行きたがらなくなることもあります。
中高生になると自分の特性を理解している場合も多く、行動療法や環境調整により困りごとを減らせる可能性もあるため、専門機関に相談してみましょう。
子どもにアスペルガー症候群の特徴があると気付いたら専門機関に相談しましょう
アスペルガー症候群の特徴は、一人ひとり異なり、症状も人それぞれ違います。
紹介した症状が当てはまっていてもいなくても、その子にとって必要なサポートや環境はさまざまです。
どのような特性があるのか、何が得意で不得意なのかをよく見て、専門機関へ相談しながら、適切なサポートを一緒に探していくのが重要です。
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