「どうしてこんなにイライラが止まらないんだろう」と悩み、自己嫌悪に陥ってしまう人も少なくありません。
イライラの原因はストレスや疲労だけでなく、ホルモンバランスや心の不調が影響していることもあります。
また、職場や家庭での対人関係、こなすべき作業の多さなど、日常の中には無意識に感情をすり減らす要因が潜んでいます。
この記事では、イライラが止まらない背景にある原因や考えられる病気、そして日常生活で取り入れやすい対処法までを詳しく解説します。
止まらないイライラの背後にある主な原因

イライラが止まらない背景には、日常生活の中に潜むさまざまな要因があります。
慢性的なストレスや人間関係の疲れ、ホルモンバランスの乱れなど、心と身体の両面から影響を受けている可能性があります。
まずは、どのような要素がイライラを引き起こしているのか、自分の状態を知ることからはじめていきましょう。
蓄積された慢性的ストレス
イライラが止まらない背景には、蓄積された慢性的なストレスが大きく関係しています。
特に人間関係のストレスは、職場や家庭など日常のあらゆる場面で発生しやすく、無意識のうちに心身に負担をかけています。
厚生労働省の「令和6年度 過労死等防止対策白書」では、仕事にストレスを感じている人が約82%に上ると報告されており、業務量の多さや評価への不安などが主な要因とされているようです。
ストレスを感じると交感神経が優位になり、身体は常に緊張状態になります。
これが続くと、コルチゾールなどのストレスホルモンが分泌され、心のバランスが崩れやすくなります。
すると、ちょっとした出来事にも敏感に反応し、イライラを感じやすくなってしまうのです。
慢性的なストレスに気づかず我慢を続けることは、感情の暴発につながるリスクを高めます。
自分がどんな場面でストレスを受けやすいのかを把握し、適度な発散や休息を心がけることが大切です。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、イライラが止まらない原因のひとつとして見逃せません。
特に女性は、月経周期、妊娠・出産、更年期といったライフステージでホルモンの大きな変化を経験するため、心の状態も不安定になりやすくなります。
急に感情が高ぶったり、理由もなくイライラしてしまったりするのは、決して気の持ちようや性格のせいではなく、身体からのサインかもしれません。
ホルモンによる影響だと気づくことで、「なんでこんなに怒りっぽいんだろう」と自分を責める気持ちがやわらぎ、自分をいたわる視点へと切り替えるきっかけになります。
イライラが続くときは、頑張ることよりも、まずは心と身体をゆるめる時間を大切にしましょう。
睡眠不足や疲労
十分な睡眠がとれない状態は、イライラを引き起こす大きな原因のひとつです。
睡眠が不足すると、心身が回復しきれず、ストレスに対する耐性が下がり、怒りっぽくなる傾向があります。
さらに、寝不足によって頭痛や胃の不快感などの身体的不調が起こると、感情のコントロールがより難しくなります。
特に、仕事や家事などやるべきことが多すぎると疲労がたまり、睡眠の質や量を圧迫する悪循環に陥りやすくなります。
また、疲労が続くと幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの分泌も減少し、精神的に不安定な状態になりやすいです。
日々の忙しさに追われていると、疲れを自覚しないまま限界を超えてしまうこともあるため、「疲れているかも」と気づいた時点でこまめな休息をとることが大切です。
睡眠時間の確保だけでなく睡眠の質にも目を向け、寝室環境や生活リズムを見直すことが、イライラ対策の第一歩になります。
栄養バランスの乱れ
飽食の時代と言われる現代ですが、実は「必要な栄養が足りていない」または「一部の栄養だけ摂りすぎている」という“新型栄養失調”の人が増えています。
こうした栄養の偏りは、心のバランスにも大きく影響します。
以下は、特に不足しやすく、感情の乱れと関係が深い栄養素と、それによって起こりやすい不調の一例です。
栄養素 | 起こりやすい状態 |
糖(血糖値) | ・低血糖によるだるさ・眠気・イライラ ・脳内ホルモンバランスの乱れ |
カルシウム | ・自律神経の乱れによるストレスや怒りっぽさ |
亜鉛 | ・気力の低下 ・うつや不安障害との関連も |
ビタミンB群 | ・不安、イライラ、焦り、疲労感 |
鉄 | ・やる気や集中力の低下 ・慢性的な疲れ、冷え |
必須アミノ酸 | ・セロトニン不足 ・不安感や気分の落ち込み |
タンパク質 | ・ホルモン生成の減少 ・免疫力の低下 ・ストレスに弱くなる |
また、糖質を過剰に摂取すると、血糖値が急激に上下して脳が混乱し、イライラや倦怠感につながることもあります。
心の安定には、バランスの取れた食事を意識することが欠かせません。
日々の栄養状態を見直すことは、イライラ対策としても非常に効果的です。
イライラが止まらないときに考えられる精神疾患

イライラが長期間続いたり、ちょっとしたことで感情が爆発したりする場合、何らかの精神疾患が関係している可能性もあります。
ここでは、イライラと深く関係する代表的な病気について紹介します。
月経前症候群
PMS(月経前症候群)は、月経の3〜10日前に現れる身体的・精神的な不調の総称です。
月経が始まると自然に症状が軽くなったり、消えたりするのが特徴で、頭痛や倦怠感、むくみ、イライラ、抑うつ、不安、集中力の低下などが見られます。
こうした変化は、女性ホルモンの分泌量やバランスが急激に変動することが関係していると考えられています。
この中でも特に精神的な症状が強く、日常生活や仕事に支障をきたす状態をPMDD(月経前不快気分障害)と呼びます。
強い怒りや感情のコントロール困難、深い落ち込みなどが繰り返し起こる場合は注意が必要です。
月経前の時期に毎回同じような症状が出る場合は、自己判断せず婦人科などで相談することが、適切なケアや治療につながります。
▶PMSはストレスで悪化する?症状がひどくなる要因やストレス解消法について解説
自律神経失調症
自律神経失調症は、自律神経の働きが乱れることで起こるさまざまな心身の不調をまとめた呼び名です。
自律神経は体温や血圧、呼吸、消化などを自動的に調節する重要な役割を担っており、そのバランスが崩れると、めまい、動悸、頭痛、倦怠感といった身体症状だけでなく、感情面にも変化が表れます。
特に、気分が不安定になりやすく、些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったりすることがあります。
これらの感情の変化は本人の意思で抑えることが難しく、長引くと家族や職場など周囲との関係にも影響が出る場合があるので注意が必要です。
原因にはストレスや生活習慣の乱れ、ホルモンバランスの変化などが関わっており、十分な休養や規則正しい生活、ストレス軽減の工夫が改善への第一歩となります。
うつ病
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下が長期間続き、仕事や家庭など日常生活に支障をきたす精神疾患です。
単なる一時的な落ち込みや疲労とは異なり、脳内の働きに変化が生じていると考えられています。
特に、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスが崩れることで、気分や意欲の調整がうまくいかなくなり、症状が長引くことがあります。
うつ病によるイライラは、気分の低下だけでなく、不安や慢性的な疲労の蓄積によって感情をコントロールしにくくなるのです。
普段なら気にならないことにも過敏に反応したり、些細なことで怒りやすくなることがあり、ときには家族や身近な人に感情をぶつけてしまう場合もあります。
こうした反応は本人にとってもつらく「なぜこんなに怒ってしまうのか」と自分を責めてしまうことも少なくありません。
適応障害
適応障害とは、特定の出来事や環境の変化が強いストレスとなり、気分の落ち込みや意欲の低下、不眠、集中力の低下などの症状が現れ、日常生活に支障をきたしている状態を指します。
原因となるストレス要因は人によって異なり、仕事の異動や転勤、就職・退職といった職場環境の変化、結婚や離婚などの家庭環境の変化、恋愛のトラブル、友人や家族との人間関係の問題、進学や引っ越し、さらには病気の診断を受けたことなど、さまざまです。
これらの原因が比較的最近起こり、かつ明確に特定できる場合には、適応障害の可能性が考えられます。
症状が続くと感情のコントロールが難しくなり、イライラが強まることもあるため、早めにストレス要因を整理し、必要に応じて専門家へ相談することが大切です。
▶適応障害とは?再発率や兆候・繰り返さないための対策・復職時の注意点を解説
境界性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害は、自分や他者に対する認識、感情のコントロール、人間関係が不安定になりやすい心の病気です。
特に対人関係で「見捨てられた」と感じたとき、強い怒りや衝動的な行動が抑えられなくなることがあります。
こうした反応は一時的な感情の高ぶりにとどまらず、繰り返されることで周囲との衝突や関係の断絶を招き、深い孤独感や自己否定感を強めてしまうことも少なくありません。
また、感情の浮き沈みが激しく、気分や考えが短時間で変わるため、自分でもコントロールできず疲弊してしまう場合があります。
日常生活や人間関係に支障が出ていると感じたら、早めに専門家へ相談し、カウンセリングや治療を受けることが大切です。
日常生活に取り入れやすいイライラ解消法

イライラをため込まず上手に解消するためには、日常の中で無理なく続けられる習慣を持つことが大切です。
深呼吸やストレッチ、生活習慣の見直し、趣味の時間など、小さな工夫が感情の安定につながります。
ここからは、日常生活に取り入れやすいイライラ解消法をご紹介します。
深呼吸・ストレッチで自律神経をリセットする
呼吸は感情と密接に関わっており、緊張しているときは浅く速く、リラックスしているときはゆったりと深くなります。
このため、呼吸を意識的に整えることはストレスの軽減や感情の安定に有効です。
特に深呼吸には、交感神経と副交感神経のバランスを整える、心を落ち着かせる副交感神経を優位にする、新鮮な酸素を全身に巡らせるといった効果が期待できるのです。
加えて、軽いストレッチを組み合わせると血流が促進され、筋肉の緊張がほぐれ、さらにリラックスしやすくなるのでおすすめです。
朝や就寝前、またはイライラを感じた瞬間に、ゆっくりと息を吸って吐きながら身体を伸ばすだけでも、自律神経の乱れをリセットしやすくなります。
日常に取り入れやすいシンプルな方法として、こまめに実践することが大切です。
イライラした感情をすべて書き出す
イライラした感情を紙やメモにすべて書き出すことは、気持ちを落ち着かせるための有効な方法です。
頭の中だけでモヤモヤを抱えていると、感情がぐるぐると循環し、さらにストレスが強まることがあります。
そこで、怒りや不満、不安などを言葉として外に出すことで、感情を客観的に整理しやすくなります。
特に、人に話しづらい悩みや感情は、自分の中にため込むほど重く感じやすいため、まずは紙に書いて吐き出してみましょう。
書き出した内容を見返すことで、問題の本質や自分の考え方の癖に気づくこともあります。
こうした振り返りは、感情をコントロールする第一歩となり、結果的にイライラの軽減につながるのです。
周囲の人に相談して感情を整理する
周囲の信頼できる人に相談することは、感情を整理し、イライラを和らげる有効な方法です。
気心の知れた相手との会話は、たとえ他愛のない雑談でも心を軽くしてくれます。
悩みを口に出すことで、自分の考えや感情を客観的に整理でき、相手からの思いがけない意見やアドバイスが解決の糸口になることもあります。
時には、ただ聞いてもらうだけで胸のつかえが取れ、安心感を得られるでしょう。
忙しさや精神的な負担から人との関わりを避けてしまうこともありますが、つらい時期こそ信頼できる人に話しかけることで、心が軽くなり、気持ちを前向きに整えるきっかけになります。
自然や動物とふれ合う
自然や動物とふれ合う時間を持つことは、心を穏やかにし、イライラを和らげる有効な方法です。
森林や公園など緑の多い場所では、木々から放出される「フィトンチッド」という成分が心身をリフレッシュさせ、ストレス軽減に役立つといわれています。
たとえ短時間でも、自然の中を散歩するだけで気持ちが落ち着きやすくなるでしょう。
近年は、日常生活から離れて心身を癒やす「リトリート」や、旅先で余暇と仕事を両立する「ワーケーション」なども広まりつつあります。
こうした時間を意識的に取り入れることで、自然と触れ合う機会を増やしながら、心のリセットが可能です。
もし遠出が難しい場合は、近所の公園や庭での散歩、動物カフェやペットとの時間など、身近な方法から始めるのもおすすめです。
自然や動物とのふれ合いは、日常の緊張をほぐし、心をやさしく整えてくれます。
好きなことを楽しむ
イライラを感じたときは、意識的に自分の好きなことに時間を使うことが効果的です。
趣味や楽しいと感じる活動に集中している間は、嫌な出来事やモヤモヤから心が離れ、自然と気持ちが軽くなります。
実際に、好きなことに没頭しているうちにいつの間にかイライラが収まり、すっきりとした気分になった経験がある方も少なくありません。
また、好きなことを楽しむ時間は、心を前向きな方向に切り替えるスイッチにもなります。
特別な準備や大きな行動は必要なく、日常の中で無理なくできる小さな楽しみを見つけるだけで十分です。
音楽を聴く、読書をする、カフェで過ごす、好きな香りを楽しむなど、自分なりの「癒やし時間」を生活の中に取り入れてみましょう。
イライラが止まらないときは受診も選択肢に
日常生活や人間関係に支障が出るほど感情がコントロールできない場合は、自己判断だけで抱え込まず、医療機関への受診も選択肢に入れましょう。
原因がストレスや疲労だけでなく、ホルモンバランスの乱れや精神疾患にあることも少なくありません。
専門家に相談することで、原因に合わせた適切な治療やサポートを受けられ、早期回復につながります。
『かもみーる』は、精神科医をはじめとした有資格者に、心の不調や感情のコントロールに関する悩みをオンラインで気軽に相談できるサービスです。
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心と身体は密接につながっているため、無理をせず、必要なときには専門家の力を借りることで、穏やかな日常を取り戻す一歩となります。
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