うつ病と双極性障害(躁うつ病)の違いは?症状・原因・治療法とセルフチェックリスト

うつ病と躁うつ病(双極性障害)は名前が似ているため混同されがちですが、実はまったく異なる病気です。
自分や身近な人が落ち込みやすかったり、気分の波が激しかったりすると、 「もしかして…」と不安になることもあるでしょう。
または、「うつ病と診断されたけど、なかなか良くならない」とお悩みの方もいるかもしれません。
うつ病と躁うつ病は見分けが難しく、間違って診断されているケースもあるため、慎重な診断が必要です。
この記事では、うつ病と躁うつ病のさまざまな違いについて詳しく解説します。 治療法やセルフチェックなども紹介しますので、ぜひ記事をチェックしてみてください。
うつ病と双極性障害(躁うつ病)はまったく異なる病気

躁うつ病は現在では、「双極性障害」と呼ばれることが一般的です。
過去に躁うつ病と呼ばれていたことから、双極性障害とうつ病は同じような病気と誤解されがちですが、実は2つはまったく違う病気で、効果的な治療法も異なります。そのため、専門家による診断が非常に重要です。
うつ病(単極性うつ病)は気分の落ち込みが主な症状ですが、 双極性障害は気分の高揚(躁状態)と落ち込み(うつ状態)を繰り返すことが特徴です。
うつ病と双極性障害(躁うつ病)は見分けが難しく注意が必要

双極性障害は、うつ病との見分けが難しい病気です。
うつ病と診断されて治療を続けているもののよくならない患者さんが、 実は双極性障害だったというケースもあります。
海外では、うつ病の症状で受診した5,635人の患者さんのうち、16%が双極性障害であったという報告もあります。
うつ病と双極性障害(躁うつ病)の見分けが難しい理由
うつ病と双極性障害(躁うつ病)の正確な診断が難しいのは、主に以下のような理由からです。
- 双極性障害が「うつ状態」で始まった場合、うつ病と診断されやすい
- 診察を受けようと思うタイミングは「うつ状態」であることが多い
- 双極II型は周囲から気づかれにくい
- 「躁状態」と「うつ状態」の症状が現れる間隔は数ヶ月〜数年など個人差が大きい
双極性障害は人によって「うつ状態」で始まることもあれば、「躁状態」で始まることもあります。躁状態で始まった場合は双極性障害と正しく診断されやすい一方、うつ状態で始まった場合はうつ病と誤診されてしまうことが少なくありません。
そもそも、クリニックで診察を受けようと思うのは気分が落ち込んだうつ状態のときが多く、このことも双極性障害の正しい診断が難しくなる理由の一つでしょう。
特に、双極性障害の2つのタイプの一つである「双極II型」は周囲から見ると単に元気になっただけのように見えることがあり、 なかなか気づかれないことも多いです。
また、双極性障害で「躁状態」と「うつ状態」が切り替わる周期は数ヶ月〜数年と個人差が大きく、 病気とは気づかないほどの軽躁状態を経験していたというケースもあります。
うつ病とは?

うつ病は、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失といった「うつ状態」を主な症状とする気分障害の一つです。気分障害は主に2種類に分けられ、「うつ病」の他のもう一つが「双極性障害(躁うつ病)」です。
うつ病は日本人の約15人に1人が経験するといわれており、決して珍しい病気ではありません。
仕事のストレスやプレッシャー、人間関係や家庭の悩みから、うつ病を発症してしまうケースもあります。
うつ病については以下の記事でも詳しく解説していますので、よろしければ合わせてご覧ください。
双極性障害(躁うつ病)とは?

双極性障害(躁うつ病)は、「躁状態もしくは軽躁状態(ハイテンションで活動的な状態)」と「うつ状態」を繰り返す病気で、双極性感情障害と呼ばれることもあります。
かつては「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在は「双極性障害」という名称が使われることが一般的です。
双極性障害はうつ病と比べると頻度は少なく、日本では1,000人に4〜7人弱ほどとされています。 (参照:国立精神・神経医療研究センター『双極性障害(躁うつ病)』)
しかし双極性障害は症状の波が大きく、生活に支障をきたしたり、人間関係の悪化や金銭トラブルを引き起こしたりと、 大きな問題に発展するケースも少なくありません。
うつ病と双極性障害(躁うつ病)の違い

うつ病と双極性障害(躁うつ病)は、さまざまな点で異なります。ここでは、うつ病と双極性障害(躁うつ病)の症状・原因・治療法の違いについて解説します。
症状の違い
うつ病では気分の落ち込みや意欲低下、不眠や過眠といったうつ状態の症状のみが見られます。一方で、双極性障害ではうつ状態に加え、躁状態(または軽躁状態)が見られることが特徴です。
双極性障害は「躁状態」「うつ状態」を繰り返しますが、全体の割合としてはうつ状態の方が多く見られます。
原因の違い
うつ病と双極性障害の原因やメカニズムについてはさまざまな研究が行われていますが、正確な原因は完全には解明されていません。
うつ病は、ストレスや環境要因、遺伝的要因、ホルモンバランスの変化、薬の副作用などの要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。
双極性障害は脳の病気であり、発症には遺伝が大きく関わっていることがわかってきました。気分の調節に関係する神経系の機能が変化することで、双極性障害の発症につながるのではないかと考えられています。
双極性障害の発症・再発にはストレスも影響している可能性がありますが、因果関係は証明されていません。
治療法の違い
うつ病と双極性障害の主な治療法は、薬物療法や精神療法、TMS治療(磁気刺激法)などです。
治療には共通する部分もありますが、薬物療法に使用する治療薬には大きな違いがあります。
うつ病の薬物療法の場合、主に「抗うつ薬」を使用して治療を行います。一方、双極性障害では「気分安定薬」を使うのが基本です。
気分安定薬でうつ状態に効果的な薬は多くはなく、双極性障害の治療に抗うつ薬が使われるケースもありました。
しかし、「躁転(うつ状態から躁状態への急激な移行)」や「ラピッドサイクリング(急速交代化。1年に4回以上躁状態とうつ状態を繰り返す)」の問題が指摘され、現在では双極性障害の治療には抗うつ薬は使用しないという考え方が優勢です。
ただし、双極性障害の一部のケースでは気分安定薬と抗うつ薬の併用が効果的であると考えられる場合もあり、リスクを十分考慮しつつ、慎重に検討する必要があります。
双極性障害(躁うつ病)の症状

双極性障害の症状は、躁状態(または軽躁状態)とうつ状態に分けられます。 それぞれの状態について詳しく見ていきましょう。
うつ状態 |
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・気分の落ち込み ・興味や喜びの喪失 ・意欲低下 ・食欲の変化(増加または減少) ・睡眠障害(不眠や過眠) ・体がだるい、疲れやすい ・集中力の低下 ・希死念慮 |
躁状態 |
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・病的な高揚感や多幸感 ・睡眠時間が短くなるが、体は元気 ・自信満々になる ・やりたいことやアイデアが次々思い浮かぶ ・しゃべり続ける ・初対面の人にやたらと声をかける ・注意力が散漫になる ・気が大きくなり、危険行動や浪費をする ・性的に奔放になる |
軽躁状態 |
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・気分が高揚し活動的になるが、躁状態ほどではない |
双極性障害のうつ状態では、うつ病と似た症状が現れますが、うつ病と比べると過眠や過食が現れやすい傾向があります。
躁状態は双極性障害の特徴的な症状で、異常なほどハイテンションな状態が見られます。 軽躁状態の場合、躁状態ではありませんが非常に活発的になります。
双極性障害(躁うつ病)の2つのタイプ

双極性障害は、症状の違いによってI型とII型の2タイプに分類されます。
- 双極I型……激しい躁状態とうつ状態がある(日常生活や仕事に大きな影響を及ぼす)
- 双極II型……軽躁状態とうつ状態がある(日常生活や仕事にそれほど支障をきたさない)
躁状態が顕著な双極I型は比較的早期に診断されることが多い一方、軽躁状態は周りから気づかれにくいため注意が必要です。
双極性障害(躁うつ病)セルフチェックリスト

以下は、双極性障害(躁うつ病)セルフチェックリストです。
- 気分の波が激しく、高揚感や興奮、怒りっぽくなり、他人から指摘される
- 眠らなくても平気な時期がある
- 過剰な自信があり、自分が偉くなったように感じる
- 普段よりおしゃべりになる
- アイデアや考えが次々に浮かんでくる
- 注意散漫になり、集中力が低下することがある
- じっとしていられず動きたくなる
- 浪費や無謀な投資など後先を考えない行動をしてしまう、衝動を抑えられない
当てはまる項目が多いほど、双極性障害のリスクが高くなります。 ただし、これはあくまで参考であるため、クリニックを受診し専門家による診断を受けましょう。
うつ病など他の疾患のセルフチェックリストは以下の記事で紹介しています。
双極性障害(躁うつ病)の治療法
双極性障害の治療は、薬物療法と心理社会的治療を組み合わせて行われます。また、TMS治療(磁気刺激法/経頭蓋磁気刺激法)を行うこともあります。
薬物療法
双極性障害の薬物療法の中心となるのは「気分安定薬」です。 主な気分安定薬には以下のようなものがあります。
- 炭酸リチウム(リーマス)
- バルプロ酸
- カルバマゼピン
- ラモトリギン
必要に応じてオランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、ルラシドンといった「抗精神病薬」が併用されることもあります。
心理社会的治療
以下のような心理社会的治療を薬物療法と並行して行うことも効果的です。
心理教育 | 患者さん自身が病気を受け入れコントロールするため、病気について学習したり、自分の気分を把握したりする |
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家族療法 | 家族が患者さんをサポートできるよう、病気に対する家族の理解を深める |
認知行動療法 | 患者の思考パターンや行動パターンを変えることで、症状の改善を図る。ストレスへの対処力を高められる |
対人関係・社会リズム療法 | 対人関係のストレスや双極性障害という病気にかかったことに対するストレスを軽減させる「対人関係療法」と、規則正しい生活リズムの確立を目指す「社会リズム療法」を組み合わせた方法。症状の改善や再発予防に効果的 |
TMS治療(磁気刺激法/経頭蓋磁気刺激法)
TMS治療は、脳の特定部位に磁気刺激を与えることで脳の活動を活性化し、脳血流を増加させ、低下した脳の機能を改善させるための治療法です。
副作用がほとんどないことが特徴で、「薬を飲んでいるがなかなか治らない」「減薬したい」「薬の副作用がつらい」といった場合に、TMS治療が行われることがあります。
双極性障害(躁うつ病)を治療せずに放置するとどうなる?

双極性障害は再発しやすい病気で、治療せずに放置すると、ほとんどのケースで再発してしまうと考えられています。
双極性障害では、躁状態(または軽躁状態)とうつ状態の間に、「寛解期」といって症状がなく落ち着いた時期があります。
再発を繰り返していると寛解期が短くなり、躁状態とうつ状態を繰り返す「ラピッドサイクリング(急速交代化)」のリスクも高まってしまうため注意が必要です。
また、躁状態や軽躁状態の症状により家族や職場に迷惑をかけてしまい、社会的なトラブルへの発展や、一気に社会的信頼を失ってしまう可能性もあります。
普段であれば自分が原因で大きなトラブルが起こったら「まずい」と思い、フォローや対処に走りますが、 躁状態や軽躁状態のときは非常に気分が高揚しており、本人が問題を理解できないケースが多いのです。
こうした状況に陥らないためにも、異変を感じたら放置せず、早めに適切な治療を受けることが大切です。
双極性障害(躁うつ病)についてのよくある質問

ここでは、双極性障害(躁うつ病)についてのよくある質問を紹介します。
Q:双極性障害(躁うつ病)は気分や感情の波とどう違う?
誰しも、気分や感情の波はあります。失敗すれば落ち込み、嬉しいことがあれば幸せな気分になることは、ごく自然な感情の動きです。
しかし、周囲の人が見て「明らかに様子がおかしい」「いつもと違う」とわかるほど、気分や行動が行き過ぎている場合は、双極性障害の可能性が考えられます。
躁状態のとき、患者さんは自分の状態を客観的に見られず、治療が必要な状態であると自覚できないことが多いため、 周囲の人が早めに異変に気づき、治療につなげることも大切です。
Q:双極性障害になりやすい性格は?
かつては「循環気質(社交的、善良、親切、活発、陽気)」や「執着気質(真面目、几帳面、凝り性、仕事熱心、責任感が強い)」が 双極性障害になりやすい性格といわれていました。
しかし、性格と双極性障害の関連性は明らかになっていません。
原因に合った適切な治療が回復への近道に
うつ病と双極性障害(躁うつ病)は、まったく異なる病気です。
しかし、共通する症状も見られることから見分けることが難しく、双極性障害と気づかれないままうつ病の治療が行われているケースもあります。
双極性障害は、クリニックで適切な治療を受ければ症状をコントロールでき、普段の生活を送ることが可能な病気です。
早期発見・早期回復のためにも、うつ病や双極性障害に詳しい専門家に相談し、適切な治療を受けましょう。
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