不眠症は、多くの人が経験する悩みの一つです。
仕事や人間関係のストレス、生活習慣の乱れなどが原因となり、夜なかなか寝付けない、途中で目が覚める、早朝に起きてしまう、深い眠りを得られないといった症状が現れます。
これらの症状が長期間続くと、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。
この記事では、不眠症の原因や症状について詳しく解説し、自宅でできる対処法や医療機関での治療法を紹介します。
夜に眠れなくてつらいと感じている方は、ぜひ参考にしてください。
不眠症とは?

不眠症とは、夜に十分に眠れない状態が続き、日中の倦怠感や集中力の低下、意欲の減退などが生じる睡眠障害のひとつです。
具体的には、以下のような症状がみられます。
- 寝つきが悪い
- 眠りが浅く途中で何度も目が覚める
- 朝早く目が覚めて二度寝ができない
- ぐっすり眠れた感じがしない など
不眠は誰にでも起こり得る一時的な現象ですが、2週間以上続いて日常生活に支障をきたす場合は、不眠症と診断されます。
原因としては、ストレスや不安、うつ病などの精神疾患、身体疾患、生活リズムの乱れ、薬の副作用などが関係していることが多く、原因に応じた対処や治療が必要です。
不眠症は、短期不眠症(短期不眠障害)と慢性不眠症(慢性不眠障害)に分類されます。
放置すると、眠れないことへの不安から緊張や焦りが強まり、さらに眠れなくなるという悪循環に陥ることもあります。
厚生労働省によると、一般成人の30〜40%が何らかの不眠症状を有しており、女性や中高年層に多いとされています。
不眠が長引く場合は、無理に我慢せず、睡眠外来や精神科・心療内科などの専門医に相談することが大切です。
不眠症の原因

不眠症は一つの原因で起こるわけではなく、心身の状態・生活習慣・環境など複数の要因が重なって生じます。
一時的なストレスや生活リズムの乱れが原因の場合もあれば、背景に身体疾患や精神疾患、薬の影響などが隠れていることもあります。
以下に、不眠症を引き起こす主な原因をまとめました。
原因の種類 | 主な内容 |
ストレス・心理的要因 | 仕事や人間関係の悩み、プレッシャー、極度の緊張などによる精神的ストレス。不安や悩みで頭が冴えて眠れないことがある |
身体的要因 | 痛み、かゆみ、頻尿、呼吸器疾患、心臓病、アレルギー疾患などによって睡眠が妨げられる。高齢になると眠りが浅くなり、不眠が増える傾向がある |
精神疾患 | うつ病や不安障害などの精神疾患では、不眠や過眠などの睡眠リズムの乱れが見られる。単なる不眠だと思っていても、実はこころの病気が背景にある場合も |
その他の睡眠障害 | 睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)、周期性四肢運動障害など。専門的な検査と治療が必要 |
生活習慣・嗜好品 | アルコール、カフェイン(コーヒー・紅茶など)、ニコチン(たばこ)は覚醒作用があり、眠りを浅くする。薬の副作用が原因の場合も |
生活リズムの乱れ | 交替勤務や夜更かし、時差などにより体内時計が乱れると、不眠を引き起こす。現代の24時間生活では特に注意が必要 |
環境要因 | 騒音、光、室温、湿度など、睡眠環境の不快さが原因で眠れなくなる場合もある。枕や寝具の違いも影響する |
不眠症の背景には、複数の要因が絡み合っていることが多く、「原因を正確に見極めること」が改善への第一歩です。
原因としてストレスが背景にあることが多いですが、その他の疾患や生活習慣などによっても不眠症が引き起こされる可能性があります。
特に、睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群など、他の睡眠障害が関係している場合は、通常の睡眠薬では効果が得られません。
こうした場合は、専門の睡眠外来や精神科・心療内科、脳神経内科での検査が必要です。
原因を自己判断せず、不眠が2週間以上続く場合は専門医に相談することをおすすめします。
適応障害、うつ病、不安障害などで不眠を抱えている方は、以下の記事も参考にしてください。
▶適応障害で起こる不眠症とは?睡眠障害の主な症状や治療法について解説
▶疲れてるのに眠れないのはうつ病?不眠の種類や原因、対処法などを紹介
▶不安障害で寝れないときはどうする?夜の不安・不眠・眠気の原因と対策を解説
不眠症の症状

不眠症は主に、入眠困難・中途覚醒・早期覚醒の3つの症状が特徴です。
一時的な不眠症状だけであれば問題はありませんが、症状が数週間継続し、日常生活に支障をきたしている場合は、不眠症の可能性があるため、心理士や精神科医などの専門家に相談することも大切です。
ここでは、不眠症の症状について紹介します。
症状 | 特徴 |
入眠困難 | いつもの就寝時間に寝ようとしても、入眠までに30分~1時間以上の時間を要する |
中途覚醒 | 眠りについたあと、翌朝起床するまでに何度も目が覚める |
早期覚醒 | 通常の起床時間よりも2時間以上前に目覚め、再入眠できない。もしくは入眠できても熟睡できない |
夜間の症状
典型的な不眠症状は、以下の3種類に分けられます。
- 入眠困難:いつもの就寝時間に寝ようとしても30分〜1時間程度入眠できない
- 中途覚醒:入眠し翌朝の起床時間までに夜中に何度も目を覚ましてしまう
- 早期覚醒:いつも起床する時間よりも2時間以上早く目が覚め、なかなか再入眠できない
これらの症状が数週間にわたり続く場合、不眠症の可能性があります。
日中の症状
不眠症状が慢性化すると、朝起きた際の疲れがとれた、休養できたという感覚が薄れ、日常生活に支障をきたす場合があります。
具体的には、以下のような症状が考えられます。
- 活力の低下
- 日中の眠気
- 気分の落ち込み
- 集中力の低下
- 生活の質の低下
夜間の不眠症状に加え、日中の症状が現れる場合は、治療が必要な不眠症と考えるケースが多いです。
その他の睡眠障害
以下のような睡眠障害も、不眠症状の一因や背景として関与していることがあります。
概日リズム睡眠・覚醒障害 | 体内時計が地球の明暗リズムとずれ、望ましい時間に寝起きできなくなる状態。交代勤務や不規則な生活習慣が誘因となるケースがある |
睡眠時随伴症 | 睡眠中に異常行動や知覚体験が生じる障害。レム睡眠期に生じる悪夢障害・レム睡眠行動障害や、ノンレム睡眠期に起こる夜驚症・睡眠時遊行症・睡眠関連摂食障害」など |
睡眠関連運動障害 | 夜間の不随意運動により睡眠が妨げられる障害。主なものに、むずむず脚症候群(RLS)、周期性四肢運動障害(PLMD)」がある |
これらの症状は入眠困難や中途覚醒の原因となることが多く、日中の眠気や疲労感にもつながります。
ストレスによる不眠症の対処法

不眠症はさまざまな原因によって引き起こされる可能性がありますが、大きな原因のひとつにストレスがあります。
ストレスの不眠症の場合、ストレスの原因になっている事象を解決することが一番の解消法ですが、日常生活での対処でも不眠症を改善できるケースがあります。
ただし、不眠の背後には他の睡眠障害や身体・精神の病気が隠れている場合もあるため、自己判断で済ませず、原因を正しく見極めることが重要です。
以下に、日常生活で実践できる対処法をご紹介します。
睡眠環境の整備
快適な睡眠を得るためには、寝室の環境を整えることが大切です。
部屋の明るさや温度、音の有無などを見直し、リラックスできる空間を作ってみましょう。
遮光カーテンや静音家電の活用、適切な寝具(マットレス・枕)選びも睡眠の質に影響します。
小さな改善が、大きな効果につながることもあります。
適度な運動
ウォーキングや軽いストレッチなどの適度な運動は、ストレスの発散に役立つだけでなく、睡眠の質を高める働きがあります。
運動によって体温が一時的に上がり、数時間後に下がるタイミングで入眠がスムーズになるといわれています。
就寝直前の激しい運動は逆効果になることがあるため、夕方〜夜の早めの時間帯に行うのがおすすめです。
ヨガや深呼吸法
緊張した身体と心を落ち着かせるためには、呼吸を意識したリラクゼーション法が有効です。
ヨガではストレッチと呼吸を組み合わせ、深呼吸法では副交感神経を優位にすることで、リラックス状態を作り出します。
眠る前の数分間だけでも、ゆったりとした呼吸を意識してみましょう。
日光浴
朝に自然光を浴びることで、体内時計がリセットされ、夜になると自然に眠気が訪れやすくなります。
さらに、日光を浴びると「セロトニン」と呼ばれる脳内物質が分泌され、気分の安定にもつながります。
特に在宅勤務や屋内中心の生活をしている方は、意識的に朝の時間に日光を取り入れるようにしましょう。
規則正しい生活リズムの維持
睡眠と覚醒のリズムを一定に保つことで、自然と眠りやすい体質が形成されていきます。
平日・休日問わず、できるだけ同じ時間に起床・就寝するよう心がけましょう。
不規則な生活が続くと、体内時計が乱れ、寝つきの悪さや早朝覚醒につながることがあります。
ハーブの活用
睡眠をサポートする自然療法の一つとして、カモミールやバレリアンなどのハーブティーがあります。
カモミールはリラックス効果が高く、バレリアンは神経の高ぶりを鎮めてくれるとされます。薬に頼る前に、こうした自然素材を試してみるのも一つの手段です。
ただし、持病がある場合や妊娠中の方は使用前に医師へ相談しましょう。
アロマセラピー
香りの力でリラックスを促すアロマセラピーも、不眠対策に有効です。
ラベンダーやスイートオレンジ、カモミールなどの香りは、神経を落ち着かせる作用があるとされています。
アロマディフューザーの使用や、入浴時に数滴加えるだけでも効果が期待できます。
香りの好みは人それぞれなので、自分に合った香りを見つけることが大切です。
ストレスによる不眠については、以下の記事でも紹介していますので参考にしてください。
寝室からスマホを遠ざける
スマートフォンなどの電子機器が発するブルーライトは、眠気を誘うホルモン(メラトニン)の分泌を妨げます。
また、SNSやメッセージアプリによる精神的な興奮も入眠の妨げになります。
就寝の1時間前にはスマホの使用を控え、寝室には置かないようにすることで、より良い睡眠につながります。
不眠症の治療法

セルフケアを試しても、症状が改善されない場合や、日中の生活に支障が出ている場合は医療機関を受診することが大切です。
睡眠外来や精神科・心療内科では、原因に応じた治療やカウンセリングを受けられます。
医療機関では、主に睡眠衛生の見直し、非薬物療法、薬物療法が行われます。
ここでは、医療機関を受診するタイミングと医療機関で行われる治療法を紹介します。
医療機関を受診するタイミング
医療機関を受診するタイミングは以下のとおりです。
- 2週間以上不眠症状が続く
- 日中の強い眠気や集中力低下がある
- 気分の落ち込みや意欲低下が見られる
不眠が一時的なものであれば生活習慣の見直しやセルフケアで改善することもありますが、2週間以上続く場合は慢性化しているかもしれません。
不眠により日常生活に支障が出ていると感じた場合には、悪化してしまう前に医療機関を受診して相談してみましょう。
睡眠衛生・生活習慣の見直し
医療機関では、まず生活習慣や睡眠衛生の見直しを行うことが多いです。
不眠の多くは、日常生活のちょっとしたクセや環境が影響していることがあります。
まずは「眠れる土台」を整えることが治療の第一歩です。
- 規則正しい生活リズムを保つ(毎日同じ時間に起床・就寝)
- 日中に適度な運動を取り入れる(ウォーキングやストレッチなど)
- 朝に日光を浴びることで体内時計をリセット
- スマホやパソコンの使用を就寝前に控える
- カフェインやアルコールの摂取を控える
- 寝室を快適に保つ(暗さ・静けさ・温度・湿度・寝具)
これらの生活習慣を整えるだけでも、不眠が改善することは少なくありません。
これらを試しても改善が見られない場合には、次の治療法を検討します。
非薬物療法
不眠症の根本的な改善には、薬以外の方法、特に認知行動療法(CBT-I)が効果的とされています。
認知行動療法とは、睡眠に関する考え方のクセや習慣を見直し、薬に頼らずに眠れるようになることを目指す治療です。
不眠に悩む人の多くは、「眠れなかったらどうしよう」「このままじゃダメだ」といった否定的な思考を抱えやすく、これがさらに緊張や焦りを生み、不眠を悪化させてしまう悪循環があります。
認知行動療法では、そうした思考パターンを柔軟で現実的な捉え方に修正し、心身の緊張をやわらげていきます。
認知行動療法は、公認心理士や臨床心理士と一緒に進めるのが一般的です。
薬物療法
どうしても眠れず日常生活に支障が出ている場合には、睡眠薬などの薬物療法が選択されることもあります。
薬には、GABA受容体作動薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン拮抗薬などの種類があり、それぞれ作用や特徴が異なります。
使用する際は、医師の指導のもと正しく使用することが重要です。
ただし、薬はあくまでも補助的手段です。
薬を使用するのは一時的にとどめ、最終的には薬なしでも眠れる状態を目指して治療を行います。
不眠症かも、と思った時はかもみーるへ
不眠症はストレスや生活習慣の乱れなど、さまざまな要因によって引き起こされる可能性があります。
入眠困難や中途覚醒、早期覚醒、熟眠障害などの症状が長期化すると、日常生活に支障が出るケースも珍しくありません。
自宅でできる対処法が効果的な場合もありますが、それでも改善しない場合は、専門家による治療を受けることも大切です。
『かもみーる』では、医師・臨床心理士・公認心理師を中心とした有資格者のみのオンライン診療・カウンセリングサービスで、患者さん一人ひとりの状況に合わせたアプローチで不眠症の治療を行っています。
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