発達障害は生まれつき?後天性?気付いた時の対応とチェックリスト
更新日 2025年06月04日
発達障害
「発達障害は生まれつきなのか」「後天的に現れるのか」といった疑問を持つ人は多いかもしれません。
近年、発達障害という言葉が広く知られるようになった一方で、周囲の理解が追いついていない場面も見られるようになりました。
発達障害に関する研究は進んでおり、社会のあらゆる場所でのサポートや啓発が行われています。
先天性・後天性への理解や誤解、発達障害の可能性に気付いた時の対応の仕方など、理解を深めることは、現代社会において役立つ知識になるでしょう。
この記事では、発達障害は生まれつきなのか、生まれつきじゃないのかという疑問をはじめ、誤解されやすい点や対応法などについて紹介します。
発達障害についてより知識を深めたい人は、ぜひ参考にしてください。
発達障害は生まれつきなの?

発達障害は、生まれつきの特性です。
脳の構造や働きに関わる要因が関与するとされており、育て方や性格によるものではありません。
ただし、実際に特性が目立ち始めるタイミングには個人差があり、その見え方が後天的と誤解されるケースも見られます。
ここでは、発達障害が生まれつきの特性であるという理由について紹介します。
脳機能の特性として先天的に現れる発達障害
発達障害は、脳の構造や働き方の違いによって生じる神経発達の特性です。
これは成育環境によって後から形成されるものではなく、生まれつき備わっているものです。
発達障害のある人は、注意力や感覚の受け取り方、対人関係でのやりとりなどにおいて、定型発達(発達障害ではない人)とは異なる傾向を示します。
そのような違いの多くは乳幼児期から少しずつ現れますが、生活環境や周囲の対応によって表面化する度合いに差が出ます。
特性が見えにくいケースがあるとしても、それは発達障害そのものが後天的に起きたということではありません。
もともとの脳の特性であり、生まれもったものという考えが適切です。
遺伝が影響している可能性
家族内で似た特性を持つ人がいる場合、遺伝が発達障害の発現に関与する可能性があると考えられています。
ただし、特定の遺伝子だけで発達障害が生じるわけではなく、複数の遺伝的要因が関係し合って影響を及ぼすとみられています。
遺伝の影響はあくまでひとつの要素であり、それだけで個人の発達の全体像が決まるわけではありません。
後天的要因が関与するという説は?
発達障害が「後天性」と受け取られることがありますが、これは診断のタイミングや環境要因によって誤解されている可能性が高いです。
確かに、発達障害の特性が目立ってくるのは、集団生活が始まる就学時期や、複雑な対人関係が求められる時期であることが多く、幼少期には気づかれないまま過ごすこともあります。
また、ストレスの多い状況や支援が不十分な環境では、本人の困りごとが際立ちやすくなり、「大人が急に発症したように見える」という印象を与えるケースも少なくありません。
しかし前述の通り、発達障害は生まれつきの特性であり、後天性ではありません。
発達障害はなぜ生まれる?
最近の研究によれば、発達障害の原因は一つだけでなく、遺伝的要因(生物学的要因)と環境要因が関係していると考えられています。
詳しいメカニズムについては明らかになっていないため、「なぜ生まれるのか」の理由については断言が難しいといえるでしょう。
脳の中で情報を処理する働きや、感覚を統合する仕組みなどに違いがあると、定型発達とは異なる行動や思考が見られるようになります。
遺伝的な傾向や神経系の微細な差異など、要因は複雑であり、どれかひとつを特定することは困難ですが、「親の育て方」や「本人の努力不足」ではないことは理解しておきましょう。
発達障害は後天性という誤解が生まれる理由

発達障害は先天的な脳の特性によって生じるものであり、環境や育て方によって後から発症するものではありません。
しかし、実際には「後天的に発達障害になったのでは」と誤解されることもあるようです。
ここでは、なぜ後天的だという誤解が生まれるのか、その背景について詳しく紹介します。
成長過程で目立ってくる特性がある
発達障害の特性は生まれつき備わっているものですが、成長につれて特性が目立つことがあります。
例えば、乳幼児期には目立たなかった行動の特性が、集団生活や学校での活動が始まると、友達とのやりとりや集団行動への適応の難しさとして見えやすくなることがあります。
これは成長に伴い、社会生活で求められる行動や役割が増える中で、他の子どもとの違いがはっきり見えてくるようになるためです。
そのような経過によって「後から発達障害になった」と誤解されることもあります。
しかし実際には、最初から存在していた特性が、環境の変化により周囲に認識されるようになったと考えるほうが適切です。
周囲の環境で特性が強調されることも
発達障害の特性は生活する環境によって強く表に出ることがあり、同じ特性を持っていても、見え方や対処のしやすさに差が生まれます。
例えば、静かな家庭で過ごしていた時には特に問題が表面化しなかったとしても、幼稚園や小学校で集団行動が求められるようになったことで、行動の違いが目立つようになるケースも少なくありません。
また、周囲の理解や支援が不十分な場合、本人が適応しづらくなり、困りごとがさらに強調され、誤解される可能性があります。
あくまで見え方の変化であり、発達障害そのものの原因とは無関係ということです。
診断時期が誤解を生むことも
発達障害は後天的に発症するものではありません。
それにもかかわらず誤解される背景には、診断までの時間的な差があることが考えられます。
発達障害の特性は個人差が大きく、現れ方や程度が異なります。
特性があっても、家庭や学校で問題とみなされなければ見過ごされる場合も多く、大人になって社会に出てから本人が困難を感じ、診断されるケースも少なくありません。
こうした経緯を経て診断に至ると、「最近になって発達障害になった」と考えられてしまう可能性がありますが、実際には「もともと持っていた特性に診断名がついた」と考えるのが適切です。
▶何度言っても分からない大人は発達障害?考えられる特性と対応法
子どもの発達障害に気付いた時の対応とチェックリスト

子どもの発達に気になる様子が見られた時、発達障害かどうかを考慮することは重要です。
ここでは、子どもの発達について注目したいポイントや、気になった際の対応などについて紹介します。
日常生活で見られるサインとは
発達障害の特性は、日常生活の中での行動から気付くことがあります。
例えば、以下のような様子が代表的です。
- 同じ遊びを繰り返す
- 目を合わせない
- 大きな音に過敏に反応する
- 肌ざわりに強いこだわりを見せる など
また、言葉の発達がゆっくりで、集団行動への参加に不安がある子どももいます。
このようなサインは個人差があり、年齢や環境によっても表れ方が異なります。早期に気付くためには、保護者が日常の様子を丁寧に見守ることが重要です。
▶子どもの発達障害とは?早く気付くポイントやサポート方法について解説
チェックリストの活用
発達障害の傾向を整理する方法として、チェックリストの活用もおすすめです。
一部の医療機関や支援サイトなどでは、注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)といった発達障害の特徴を項目化したセルフチェック形式の資料を掲載しています。
困りごとや違和感の背景にある特性を把握するきっかけとして利用しやすいため、気になることがあれば活用してみましょう。
相談や受診を考える際の目安や資料としても便利です。
ただし、チェックリストはあくまでセルフチェックであり、専門家による診断ではありません。
正確な診断を受けるためには、必ず専門の医療機関を受診してください。
その際、チェックリストの結果を持参すると現在の状況を説明しやすくなるため、ぜひお持ちください。
保健センターや専門医に相談を
子どもの発達に気になる点がある場合は、保護者の直感を大切にし、早めに相談機関を利用しましょう。
育児の中で「何か気になるな」と感じたら、その感覚を記録に残したり、身近な人と共有したりすることは、客観的に状況を整理できる効果的な方法です。
地域の保健センターでは、乳幼児健診や個別相談の機会があり、専門スタッフが子どもの様子を確認します。
必要に応じて小児神経科や児童精神科などの医療機関が案内されることもあり、発達の傾向に合わせた支援について相談可能です。
判断を急ぐ必要はありませんが、気になった時点で早めの行動を起こすことで、より早い支援や理解につながります。
発達障害かもしれないと思った時に考えたいこと

社会の変化や診断基準の見直しにより、発達障害と診断される人が増えています。
そのため、「自分や身近な人が発達障害かも」と改めて思うこともあるでしょう。
ここでは、発達障害かもしれないと思った時の考え方や、発達障害が増えたといわれる背景などについて紹介します。
発達障害は「問題」ではなく一人ひとりの特性
発達障害の特性は困りごとにつながる一面もありますが、環境や関係性によっては強みとなることもあります。
例えば、発達障害の特性には「注意散漫になりやすい」「考え方が独特である」などがありますが、見方を変えれば「多くのものに目を向けられる」「独自の発想ができる」といった強みにもなります。
もともと発達障害は脳の働き方や情報処理の特性に由来するものであり、一人ひとりの特性です。
「問題」ではなく、個性のひとつと捉え、特性を理解し支え合う視点が必要です。
診断によって発達障害への理解が深まる
発達障害の診断は、生活の中で困難を覚えることに対して原因を明らかにし、適切なサポートへとつなげるために欠かせません。
診断を受けることにより、本人が抱える生きづらさや不適応感の理由を言語化しやすくなり、日常生活での選択肢が広がりやすくなります。
また、周囲との関係も調整しやすくなるため、家族や職場など周囲の理解促進にも有効です。
ストレスを軽減した生活に役立つサポート
発達障害のある人が抱えるストレスは、環境や人間関係の不適合から生じやすいとされています。
そのため、生活の中で感じる負担を減らすには、特性に応じたサポートや環境整備が不可欠です。
例えば、以下のようなことは本人や周囲も取り入れやすいでしょう。
- 明確な指示の工夫
- 感覚過敏に配慮した空間の調整
- 意思疎通のスタイルを工夫する など
近年は発達障害への理解が進み、学校や職場でも、特性に配慮した環境整備が推進されています。
発達障害の特性が環境に合わないと感じたら、学校や職場に相談してみるのもおすすめです。
発達障害が増えたと言われる背景
発達障害と診断される人が増えた背景には、診断基準の拡大や社会の認識の変化が関係しています。
例えば、DSM-5の導入により自閉症スペクトラム障害の診断基準が見直され、これまで診断の対象とされなかった方々も含まれるようになりました。
また、発達障害に対する社会の理解が進み、保護者や教育現場での気付きが早くなり、早期に診断を受ける人が増えていることも理由です。
このような背景から、実際には「増えた」のではなく「正しく認識されるようになった」と考えるほうが適切です。
発達障害が増えたと感じられる一面に関しては、以下の参考記事で詳しく紹介しています。
まとめ
発達障害は脳の特性に由来するものであり、「問題」ではなく一人ひとりの「特性」として理解することが大切です。
診断を受けることによって特性への理解が深まり、適切なサポートや生活の工夫につながります。
「発達障害かもしれないが、どうすればいいかわからない」「困りごとが多く、学校や仕事でつらさを感じている」といった時には保健センターや医療機関へ相談し、適切な対処へつなげましょう。
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発達障害のご相談にも、患者さん一人ひとりに合った対応を心がけ、必要なサポートを行います。
オンラインのため、遠方の方や忙しい方でも受診しやすく、無理のない治療が可能です。
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