仕事や人間関係などによるストレスは、心だけでなく身体にもさまざまな影響を及ぼします。
特に、頭痛と吐き気といった症状が同時に表れる場合は、単なる疲れではなく、自律神経の乱れやストレスによる身体反応が関係している可能性があります。
中には重大な疾患が隠れているケースもあるため、自己判断は禁物です。
この記事では、ストレスが原因で起こる頭痛や吐き気について詳しく解説します。
考えられる病気や対処法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
ストレスが原因で頭痛や吐き気が起こることがある

ストレスは身体にもさまざまな影響を及ぼすことがあり、その代表的な症状が頭痛や吐き気です。
人間は強い緊張や不安を感じると、交感神経が優位になり、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
これにより血管が収縮して血流が悪化し、緊張性頭痛や片頭痛を引き起こすのです。
また胃腸の働きも自律神経の影響を大きく受けるため、消化機能が乱れ、吐き気や腹痛を引き起こしやすくなります。
ここではストレスにより起こる自律神経の乱れについて解説します。
ストレスにより自律神経のバランスが崩れる
自律神経は呼吸や心拍、体温調節、消化といった機能をコントロールしているシステムです。
この自律神経は交感神経と副交感神経の2つに分かれており、互いにバランスを取りながら働いています。
ストレスを受けると交感神経が活発になり、副交感神経の働きが抑制されてしまいます。
これにより心身が常に緊張状態となり、身体のさまざまな機能が乱れるのです。
例えば、血圧や心拍数が上がる、呼吸が浅く速くなる、胃腸の動きが悪くなるなどが挙げられます。
こうした状態が続くと、自律神経失調症と呼ばれる状態に陥ることがあります。
自律神経失調症は、自律神経のバランスが崩れることによりさまざまな身体症状が生じる状態です。
日々のストレスを適切にコントロールできないと、慢性的な不調に悩まされることになるため、早めの対策が必要となります。
自律神経の乱れにより起こり得る症状
自律神経が乱れると、全身のあらゆる臓器や器官に影響が及び、さまざまな症状が表れます。
典型的なものとして、頭痛や吐き気、めまい、動悸、発汗、ほてり、喉の違和感、手足のしびれ、腹痛、下痢、便秘、筋肉痛、倦怠感などがあります。
これらの症状は『不定愁訴』とも呼ばれ、検査で明確な異常が見つからないことが多いのが特徴です。
特に『過敏性腸症候群』や『緊張性頭痛』など、特定の臓器に目立った変化がなくても症状が出るケースもあります。
また情動ストレスによって『うつ病』や『不安障害』といった精神的な症状と併発することも少なくありません。
▶ストレスで吐き気を感じる?疑われる疾患や治療法・対処法などを紹介
▶ストレスと頭痛の関係│原因と対策・こころの病気(精神疾患)との関係
吐き気を伴う頭痛は注意が必要

頭痛と吐き気が同時に起こる場合は注意が必要です。
特に、突然激しい頭痛が始まり、繰り返し嘔吐する、けいれんや手足のしびれ・麻痺がある、言葉が出にくい・理解しにくいといった症状があれば、脳卒中やくも膜下出血、髄膜炎などの重大な疾患が隠れている可能性があります。
普段から頭痛に悩まされている方であっても、これまでと違う痛みを感じた場合には、速やかに医療機関を受診することが大切です。
また緊張型頭痛や片頭痛などが原因となるケースもありますが、緊張型頭痛では吐き気を伴うケースはあまり見られません。
したがって、頭痛と吐き気がセットで表れる場合は、より重い疾患の可能性を念頭に置く必要があります。
特に、物が二重に見える、ろれつが回らない、体の片側が動かしづらい、立ち上がれないなどの症状がある場合には、一刻も早く専門の医療機関で診断を受けるべきでしょう。
吐き気を伴う頭痛が起きたときに考えられる病気

吐き気を伴う頭痛が起きたときに考えられる病気として、以下が挙げられます。
- 自律神経失調症
- くも膜下出血
- 脳出血
- 脳梗塞
- 脳腫瘍
- 髄膜炎
ここでは上記6つの病気についてそれぞれ解説します。
自律神経失調症
自律神経失調症は、交感神経と副交感神経のバランスが乱れることで、体のさまざまな機能に不調が生じる状態です。
頭痛や吐き気といった症状もその一部であり、特にストレスや生活習慣の乱れが引き金となるケースが多く見られます。
症状は人によって異なり、頭痛・動悸・めまい・息切れ・下痢・胃痛など複数の症状が同時に表れることもあります。
また、自律神経失調症はうつ病や不安障害といった精神的な疾患と関連しているケースも少なくありません。
検査をしても特定の異常が見つからないことが多いため、原因がはっきりせずに不安を感じる方もいます。
慢性的な頭痛と吐き気に加え、ストレスの多い生活を送っている場合には、自律神経の乱れが関係している可能性があります。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳の血管にできた動脈瘤が破裂することで、脳の表面に出血が起こる病気です。
突然激しい頭痛が起こるのが特徴で、多くの場合、同時に吐き気や嘔吐を伴います。
症状が急激に表れ、意識障害やけいれんを起こすこともあります。
命に関わる重篤な病気で、脳卒中の中でも死亡率が高いため注意が必要です。
特に高血圧、喫煙、家族歴がある方はリスクが高いため、予防や早期発見が重要となります。
日頃頭痛のある方でも、これまでに経験のない痛みを感じた場合は、ためらわずに救急外来を受診すべきです。
脳出血
脳出血は、脳内の血管が破れて出血し、脳組織を圧迫することによって起こる病気です。
原因の多くは高血圧や動脈硬化で、発症すると激しい頭痛に加えて吐き気や嘔吐、意識障害、片側の手足の麻痺などが表れることがあります。
出血の範囲や場所によっては、言葉が話せなくなったり、呼びかけに反応しなくなったりすることもあります。
集中治療が必要となる場合が多く、後遺症が残ることも少なくありません。
発症初期の対応が予後に大きく影響するため、突然の強い頭痛と吐き気を感じた場合にはすぐに救急車を呼びましょう。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が詰まり、脳への血流が不足することで脳組織が損傷する病気です。
症状としては、片側の手足の麻痺、しびれ、ろれつが回らない、意識障害、ふらつき、吐き気などが挙げられます。
発症する脳の部位によって症状の表れ方は異なり、頭痛を伴うこともあります。
吐き気を伴う頭痛とともに、手足の動かしづらさや言葉のもつれがある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
脳腫瘍
脳腫瘍は、脳内にできた腫瘍が神経や血管を圧迫することによって、さまざまな症状を引き起こす病気です。
良性と悪性の腫瘍がありますが、どちらであっても大きくなることで脳の圧力が高まり、頭痛や吐き気、嘔吐、けいれん、視覚障害、麻痺などを引き起こす可能性があります。
脳腫瘍は進行がゆっくりなことも多く、最初は軽い頭痛だけで見過ごされがちです。
しかし、時間の経過とともに症状が強くなることがあるため、早期発見が重要です。
髄膜炎
髄膜炎は、脳や脊髄を覆う髄膜に細菌やウイルスが感染することで炎症が起きる病気です。
頭痛や発熱、吐き気、嘔吐、意識がぼんやりするといった症状が表れます。
特に細菌性髄膜炎は進行が早く、重篤な後遺症や死亡に至るリスクもあるため、非常に危険です。
ウイルス性の場合は比較的軽症で済むこともありますが、正確な診断と治療が必要となります。
子どもや高齢者、免疫力が低下している方は特に注意が必要です。
頭痛と吐き気に加えて発熱や意識障害がある場合は、髄膜炎の可能性を疑い、すぐに医療機関を受診しましょう。
頭痛と吐き気を和らげる対処法

頭痛と吐き気を和らげる対処法として、以下が挙げられます。
- 安静にする
- 片頭痛の場合は頭を冷やす
- 緊張型頭痛の場合は首や肩を温める
- 水分を摂取する
- 痛み止めや吐き気止めを使用する
ここでは上記5つの対処法について解説します。
安静にする
頭痛や吐き気があるときは、まず安静にすることが大切です。
刺激の少ない静かな場所で、横になって目を閉じて休むだけでも症状の緩和が期待できます。
特に片頭痛のように光や音に過敏になるタイプの頭痛では、部屋を暗くして静かに過ごすことで痛みが軽くなることがあります。
リラックスできる音楽やアロマを活用するのもよいでしょう。
また、体を動かすと症状が悪化する場合もあるため、無理に動かず体をしっかり休ませることが大切です。
片頭痛の場合は頭を冷やす
片頭痛は脳の血管が拡張することで起こるため、頭を冷やすことで血管を収縮させ、痛みを軽減する効果が期待できます。
冷却シートや氷嚢を使って額やこめかみを冷やすと、症状が和らぐことがあります。
冷やす時間は15〜20分程度を目安とし、直接当てるのではなく、タオルを巻いて使用しましょう。
また、冷たいタオルや冷水で濡らしたガーゼを使用するのも効果的です。
緊張型頭痛の場合は首や肩を温める
緊張型頭痛は、首や肩の筋肉がこわばり、血流が悪くなることで起こる頭痛です。
この場合、温めて血行を促進するのが効果的です。
蒸しタオルや温熱シートを使って首や肩を温めることで、筋肉の緊張がほぐれ、痛みがやわらぎます。
40度前後のお湯で入浴するのも効果的で、ぬるめのお湯に15〜20分程度ゆったり浸かることで、全身の緊張が和らぎリラックス効果も得られます。
水分を摂取する
頭痛や吐き気を感じるとき、脱水状態が症状を悪化させていることがあります。
特に嘔吐や下痢、発熱を伴っている場合には、体内の水分が不足しやすいため、小まめな水分補給が重要です。
冷たい水よりも常温の水や白湯、スポーツドリンクなどをこまめに摂取するのがおすすめです。
冷たい飲み物は胃腸を刺激し、吐き気を悪化させる恐れがあるため、なるべく避けた方が良いでしょう。
痛み止めや吐き気止めを使用する
頭痛や吐き気がつらいときは、市販の痛み止めや吐き気止めを使用するのがおすすめです。
ただし、用法・用量を守らずに服用すると、副作用や胃腸への負担が生じる恐れがあるため注意が必要です。
また、鎮痛薬には吐き気を悪化させる成分が含まれている場合もあります。
薬を使用しても症状が改善しない場合は、医療機関の受診を検討してください。
ストレスが原因で頭痛や吐き気が起きているときのセルフケア方法

ストレスが原因で頭痛や吐き気が起きている場合には、以下のようなセルフケアが効果的です。
- しっかり休む
- 生活習慣を改善する
- ストレス管理をする
- 呼吸法を実践する
- 環境調整を行う
- 医療機関を受診する
ここでは上記6つのセルフケア方法についてそれぞれ解説します。
しっかり休む
ストレスが原因で頭痛や吐き気が起きている場合、まずは十分な休息を取ることが大切です。
心身ともに疲弊している状態では、自律神経が乱れやすく、症状が悪化しやすくなります。
特に仕事や学校などの環境がストレス源となっている場合には、思い切って1日休みを取り、静かな環境で体を休めることも必要となるでしょう。
目を閉じて横になったり、できるだけ刺激の少ない空間で過ごしたりすることで、緊張が和らぎやすくなります。
生活習慣を改善する
不規則な生活は自律神経のバランスを崩しやすく、頭痛や吐き気を引き起こす要因となるため、まずは食事・睡眠・運動の基本的な生活習慣を整えることが大切です。
決まった時間に食事をとり、夜更かしを避けて質の良い睡眠を確保するよう心がけましょう。
また、軽い運動やストレッチを取り入れることで、血流やホルモンバランスが改善し、ストレスに対する抵抗力も高まります。
生活習慣を見直すことで、症状の再発予防にもつながるため、ぜひ今日から健康的な生活習慣を意識して過ごしてみてください。
ストレス管理をする
ストレスによる不調を軽減するためには、日々のストレスをうまくコントロールすることが大切です。
まずは自分がどのような場面でストレスを感じているのかを把握し、紙に書き出して可視化してみましょう。
こうすることで自覚のなかったストレスの存在に気づくこともあります。
次に、ストレス解消のための『3つのR(レスト・レクリエーション・リラックス)』を意識して、休息・趣味・癒しの時間をバランスよく取り入れましょう。
ストレスは自分が気付かない間に蓄積してしまうため、日頃からストレスをため込まないように意識することが大切です。
呼吸法を実践する
呼吸法は、ストレスによる緊張や不安を和らげ、自律神経のバランスを整えるセルフケア方法の一つです。
まずは姿勢を整え、ゆっくりと息を吐くことに意識を向けましょう。
ストレッチと組み合わせるとさらに効果的です。
ストレッチは1日1回、呼吸法は1回5分程度を1日2〜3回続けてみてください。
環境調整を行う
ストレスの原因がはっきりしていて、本人の努力では改善が難しい場合には、思い切って環境を変えるのも選択肢の一つです。
例えば、仕事での過剰な負荷や人間関係に悩んでいる場合には、部署の異動や業務の見直し、必要であれば転職も視野に入れるべきでしょう。
学校生活であれば、カウンセラーへの相談や転校も方法の一つです。
物理的な環境、例えば部屋の明るさや騒音などがストレスになっているケースもあるため、照明を落とす、防音対策をするなどの工夫も有効です。
ストレス源から距離を置くことで、頭痛や吐き気などの症状が改善することがあります。
医療機関を受診する
セルフケアを試しても症状が改善しない、または悪化している場合には、早めに医療機関を受診することが大切です。
特に、強い頭痛や吐き気、意識の混濁、けいれん、手足のしびれなどがある場合は、神経系の疾患の可能性もあるため、早急な受診が必要です。
身体症状が中心の場合には、まず内科で診察を受けても問題ありません。
ストレスや精神的な要因が強く関係していると感じる場合は、心療内科や精神科の受診も検討しましょう。
強いストレスは、ストレス性障害の一つである「適応障害」を引き起こすこともあります。
まずは一度相談だけでもしてみると、つらいストレスや症状を和らげられるかもしれません。
▶適応障害の原因となる主なストレス│母親や家族の影響は?症状や治し方も解説
吐き気を伴う頭痛は危険なため早めに医療機関を受診しましょう
ストレスによる頭痛や吐き気は、生活習慣の見直しやリラックス法によって改善が見込めることもありますが、症状が強い場合や繰り返し表れる場合は注意が必要です。
特に、突然の激しい頭痛や嘔吐、しびれや言葉のもつれなどがある場合は、脳の病気など重大な疾患の可能性があります。
自己判断で放置せず、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けることが大切です。
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必要に応じて診断書の発行もしているため、ストレスによる症状に悩んでいる方はぜひ当院までご相談ください。
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