「ストレスのせいか、朝はいつも気持ち悪い気がする」「吐くわけじゃないけど嗚咽のようになるのが嫌」
吐き気は、電車通勤中や授業中にえずくようなことがあると不安を感じて緊張に晒されるつらい症状です。
この記事では、ストレスが原因で起こる吐き気やストレス性疾患、ストレス解消法や吐き気対処法について紹介します。
吐き気はどのようにして起こるのか、しくみについても解説します。
吐き気のしくみ

吐き気は正式には嘔気(おうき)といい、身体を守るための重要な防御反応の1つで、嘔吐する前までの身体の反応のことを指します。
嘔吐(おうと)と並ぶ防御機能の働きであり、食中毒や胃腸炎などの感染症のときによく見られます。
細菌・有害物質の侵入、胃腸や脳の病気、妊娠など何らかの原因が延髄にある嘔吐中枢を刺激して起こる症状です。
刺激が軽度であれば嘔気、症状がすすめば嘔吐となります。
嘔吐中枢が刺激されると胃の出口が閉められ、胃の入り口が緩み、胃が逆流運動を起こします。
逆流運動とともに横隔膜や腹筋が収縮して胃が圧迫され、胃の内容物が吐き出されるしくみです。
そして嘔吐中枢を刺激する原因の1つに、ストレスがあります。
ストレスが原因で起こる吐き気を伴う疾患

ここでは、ストレスが原因の1つとされ、かつ吐き気を伴う疾患にはどのようなものがあるのかを紹介します。
疾患の特徴と他の症状・受診科と診断方法・治療法とかかるおおよその期間をまとめました。
自律神経失調症
自律神経失調症は、内臓を調整する自律神経系(交感神経と副交感神経)がうまくコントロールされないために現れる症状を指します。
ストレスで脳に疲労がたまると自律神経がバランスを崩してしまい、その疲労症状は内臓にも影響を与えてしまいます。
自律神経はあらゆる臓器とつながっているため、自身がもともと弱かった臓器を中心として、広範囲で複数の臓器に症状が現れます。
そのため吐き気の他にも、動悸・発汗過多・たちくらみ・頭痛・肩こり・便通異常・倦怠感・不眠・手足の冷えやしびれなど、あらゆる症状が見られます。
受診科 | 診断 | 治療法とかかる期間 |
内科 | 以下の3つを満たす
検査
|
個人差があるが3ヶ月程度で改善 |
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、吐き気などの消化器症状が慢性的に続くにもかかわらず、内視鏡検査などで明らかな異常が認められない状態を指します。
原因はまだはっきりと特定されていませんが、現時点で考えられているのは胃運動機能異常や胃の知覚過敏・胃酸過多・ストレス・ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)の感染などです。
上述の4つの症状や吐き気の他に、胃のむかつきや食欲不振・嘔吐など人によってさまざまな症状が現れることがあります。
受診科 | 診断 | 治療法とかかる期間 |
消化器内科 | 以下のうち1つ以上が3ヶ月継続
検査
|
1年〜数年単位と長引く |
十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍は十二指腸の粘膜に潰瘍ができる病気で、20〜40歳代に多くみられます。近年はピロリ感染の減少により減少傾向ですが、ストレスや薬剤も発症要因です
粘膜による防御と胃酸による攻撃のバランスが崩れることで発症します。
夜間や早朝の空腹時の腹痛が多く、食べると症状が緩和しますが、胃壁と比べて腸壁が薄いため、出血したり穴が開いたりして吐血や血便を起こしやすいため注意が必要です。
受診科 | 診断 | 治療法とかかる期間 |
消化器内科 | 検査
|
1ヶ月半〜2ヶ月ほどかかる |
胃潰瘍
「胃に穴が開く」と表現される胃潰瘍は、胃壁の筋層まで深く傷ついた状態になります。
食事中や食後の、胃が活発に動くときに吐き気や嘔吐、みぞおちの痛みや胸やけなどの症状が現れ、進行すると出血して血便につながることもあります。
原因はピロリ菌の感染や暴飲暴食、解熱鎮痛剤の継続的使用などの他に、ストレスがあるといわれています。
ストレスは蓄積すると自律神経を乱して胃腸機能の低下を招くためです。
他の症状としては、げっぷ・口臭・吐血・背中の痛みなどがあります。
受診科 | 診断 | 治療法とかかる期間 |
消化器内科 | 検査
| 急性
慢性
休養が必要。2〜3ヶ月程度かかる |
急性胃炎
急性胃炎は、急性的にさまざまな原因で胃粘膜が炎症を起こす状態で、胃粘膜が赤く腫れたりただれたりします。
急性胃炎はストレスを原因とするケースが広く知られていますが、刺激物の食べ過ぎ・飲みすぎや薬の副作用・全身疾患など誰でも発症するリスクが十分にある病気です。
また、急性胃炎は放置すると長引いたり(慢性胃炎)、胃潰瘍や胃がんに進行したりする可能性があるため、早めの治療がおすすめです。
吐き気の他には激しい胃痛・みぞおちの痛み、嘔吐、胃の膨満感・食欲低下や血便などがあります。
受診科 | 診断 | 治療法とかかる期間 |
消化器内科 | 検査
|
数日〜数週間。慢性化する場合がある |
胃がん
胃がんは、ピロリ感染、喫煙、食習慣などが主なリスク要因とされています。
ストレスが直接的な発症原因である科学的根拠は十分ではありませんが、ストレスによる自律神経の乱れが間接的に胃粘膜へ影響を与える可能性は指摘されています
また、ストレスによる自律神経の乱れによって胃の働きが弱まったり胃酸過多になることが、胃の粘膜に負担をかけるため、胃がんのリスクを高めると考えられています。
他にも、神経ストレスが胃がん細胞の成長を速めるという研究結果が発表されています。(参考:日本医療研究開発機構)
胃がんは早期の場合は特に自覚症状がなく、進行胃がんの場合も胃がん特有の症状はなく、吐き気の他に胃炎や潰瘍でも見られるような症状が主です。
受診科 | 診断 | 治療法とかかる期間 |
消化器内科 | 検査
|
術後経過は5年間は定期検査が必要 |
めまい
めまいの原因は特定が難しく、それ自体は病気ではありませんが何らかの病気の症状として現れることがあります。
ぐるぐる回る・立ちくらみ・ふらつくという3つに分けられ、程度や原因は個人で異なりますが、特にぐるぐる回る「回転性のめまい」に吐き気が伴う特徴があります。
原因として考えられているのは内耳の異常や脳の異常・加齢による機能低下、そしてストレスです。
ストレスが原因で起こるめまいの場合は、以下のような心因性の疾患が考えられます。
- メニエール病
- 良性発作性頭位めまい症
- 突発性難聴
- 前庭神経炎
- パニック障害
- 脳卒中
受診科 | 診断 | 治療法とかかる期間 |
耳鼻咽喉科 | 検査
| 検査によって判明した疾患による |
▶うつ病でめまいやふらつきが起こる?原因と効果的な対処法を解説
ストレスが原因の疾患とは
ストレスが原因の疾患には、吐き気を伴わないものもあります。
また、ストレス状態の兆候を知ることで、前もって対処できるため、症状として知っておきましょう。
ここでは、ストレス状態の兆候やストレスが原因の疾患、ストレス解消法について紹介します。
▶ストレスが引き起こす症状・病気┃限界に達したときに出る異変や受診の目安
ストレスが過度にたまっているときの症状
ストレスが過度に溜まっている場合、心と身体と行動に症状が現れます。
心の症状 | 身体の症状 | 行動の症状 |
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ストレスは、適度なものなら良い影響をもたらします。
例えば、スポーツや課題に前向きに取り組む際の緊張感などは、交感神経を目覚めさせて判断力や行動力を高めてくれます。
しかし、我慢を強いられる・責任が重い・経済的な不安などを放置するのは、ストレスが過度にたまる原因です。
以上のような症状に心当たりがある場合、次に紹介するストレス性疾患を発症しないようストレス管理が必要です。
ストレス性疾患
ストレスが原因の疾患をストレス性疾患といいます。上で紹介した吐き気を伴う疾患にも、ストレス性疾患が含まれます。
ストレス性疾患の一例は以下です。
- うつ病
- 自律神経失調症
- 適応障害
- 不安障害・パニック障害
- アルコール依存症
- 摂食障害
- 突発性難聴
- 急性胃腸炎
- 過敏性腸症候群
- 脳・心臓疾患
吐き気を伴わない疾患もありますが、ストレス性疾患は他の疾患を併発しやすい傾向があるため、放置することで吐き気が現れる可能性はゼロではないでしょう。
▶うつ病かも……何科を受診すればいいの?初めての病院選びと治療の流れをわかりやすく解説
ストレスの解消法
ストレスを解消するのがおすすめですが、時間や気持ちのタイミングが合わなければなかなか難しいものです。
以下では、時間をしっかり確保したり出かけたりするものから、少しの時間で家でできるものなど幅広いストレス解消法を紹介します。
- 適度な運動……散歩やストレッチなど運動は免疫力も高まる
- 睡眠をしっかりとる……睡眠不足とストレスの蓄積は悪循環を招く
- 映画や読書……感情を刺激する・リセットする
- 誰かと会話する……考えの整理になる・落ち着く
- 五感を働かせる……景色を眺める・音楽鑑賞・美味しいものを食べるなど
- 気持ちを書き記す……人に話せないことを吐き出す
- 創作や作業を行う……無になる時間を作る
- 瞑想する……リラックス効果・集中できる・呼吸を感じるなど
ストレスをため込まないためには根本解決も大切ですが、こまめに発散して長引かせないことがポイントです。
ストレスを完全になくすことはできませんが、適切に管理しながら生活することが大切です。
▶なぜ寝不足だとイライラするの? 脳やホルモンなど身体に起きていること
吐き気がみられる疾患

ストレスが原因ではありませんが、吐き気が見られる疾患を紹介します。
どれもただ我慢して放置してはいけない疾患です。
- 食中毒
- 腸閉塞
- 急性肝炎
- 胆石症
- 急性膵炎
- 急性胃腸炎
- 逆流性食道
- 便秘
1〜5は特に速やかに受診しなければならない症状です。
吐き気が続く場合、一旦落ち着くことはあっても毎日のように繰り返す場合などは、疾患を明らかにして治療を開始する必要があります。
自宅でできる吐き気対策
吐き気に襲われたとき、すぐに医療機関を受診できればいいですが、そうでない場合は吐き気止めを処方されるまでの間、自宅で我慢することになります。
以下は、自宅でできる吐き気対策の一例です。安静にしたうえで試してみましょう。
- 環境の対策
- 匂いが気になる場合は換気をする
- 食事の際は若干涼しめにする
- 服装や姿勢の対策
- 身体を締め付けない服装を選ぶ
- 身体を起こしたり、クッションなどを使ったりして楽な姿勢を探す
- 食後1時間は頭を高くして横になるか座るかする
- 家族の人に背中を擦ってもらう
- 口腔ケア
- 歯磨きでえずく場合、水を冷たくしてみる
- 食事の前後に口をすすぐ。レモン水でのうがいもおすすめ
- 食事と水分(摂らないと脱水症状を起こす)
- 食事や水分は少しずつに分けて摂る
- 消化の良いもの
- 食べ物の温度は室温程度にする
このような対策をして何とか凌げたとしても、すぐに対応が必要な疾患が隠れてる可能性もあるため、吐き気が続く場合は様子を見ることを考えず、早めに受診しましょう。
ストレスは軽度でも放置しない
吐き気を伴うストレス性疾患には、胃がんのように命に関わるもの、自律神経失調症のようにQOLが低下するもの、放置すると治りにくくなり長引いてしまうものもあります。
ストレスは、早い時点で気分転換や解消を試みること、漠然としていても軽度でも放置しないことが大切です。
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