いつもできていたことができない、できていたことができなくなる症状が急に現れ、「自分は今後何もできなくなってしまうのではないか」と不安や焦りを感じる人もいるでしょう。
この記事では、今までできたことが急にできなくなる具体的な症状や、できたことができなくなる原因、病気の可能性、対処法などを紹介します。
経験したことのないトラブルに直面すると動揺してしまいますが、原因がわかれば対策を取りやすくなります。ぜひ記事を最後までチェックしてみてください。
「今までできたことが急にできなくなる」とは?

今まで問題なくできていたことが急にできなくなるというのは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか?
説明がつきにくいこの状況を、分かりやすく紹介します。
急に仕事ができなくなった
今までできたことが急にできなくなるということが最も顕著に現れるのが、仕事のシーンでしょう。
仕事が急にできなくなると、仕事でのパフォーマンスが低下します。
例えば、日々の業務で以下のようなことが多くなると、「急に仕事ができなくなった」と感じることがあるかもしれません。
- 簡単な仕事でミスが増える、確認を怠る
- 時間管理が難しい。遅刻、締切や納期を守れない
- 集中力の低下、会議中に気が散る、長い作業に最後まで取り組めない
- 思考力・判断力の低下。アイデアが浮かばず、問題解決も時間がかかる
- コミュニケーションがスムーズにできず、報告・連絡・相談が滞る
- 以前のような仕事量や複雑な仕事がこなせず、効率が落ちる
以前は問題なく働けていたのに、急に電池が切れたように動けなくなる場合、精神的な症状や病気の可能性があります。
日常生活に支障が出てきた
仕事だけではなく、日常生活でできていたことができなくなってしまうこともあります。
- 入浴や歯磨き、着替えなどが億劫になり、身だしなみに気を遣わなくなる
- 掃除、洗濯、料理などの家事ができなくなる
- 支払いを忘れる、衝動買いをするなど、金銭管理ができなくなる
- 以前は好きだった趣味や楽しみに興味がなくなる
- 不眠や過眠、食欲低下や過食など、睡眠や食事のリズムが乱れる
- 外出したくなくなるため、引きこもりがちになる
意欲低下やエネルギー不足から行動が難しくなるため、以前は普通にできたことでも難しくなります。
また、このことから自己肯定感も低下するため、さらに悪循環になるケースもあります。
急に頭が働かなくなった
思考力や集中力の低下により、以下のようなさまざまな影響が出ることもあります。
- 人の名前や約束を忘れ、ものの置き場所や数分前の会話も思い出せない
- 頭がぼんやりし、ぐるぐると同じ考えを巡らせ、まとまらない
- 簡単な判断に時間がかかって疲れる
- 以前なら考えられない判断でミスを招く
- 注意力が散漫で集中できず、気が散りやすい。本や新聞などの内容が頭に入らない
- 新しいことを覚えられないため、情報や手順が理解できず更新できない
認知機能の低下はストレスや疲労、睡眠不足などが原因の一時的なものの場合もありますが、うつ病や適応障害、認知症など病気が原因の場合にもみられます。
感情面が慌ただしくなった
今までできたことができなくなると、感情面や意欲にも影響を及ぼします。
メンタルが限界に近い状態である可能性が高いでしょう。
- 気分が落ち込み、悲しかったり、楽しみを感じなかったりする
- 不安や焦りが漠然と続き、落ち着かない
- 何もやる気が起こらず、億劫である。疲労感や倦怠感がある
- 思考がネガティブになり、自分を責め、将来を悲観してしまう
- 小さなことでイライラしやすかったり、泣き出したくなったりする
- 「自分ってダメだな」と感じ、自信を失くしてしまう
これらの感情や意欲低下の様子は、うつ病や適応障害などの心の病気によく見られる典型的な症状です。
このような感情の変化と並行して、さまざまなことができなくなったと感じる場合は、ただの落ち込みとして様子を見ず、専門家への相談を真剣に検討しましょう。
今までできたことが急にできなくなる心理的・環境的な原因

心理的・環境的な問題は、今までできたことが急にできなくなる原因になる場合があります。
問題のなかったことがこなせなくなる原因になる心理的・環境的な問題を紹介します。
ストレスや疲労によるもの
精神的なストレスや身体的な疲労は、蓄積すると脳機能に悪影響を与え、集中力や判断力、記憶力などの認知機能を低下させる原因です。
仕事や家事は、どちらも思考力や判断力、時間の管理能力や業務遂行能力が必要であるため、脳が疲弊していると適切に情報の処理ができず、作業の管理が困難になります。
また、ストレスがたまり過ぎると自律神経のバランスが崩れ、睡眠不足や体調不調が引き起こされるケースも少なくありません。
これらのさまざまな機能の不調が重なり、今までできていたことが急にできなくなる状態につながります。
ビジネスイップス
ビジネスイップスは、特定の業務や状況など一定の範囲内でのパフォーマンスが、精神的な原因のために急低下する状態を指します。
例えば、プレゼンテーションが特に苦手ではない人が、急に声が出なくなったり、データ入力が早かった人が急にミスが目立つようになるなどです。
過去の失敗やプレッシャー、潜在的な不安などが引き金になると考えられ、自信があった部分で起こると落差に悩むことになります。
スキルや知識の不足からくるものではなく、精神的なブロックが引き起こす現象のため、仕事に深刻な影響を与える可能性があります。
燃え尽き症候群(バーンアウト)
燃え尽き症候群は、仕事や活動など一つのことに過度にエネルギーを注いだ結果、極度の疲労状態がみられる症状のことです。
情熱を持って取り組んでいたことに対して急にやる気がなくなったり成果が出せなくなったりするため、今までできたことが急にできなくなったように感じます。
自分の限界を超えて無理に頑張ってきた分、意欲が低下したり無関心になったり、自己肯定感が低下する様子がみられます。
今までできたことが急にできなくなる症状が見られる病気

病気が原因で、今までできたことが急にできなくなることがあります。精神的な病気の他に、身体的な病気も挙げられます。
今までできたことができなくなってしまう原因となる病気を紹介します。
精神疾患
当たり前にこなせていたことが急にできなくなる症状の原因は、以下のような精神疾患である可能性が少なくありません。
うつ病
うつ病は気分が落ち込んだり喜びを感じられなくなったりする症状が継続する心の病気です。
仕事では思考力や集中力の低下、日常生活では身の回りのことに対する意欲低下、思考に現れるネガティブな物事の捉え方などが影響し、これまでできていたことができなくなってしまうこともあります。
適応障害
適応障害は、ストレスとなる問題に対処できず、さまざまな精神症状がみられる疾患です。
気分の落ち込みや不安感・不眠や倦怠感など、作業の効率が下がったり日常的な義務が手につかなくなるなどという形で、精神面と身体面の両方に、症状が現れます。
原因である問題が明確であるため、原因が改善されれば症状も同様に改善していく特徴があります。
▶適応障害になりやすい人の特徴│性格や環境、顔つきなどを解説!予防法&治療法も
不安障害
不安障害は、過剰な不安や心配事などが持続することで日常生活に支障が出る精神疾患の総称です。
不安障害には以下のような種類があります。
- 全般性不安障害:特定のことではなく漠然としたことに対して強い不安がある。心配し過ぎて何も手につかなくなる
- 社交不安障害:他者の前での行動や交流に対して強い不安を感じるため、そういった場面を避けるようになる。会議で発言できなくなる、顧客対応ができなくなるなどがある
- パニック障害:いつ起こるか分からない発作を避けるため、発作を起こしそうな場所を避けるようになる。「行けない場所がある=できなくなる」が増える
不安障害は、「~ができなくなる」という症状が、それぞれの特徴を持って現れます。
▶不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説
統合失調症
統合失調症は、思考や知覚、感情をまとめる機能が上手く働かない精神疾患です。
幻覚や妄想も症状の一つにありますが、それよりも漠然とした変化として、何となく調子が悪い、考えがまとまらない、やる気が出ないといった症状がみられます。
実際には、集中力や判断力が低下していて物事を整然と考えられないという、統合失調症の初期症状である場合があります。
他の精神疾患や一時的な不調との区別がつきづらいため、非常に気付きにくい場合がある疾患です。
身体的疾患
身体的な疾患でも、今までできたことが急にできなくなる症状が見られることがあります。
脳の疾患
脳は人間の思考や感情・行動などを司っており、障害や不具合が起こると今まで通りに機能しなくなるため、今までできたことが急にできなくなる直接の原因になります。
以下はその一例です。
- 脳梗塞や脳出血など
- 認知症
- 脳腫瘍
- てんかん
脳の病気によって今までできていたことができなくなった場合は、一刻も早い医療機関の受診が必要です。
内分泌系の疾患
ホルモンバランスの乱れによる疾患も、心身の機能に大きく作用し、できていたことができなくなる原因となる場合があります。
以下は疑われる疾患の一例です。
- 甲状腺機能低下症
- 副腎機能低下症(アジソン病)
- 糖尿病
内分泌系の病気は適切な治療で改善が見込めるため、慢性的な疲労や体重・気分の変動など気になる症状がある場合は受診しましょう。
その他の疾患
紹介した疾患の他にも、以下のような疾患も同様の症状がみられる場合があります。
- 睡眠障害
- 慢性疲労症候群
- 自己免疫疾患
原因が疾患の場合は、疾患の治療を行うために必要な検査や診断を受ける必要があります。
今までできたことが急にできなくなる発達障害などの特性

発達障害の特性が特定の状況下で顕著になることで、「今までできたことができなくなる」と感じることがあります。
例えばADHD(注意欠如・多動性)には注意の持続が難しい特性があり、これまでできていたことでも、強いストレスや環境の変化に直面することで、できなくなる場合があります。
また、ASD(自閉スペクトラム症)では、感覚過敏や感覚鈍麻が見られることが多いです。
環境変化などで感覚的に耐えられない刺激(騒音や照明など)をストレスと感じると、できていたことができなくなることがあります。
これは『後退』といい、多くは一時的なものであり悪化ではないため、原因を理解し対処すれば乗り越えられる問題です。
今までできたことが急にできなくなった場合の対処法

できていたことが急にできなくなると「自分にできることはあるのか?」とショックを受けるでしょう。
しかし一人で抱え込んで不安の中にいる必要はありません。
今までできたことが急にできなくなった場合の対処法について紹介します。
セルフケア
専門家に相談するまでの応急処置として自分でできることもあります。
睡眠時間は確保できているか、質の良い睡眠はとれているかを見直しましょう。睡眠は精神疾患と密接な関係があります。
また、仕事中は短時間でも休憩するようにし、家ではリラックスできる時間をつくることも大切です。
心身の疲労はさまざまなことができなくなることの大きな原因となるため「休息をとる」ということをしっかり意識しましょう。
原因を考える
心身が疲労している原因を自分で把握しましょう。
頭だけで考えるのではなく、原因の心当たりを紙に書き出して具体化すると、漠然としか分からなかったものも整理されて見えてきます。
原因が特定できたら、ストレス時の気分転換法や誰を相談相手にするかなど、対処法も考えてみましょう。
自分が頑張り過ぎているところに気が付くと、妥協する方法も分かるかもしれません。自分に厳しすぎるのも原因の一つのため、褒める部分を認めることも大切です。
信頼できる人に話してみる
一人で悩みを抱え込まず、家族や友人、上司や同僚など、信頼できる人に話してみましょう。
聞いてもらうだけでも心が軽くなるかもしれませんし、客観的な意見は解決のヒントになります。
同じ経験をしたことがある人もいるかもしれません。また、共感を得ることは安心につながります。
もし、相談できる人がいない場合は、医療機関を受診しましょう。話しにくいことでも詳しく聞いてもらえます。
「何もできなくなった」と思わずにまずは相談を
今まではできたことが急にできなくなることで、絶望的な気持ちになってしまうのは仕方のないことです。
しかし、できなくなった内容を詳しく確認すれば、その原因がわかり、対策や治療が可能になります。
オンライン診療・オンラインカウンセリングの『かもみーる』では、「今までできたことが急にできなくなった」という不安に寄り添い、専門家が改善や治療の道を一緒に探します。
急に何もできなくなる症状がみられたら、専門家の力が必要な病気かもしれません。ぜひお気軽にご相談ください。
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