うつ病が原因の物忘れ|認知症との違いや日常の対処法とは

更新日 2025年06月17日

うつ病
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うつ病は、現代社会で多くの方が抱える深刻な悩みの一つです。

最近『忘れっぽい』と感じることが増えていたら、それはもしかするとうつ病による記憶力の変化かもしれません。

うつ病になると脳の集中力や注意力をつかさどる機能にも影響が現れる場合があり、とりわけ働き盛りの世代でこのような症状を経験する方が多くいます。

この記事では、うつ病と物忘れの関係について、認知症との違いや対処法を含めて分かりやすく解説します。

記憶力の低下に不安を感じている方、周囲の方の変化が気になる方は、ぜひ参考にしてください。

『忘れっぽい』のはうつ病が原因?症状の特徴を知ろう

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うつ病による物忘れには特徴があります。

他の原因で起こる物忘れとの違いを理解すると、適切な対処法を見つけられるでしょう。

うつ病による記憶力低下のメカニズム

うつ病になると、脳全体の働きが弱くなり、とりわけ集中力や注意力に影響が現れます。

これは知能が低下しているのではなく、新しい情報を覚える『記銘力』という機能が一時的に低下している状態です。

そのため、いったん忘れてしまった内容でも、ヒントがあれば思い出せるという特徴があります。

日常生活で現れる具体的な症状

うつ病による物忘れは、日常生活のさまざまな場面で現れます

職場での症状・新聞や資料を読んでも内容が頭に残らない
・会議での話し合いが頭に入らず、すぐに抜けていく
・新しい業務の手順を覚えるのに時間がかかる
・同僚の名前が出てこない
・入力ミスなどのケアレスミスが増える
家庭での症状・買い物を頼まれても忘れてしまう
・暗証番号が思い出せない
・料理中に火を消し忘れる
・同じものを重複して購入してしまう
・家族との約束を忘れがちになる

うつ病による物忘れの重要な特徴

うつ病による物忘れの特徴として挙げられるのは、まず、忘れたことに対して本人が深刻に悩むという点です。

「また忘れてしまった」「記憶力が戻らないのではないか」と不安になり、物忘れ自体がストレスになる場合があります。

また、完全に記憶が抜け落ちるわけではありません。

例えば昼食で「何を食べたかは思い出せないが、食事をしたこと自体は覚えている」という状態になります。

家族から「お昼はカレーを食べたでしょう」といわれると「そうだった」と思い出せるのが特徴です。

うつ病の物忘れと認知症の違い

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似た症状に思われるかもしれませんが、うつ病と認知症では記憶に関わる脳の働きが根本的に異なります。

症状の現れ方の違い

うつ病と認知症の物忘れ症状の現れ方の違いを、具体例を用いて説明します。

症状の種類うつ病による物忘れ認知症による物忘れ
食事の記憶朝食を食べたことは覚えているが、何を食べたかは思い出せない朝食を食べたこと自体を覚えていない
忘れ物への反応家族から指摘されると思い出せる指摘されても思い出せない
記憶の特徴ヒントがあれば思い出せる体験そのものが抜け落ちている

うつ病の場合、記憶そのものは保たれているものの、集中力の低下により新しい情報が頭に入りにくくなります。

一方、認知症では記憶を保存する機能自体に問題が生じるため、体験した出来事が丸ごと抜け落ちてしまうのが特徴です。

症状に対する本人の態度

うつ病による物忘れでは、忘れっぽくなったことを本人が深刻に受け止める傾向があります。

「また忘れてしまった」「このままでは仕事に支障が出る」といった不安や心配を強く感じ、自分から受診するケースも少なくありません。

対照的に、認知症の場合は物忘れに対してそれほど執着しない特徴があります。

忘れていても無関心でいることが多く、家族に連れられて医療機関を受診するのが一般的です。

進行パターンの違い

うつ病による記憶力の変化は、治療により改善が期待できる症状です。

適切な治療を受ければ集中力や注意力が回復し、それに伴って記憶力も元の状態に戻る可能性があります。

一方の認知症は症状が徐々に進行していく傾向があり、初期には軽度な物忘れから始まって、時間の経過とともに日常生活に支障をきたすレベルまで進展することがあります。

これらの違いを理解することで適切な対処法を選択し、必要以上の不安を抱えず前向きに取り組めるでしょう。

うつ病について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

▶︎[うつ病はどんな病気?特徴や重さごとの症状、なりやすい人の特性を紹介]

▶[うつ病の診断基準とは?軽症・中等症・重症の分類や症状について解説]

20〜30代に多い『うつ病による物忘れ』の背景

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働き盛りの20〜30代でうつ病による物忘れを経験する方も多くいらっしゃいます。

この世代において特有のライフスタイルや環境要因が、記憶力に影響を与える可能性があることが分かってきています。

この世代を取り巻くストレス要因

20〜30代は人生における重要な転換期を迎えることが多く、さまざまなプレッシャーにさらされがちです。

新卒での就職活動から始まり、職場での責任の増加、昇進へのプレッシャー、転職の検討など、キャリアに関する決断を迫られる機会が頻繁にあります。

また、結婚、出産、引越し、親の介護といった人生の大きな変化が重なる時期でもあるでしょう。

これらの変化は喜ばしいものであっても、適応するためのエネルギーを必要とし、心身に負担をかける場合があると考えられています。

現代社会特有の影響

この世代が直面するデジタル化や働き方の変化は、従来にはなかった新しいタイプのストレスを生み出しています。

現代はスマートフォンやSNSの普及によって、常に情報にさらされる環境が当たり前となりました。

その結果、一つのことに集中する時間が短くなり、深く考える習慣が減少している可能性があります。

また、長時間労働や夜型の生活習慣により質のよい睡眠を確保できないケースが増加し、睡眠不足となった脳は記憶の定着や集中力の維持が困難となります。

社会的な要因

この世代は社会的な期待を受けやすく、完璧主義に陥りがちです。

小さなミスでも過度に自分を責めてしまい、それがストレスとなって記憶力にも影響を与える悪循環を生み出すことがあります。

また、「まだ若いから大丈夫」「忙しいのは当然」という思い込みにより、適切なケアを受けるタイミングを逃してしまう場合も考えられます。

これらの背景を理解すると、単なる『忘れっぽさ』ではなく環境や生活習慣に起因する問題として捉えられるでしょう。

記憶力低下を感じたときの対処法

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物忘れが気になり始めたとき、生活のなかで取り入れられる対処法があります。

これらの方法は、症状の軽減だけでなく予防にも効果が期待できるため、継続的に実践することが大切です。

記録習慣で記憶をサポートする

記憶に頼らず外部の手段を活用すると、脳の負担を軽減しながら重要な情報を管理しやすくなります。

スマートフォンのメモアプリや手帳を活用して、重要な情報をその場で記録する習慣を身につけましょう。

単に書き留めるだけでなく、書く行為そのものが記憶の定着を助ける効果があります。

また、カレンダーアプリや付箋を使って目に見える場所に情報を配置することで脳の負担を軽減できます。

色分けや優先順位をつけると、重要度に応じた情報整理が可能です。

生活リズムの改善

規則正しい生活習慣は、脳の機能を回復させ、集中力や記憶力の向上につながる基本となります。

とりわけ睡眠は記憶の整理と定着にとって欠かせない要素です。

以下のポイントを意識して、睡眠の質を向上させましょう。

  • 就寝前1時間はスマートフォンやパソコンの使用を控える
  • 寝室の温度と湿度を適切に保つ
  • 規則正しい就寝・起床時間を維持する
  • カフェインの摂取は午後3時以降避ける

運動は脳の血流を改善し、記憶力の向上に寄与します。

激しい運動である必要はなく、通勤時にひと駅分歩いたりエレベーターより階段を選んだりするなど、日常に取り入れやすい軽度な活動から始められます。

ストレス管理とリフレッシュ

心身のリフレッシュは、ストレスによる脳への負担を軽減し、本来の記憶機能を取り戻すために欠かせません。

体を動かすもの、頭を使うもの、創作活動など、さまざまな種類の活動を組み合わせるのがおすすめです。

  • 読書や映画鑑賞で心をリラックスさせる
  • 料理や手芸などの創作活動で達成感を得る
  • 友人との会話や食事で社会的なつながりを保つ
  • 自然のなかで過ごす時間を作る

また、情報過多による脳の疲労を防ぐために、意識的にデジタル機器から離れる時間を設けるのもよいでしょう。

これらの対処法を組み合わせて継続することで、記憶力の改善と心の健康維持の両方に効果が期待できます。

ただし、症状が続く場合は専門家への相談も検討しましょう。

専門的な治療が必要なサインとタイミング

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セルフケアだけでは改善が難しい場合、専門家への相談が重要になります。

うつ病は適切な治療により回復が期待できる疾患であるため、早期の対応が回復への近道となります。

専門家への相談を検討したほうがよい症状

物忘れが単なる一時的なものではなく、以下のように生活に具体的な支障をきたしているときは注意が必要です。

また、症状の継続期間は、一時的なストレスによる物忘れと、治療が必要な状態を見分ける重要な指標となります。

日常生活への影響度・仕事でのミスが頻繁に発生し、業務に支障が出ている
・重要な約束や締切を忘れてしまうことが続いている
・家族や友人との約束を守れないことが増えている
・日常的な作業に以前より時間がかかるようになった
症状の持続期間・2週間以上、ほぼ毎日症状が続いている
・セルフケアを試しても改善の兆しが見られない
・症状が徐々に悪化している傾向がある
・休息を取っても回復しない状態が続いている

周囲からの指摘とサポート

本人では気付きにくい変化も、周囲の人からの指摘により明らかになる場合があります。

  • 家族や同僚から『最近忘れっぽくなった』と指摘される
  • 以前と比べて表情が暗くなったといわれる
  • 仕事の効率や質に変化があると周囲が感じている
  • 趣味や楽しみにしていたことへの関心が薄れている

心理的な症状との関連

物忘れだけでなく以下のような症状が同時に現れている場合は、うつ病の可能性を考慮する必要があります。

  • 気分の落ち込みや憂うつ感が続いている
  • 以前楽しめていたことに興味を感じなくなった
  • 疲れやすく、やる気が起きない状態が続いている
  • 睡眠の質が低下し、朝起きるのがつらい
  • 食欲の変化や体重の増減がある

相談のタイミング

早期の相談には多くのメリットがあります。

まず、症状が軽い段階で適切な治療を開始すると、回復までの期間を短縮できることがあります。

また、専門家による診断により、うつ病以外の原因が見つかるかもしれません。

薬の副作用や他の疾患が原因である可能性も含めて、総合的な判断を受けるのが大切です。

一人で抱え込まず信頼できる医療機関や相談窓口を利用することで、適切なサポートを受けながら症状の改善を目指せるでしょう。

オンラインカウンセリングの活用

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現代のライフスタイルに合わせた治療選択肢として、オンラインカウンセリングが注目されています。

自宅から相談ができるため通院時間が不要となり、忙しい20〜30代でも仕事との両立が可能です。

また、夜間でも相談できる場合があり、プライバシーが保たれた環境でリラックスして治療を受けられます。

オンライン診療でも対面診療と同様に、医師による適切な診断とカウンセリングにより記憶力の改善を目指せます。

物忘れや記憶力の低下に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、まずは相談してみることから始めてみましょう。

オンライン診療・カウンセリングについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

▶︎精神科・心療内科のオンライン診療のメリットとは│流れ&診断書の発行について解説

▶初めてのカウンセリングにかもみーるをおすすめする3つの理由

うつ病による物忘れは回復可能

うつ病による物忘れは、適切な理解と対処により改善が期待できる症状です。

20〜30代に多く見られるこの症状は、現代社会特有のストレスや生活習慣の変化が背景にあるケースがあります。

まずは生活リズムの改善やストレス管理といったセルフケアから始め、メモ習慣や適度な運動を取り入れることで症状の軽減をはかれます。

ただし、日常生活に支障が出ているときや症状が2週間以上続くときは、専門家へ相談するのがおすすめです。

オンライン診療・オンラインカウンセリングの『かもみーる』では、うつ病に詳しい医師や有資格心理士が、一人ひとりの状況に応じた個別サポートを実施しています。

対面での診療をご希望の場合は、『かもみーる心のクリニック(東京院)(仙台院)』にて、対面診療やTMS治療もご利用いただけます。

うつ病による物忘れにお悩みの方は、まずは『かもみーる』へご相談ください。

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