うつ病はどんな病気?特徴や重さごとの症状、なりやすい人の特性を紹介
更新日 2025年04月30日
うつ病
うつ病は、気分が落ち込んだ状態が慢性的に続く精神疾患で、心の風邪ともいわれます。
軽度のうつ病では変化に気が付きにくく、対処が遅れるケースが多いですが、疾患について理解を深めることで自分や周囲が早い段階で気付ける可能性があります。
うつ病を放置すると心身の健康を損なう危険があるため、気になる症状がある場合は早めに精神科や心療内科を受診しましょう。
この記事では、うつ病の特徴や症状、なりやすい人の性格などを紹介します。
「うつ病って何?」という根本的な疑問がある人や、軽度・中等度・重度の症状がどんな感じかを知りたい人はこの記事を参考にうつ病への理解を深めましょう。
うつ病はどんな病気?

うつ病は悲しい・つらい気分が時間が経っても治まらず、精神的・身体的な症状やさまざまな意欲の低下を引き起こす精神疾患です。
人の身体には自然治癒力というものが存在し、物理的な損傷だけではなく負の感情を抱いた際にも時間経過とともに回復する仕組みが備わっています。
しかし、時間が経過したり原因となる出来事が解決したりしても気分が回復せず、後ろ向きな状態が続くことで日常生活に支障をきたしている場合は、うつ病の可能性があります。
うつ病になるとさまざまな身体的・精神的症状を引き起こし、心身の健康に影響を及ぼすため、気になる症状がある場合は早めに精神科、心療内科を受診することが大切です。
うつ病は気分障害のうちの一つ

うつ病は気分障害のうちの一つで、他に双極性障害(躁うつ病)があります。
うつ病は、気分の落ち込みや気力の低下(うつ状態)が持続するのに対して、躁うつ病は、気分の高揚や異常なハイテンション(躁状態)とうつ状態を繰り返すのが特徴です。
うつ病と躁うつ病は治療法が異なるため、専門家による診断が必要です。
なお、日本のうつ病の診療ガイドラインでは、うつ病とDSM-IV(精神障害の診断・統計マニュアル第4版)の大うつ病性障害、単極型うつ病はほぼ同じ意味だとしています。
▶うつ病と双極性障害(躁うつ病)の違いは?症状・原因・治療法とセルフチェックリスト
うつ病の種類

うつ病には、いくつかの種類があります。
ここでは、「メランコリー型うつ病」「非定型うつ病」「季節型うつ病」「産後うつ病」の4つの種類のうつ病について解説します。
なお、うつ病の種類については以下の記事でも詳しく解説していますので、よろしければこちらも合わせてご覧ください。
▶うつ病を9種類に分けて症状・原因別に解説!重症度や間違われやすい病気も
メランコリー型うつ病
メランコリー型うつ病は、社会生活における責任やプレッシャーに疲弊することで脳のエネルギーが枯渇し引き起こされることが多いとされています。
いわゆる典型的なタイプのうつ病で、楽しい・嬉しいなどの感情をほとんど感じないのが特徴です。
極度の食欲低下や体重減少、朝の気分の落ち込みが激しい、強い罪悪感などの症状がみられます。
非定型うつ病
非定型うつ病は、何をしていても気分の落ち込みが回復しない一般的なうつ病とは異なり、好きなことやストレスを感じないことをしている場合は気分がよくなるタイプのうつ病です。
過食による体重増加の傾向があり、過眠・倦怠感・批判されることをひどく気にするなどの特徴があります。
非定型うつ病は周囲からは自己中心的・楽観的に見えてしまうことがありますが、本人は苦悩しています。
季節型うつ病
季節型うつ病は、特定の季節になるとうつ症状が発生し、約半年のサイクルで繰り返すのが特徴です。
日照時間の変化によるセロトニンの分泌不足や体内時計の乱れが原因であると考えられており、一般的なうつ病と同様に男性よりも女性のほうがなりやすいとされています。
食生活や生活リズムの改善、高照度光照射療法などの治療法が選択されます。
産後うつ病
産後うつ病は、出産したあとの母親に発生するうつ病で、精神状態の激しい乱れや疲労感・悲壮感などの症状が数週間〜数ヶ月続くのが特徴です。
症状が軽度のものをマタニティ・ブルーともいい、出産後の多くの女性が経験するといわれています。
ホルモンバランスの変化や睡眠不足、出産の疲れなどの身体的要因のほか、育児に対する不安のような精神的要因が影響している可能性が高いです。
うつ病の重さごとの特徴・症状

うつ病は、重さごとに症状や特徴が異なります。
軽度
軽度のうつ病の症状として、以下の例が挙げられます。
• 口数が減った
• 集中力が続かず作業効率が悪くなる
• 漠然とした不安や焦りを感じやすい
• やる気が起きない
• 自責感・ネガティブ思考になりやすい
• 身だしなみを気にしなくなる
初期のうつ病では、なんとなく体調が悪い、疲れやすいなどの症状や、ぼんやりとした不安・焦りを感じるなどの症状がみられます。
いつもと少し変わった様子がみられることで、場合によっては周囲の目には性格が変わったように映る可能性がありますが、日常生活に支障がでるほどではありません。
そのため、うつ病とまでは疑われずに気付くのが遅れるケースが多いため、違和感を感じたら一度相談することをおすすめします。
うつ病の初期症状については、以下の記事でも解説しています。
▶うつ病の初期症状?12のサイン丨受診目安・対処法・顔つきの変化も解説
中等度
中等度のうつ病の症状として、以下の例が挙げられます。
• 頭や身体が重い、思い通りに動かしにくい
• お腹の調子が悪い(下痢や便秘などの内臓の症状)
• 趣味への関心が薄れる・失われる
• 家から出たり、他人と会ったりすることが面倒に感じる
• 遅刻や欠席が増える
• 食欲不振または過食がみられる
• 体重の急激な増加・現象
• 不眠や過眠がみられる
中等度のうつ病では、ずっと頑張ってきたことや夢中になっていた趣味に関心がなくなったり、人と関わることが面倒くさくなったりします。
遅刻や欠席が増えて家にこもるようになり、極端に食欲が増減するケースもあります。
気力の低下とは反対に、頭ではやらなければいけないと認識しているため、自分を責めてしまう場面も多いです。
うつ病が中等度になると、周囲が異変を感じ始めることで発覚するケースが増えます。
重度
重度のうつ病の症状として、以下の例が挙げられます。
• 何も手につかなくなる
• 人とコミュニケーションを取るのが難しくなる
• 日常生活を送ることが困難になる
• 飲食が困難になる
• 一日中寝たきりで過ごすようになる
• 希死念慮がみられる
重度のうつ病では、日常生活が困難な状態まで症状が悪化し、何も手につかなくなります。
仕事や勉学に支障をきたすどころか、飲食物を口にすることも難しくなります。
人によっては、死にたい・消えたいなどの希死念慮を抱くケースもあるため、重度になる前に対処することが大切です。
うつ病になりやすい人の特徴

以下の性格や特徴がある人は、うつ病を発症しやすい傾向があります。
• 真面目で責任感が強い
• 人との関わりを大切にする
• 誰に対しても素直
• 気遣い屋で頼みごとを断れない
• 人と対立したときに先に折れる
• 人に合わせることで調和を保とうとする
• 完璧主義で道徳観が強い
• 周囲からの高い期待に応えようとする気持ちが強い
これらの性格は決して悪いものではないですが、予定外の出来事や環境の変化、周囲からの期待に応えることにストレスを感じやすく、目標達成のために無理をすることで心をすり減らしてしまう傾向があります。
完璧主義で責任感が強いと、無意識のうちに同じクオリティを周囲にも要求してしまい、それが叶わない場合でも自分で抱え込んでしまうことがあるため、知らぬ間に自分のメンタルを疲弊させてしまいます。
とはいえ、楽観的で細かいことを気にしない性格の人はうつ病にならないかというと、それは誤りです。
ここに挙げたのは一例であり、性格や特性に関係なく誰でもうつ病になる可能性があるため、異常がある場合に早めに気が付けるように本人や周囲の人が普段の様子をよく把握することが大切です。
うつ病との合併が多い疾患

うつ病は、以下のような身体疾患や精神疾患と併発するケースがある疾患です。
身体疾患
うつ病を合併しやすいとされる身体疾患には以下のものがあります。
• がん
• 心筋梗塞
• 狭心症
• 脳卒中
• 消化性潰瘍
• 慢性関節リウマチ
• 糖尿病
• 痴呆
• てんかん
• 甲状腺機能亢進症
• パーキンソン病
うつ病は、がんや内分泌疾患、冠動脈疾患、脳血管障害などのさまざまな身体疾患と合併しやすいとされています。
ここで病名を記載した身体疾患は特にうつ病との合併率が高く、患者さんの約半数がうつ病を併発しているものもあります。
うつ病は、身体疾患の治療に対する意欲を低下させたり、症状を悪化・長引かせたりするだけではなく、再発率を上昇させる原因になる可能性もあるため注意が必要です。
また、高血圧症とうつ病を併発している患者さんの場合は、血圧が安定しない、動悸・胸痛・肩こり・頻脈がみられる、虚血性心疾患を患っているなどの特徴があるケースが多いです。
精神疾患
うつ病を合併しやすいとされる精神疾患には以下のものがあります。
• 不眠症
• 不安障害
• パーソナリティ障害
• 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
うつ病は、不眠症・不安障害・パーソナリティ障害・PTSDなどの精神疾患を合併しやすいとされています。
不眠症とうつ病はお互いに影響を及ぼし合い、睡眠不足は集中力の低下や昼間のけだるさを引き起こすことでうつ病を誘発し、うつ病では眠りが浅くなったり悪夢を見たりしやすくなることで不眠症を引き起こします。
不安障害やパーソナリティ障害は、生活するうえで不安や生きづらさを強く感じる場面が多く、そのストレスを溜めこむことでうつ病につながる可能性が高いです。
PTSDも同様に、心身の疲弊によるうつ病の合併を引き起こしやすいとされています。
精神疾患が複数合併すると心身の健康に悪影響を及ぼすため、いつもと様子が違うと気付いた時点で早めに対処することが大切です。
▶適応障害・不安障害・うつ病の違い&共通点│セルフチェックや治療法も解説
うつ病の治療法

うつ病の治療法には、主に「休養・環境調整」「薬物療法」「精神療法」「TMS治療」といった方法があります。
▶うつ病を自力で治す方法はある?病院での治療法・長引く原因・自宅での過ごし方を解説
▶うつ病は治らない?発症段階や長引く理由・新しい治療の選択肢を紹介
休養・環境調整
うつ病は大きなストレスを感じている状態であるため、原因となる環境から距離を置いてゆっくり心身を休ませることが大切です。
社会人であれば職場での配置転換や時短勤務への変更、学生の場合は保健室登校や登校時間をずらすなどの配慮が必要になるケースもあります。
産後うつの場合は、子どもの世話を両親にお願いしたり、夫婦での分担を変更したりするなどの工夫をして負担を軽減することが必要です。
うつ病の治療で休養を取る場合は、周囲の人の協力や理解が欠かせません。
疾患についての理解を深め、受け入れる姿勢・環境を整えてあげることが大切です。
薬物療法
うつ病で薬物療法を行う場合は主に抗うつ薬が用いられますが、患者さんの症状や状況次第では抗不安薬・睡眠導入薬・抗精神病薬などを必要に応じて使用します。
抗うつ薬には即効性がないため、医師の指示に従って服用を継続することが大切です。
抗不安薬は、不安や緊張を和らげる目的で使用され、うつ病と不安障害が併発している場合に有効ですが、依存性があるため服用時には十分注意しましょう。
なお、軽度のうつ病の場合は薬は使用せず、生活習慣の改善や精神療法などによって治療するケースも多いです。
治療法について希望や不安がある場合は、遠慮なく医師に相談してみましょう。
▶抗うつ薬は飲まない方がいい?副作用や種類別の特徴・対処法を解説
精神療法
うつ病における精神療法は、うつ病が回復した後に再発を防止するために必要な治療で、主に認知行動療法や対人関係療法といった方法があります。
認知行動療法は、物事の捉え方や考え方を修正することでネガティブな思考に陥るのを防止し、同じ出来事があっても再びうつ病にならないために行う治療です。
対人関係療法は、ストレスの原因となる対人関係のトラブルを解決することで不安要素を解消する方法で、関係が良好になることで回復のための支援が受けやすくなる利点があります。
TMS治療
TMS治療は、磁気刺激を与えることで脳を一部活性化させ、低下した機能の回復を目指す治療法です。
治療のためには通院が必要になりますが、薬物治療で改善がみられなかったうつ病にも効果を発揮することがあります。
TMS治療は副作用や身体へのダメージが少なく、治療後も効果の持続が期待できるため、薬物治療が難しい妊娠中・授乳中の人にも適しています。
かもみーる心のクリニック(東京院)のTMS治療については、こちらをご覧ください。
うつ病は早期発見・早期治療が大切
うつ病は悪化すると日常生活に支障をきたし、心身の健康にも影響を及ぼすため、早めの治療が大切です。
またうつ病の回復には周囲の協力が必要であるため、身近な病気だという意識をもって理解を深めておきましょう。
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些細なことでも構いませんので、気になる症状がある場合はぜひ一度お気軽にご相談ください。