うつ病かも……何科を受診すればいいの?初めての病院選びと治療の流れをわかりやすく解説
更新日 2025年06月19日
うつ病
最近あまり眠れない、気分が落ち込む、仕事にも集中できない—そんな日が続いていて、「ひょっとして、うつ病かもしれない」と感じている方もいるのではないでしょうか。
とはいえ、病院に行くべきか迷ったり、「何科を受診すればいいのかわからない」と戸惑ったりすることもあるでしょう。
そんな方のために、この記事では、うつ病の可能性があるときに見られる症状や、受診すべき診療科(精神科・心療内科など)の違いについて解説します。
治療内容、病院選びのポイントについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
うつ病の可能性があるならまずは受診しよう

うつ病は、誰にでも起こりうる身近な病気です。
気分が沈んだ状態が続くと、「うつ病かもしれない」と心配になることもあるでしょう。
しかし、単なる気分の落ち込みなのか、それとも病気なのか、自分では判断がつきにくいことも少なくありません。
うつ病の症状は人によって異なりますが、精神的な不調だけでなく、身体的な症状が現れることがある点が特徴です。
以下では、うつ病によく見られる身体的・精神的な症状をそれぞれ紹介します。いくつ当てはまるか、チェックしてみてください。
うつ病の人に見られる身体的な症状
うつ病では、次のような身体的な症状が現れることがあります。
- 食欲がない
- 体がだるい、疲れやすい
- 動悸がする
- 寝つけない、何度も目が覚める(不眠)
- 寝過ぎてしまう(過眠)
- めまいや頭痛がある
こうした症状だけを見ると、風邪や自律神経の乱れと間違われやすく、「まさかうつ病とは思わなかった」という方も少なくありません。
うつ病に伴う身体症状については、こちらの記事もご覧ください。
▶うつ病になると疲れやすい?主な症状や疲れを軽減する方法について解説
▶うつ病でずっと眠い・強い眠気の原因は?過眠との関係や対処法も解説
うつ病の人に見られる精神的な症状
うつ病の主な精神的症状には、以下のようなものがあります。
- いつも不安で、焦りの気持ちがある
- 集中力が落ちて、仕事や家事が手につかない
- 何をしても楽しめず、興味が持てない
- 自分を責めてしまう
- 1日中、気分が沈んでいる
- 些細なことでイライラする
このような症状が続くと、日常生活にも大きな影響が出てきます。
うつ病の症状があるなら病院へ
身体的な不調や精神的なつらさがいくつも当てはまる場合は、うつ病の可能性があります。
うつ病は、早く気づいて治療を始めることで回復もしやすくなります。
「この程度で病院に行ってもいいのかな」とためらう方も多いかもしれませんが、心の不調も身体の不調と同じように医療機関に相談してよいものです。
少しでも不安があるなら、無理をせず、まずは病院を受診してみましょう。
うつ病は何科を受診すべき?精神科?それとも心療内科?

うつ病が疑われるとき、多くの方がまず迷うのが「何科を受診すべきなんだろう?」という点です。
心の病気に関連する診療科には、『精神科』や『心療内科』がありますが、違いがわかりにくく、どちらを選べばよいか悩んでしまうかもしれません。
ここでは、精神科と心療内科の違いや、ケース別にどちらを受診すべきかをわかりやすく解説します。
精神科とは
精神科は、うつ病・統合失調症・双極性障害(躁うつ病)などの精神疾患を専門的に診療する診療科です。
精神面の不調や障害に対して、医学的根拠に基づいた治療(薬物療法・精神療法など)を行います。
精神科では、専門的な訓練を受けた医師(精神科医)が診断から治療、必要であれば入院によるケアまで対応する点が特徴です。
総合病院の一部として設置されていることも多く、重症例や長期的なサポートが必要な方にも対応しています。
心療内科とは
心療内科は、心のストレスや不安が原因で身体に不調が出ている人を対象とする診療科です。
例えば、ストレスによる胃痛、動悸、頭痛、不眠、下痢など、「検査では異常がないのに体調が悪い」といったケースが主な対象になります。
精神科に比べると、心と身体の両方を総合的にみる傾向が強く、心身症やストレス関連の身体症状に対して治療を行います。
心療内科は、身体症状が前面に出ていて、かつ背景にストレスや心理的要因がある場合に適しているといえるでしょう。
精神科と心療内科の違い
精神科と心療内科の違いを簡単にまとめると、次のようになります。
精神科 | 心療内科 | |
---|---|---|
特徴 | 精神疾患全般を専門的に診療する | ストレスや心理的要因が関係する身体症状を治療する |
主な対象症状 | 抑うつ、不安、不眠、イライラ、幻覚・幻聴、物忘れ など | 倦怠感、動悸、疲労感、息苦しさ、めまい、腹痛、下痢 など |
向いているケース | 精神的な症状が強く、生活に支障が出ている場合 | 原因がはっきりしない身体症状が続き、ストレスが関係していそうな場合 |
精神的なつらさが主であれば精神科、身体の不調が続いていて心の問題が関係していそうな場合は心療内科を検討するとよいでしょう。
何科か迷ったらまずは内科を受診するのもOK
精神科や心療内科に行くのはなんとなくハードルが高く感じるときは、まずかかりつけの内科や地域の一般内科を受診してみるのも一つの方法です。
実際、うつ病の初期には不眠・食欲の低下・倦怠感・頭痛など、身体的な症状が現れることが多く、体調不良で内科を受診したことがきっかけで、うつ病が疑われるケースもあります。
内科では、症状の経過や心身の状態を確認したうえで、必要に応じて精神科や心療内科の受診を勧めることもあります。
紹介状を書いてもらえるため、「どこの病院へ行けばいいか分からない」という不安も軽減されるでしょう。
「いきなり専門科は不安」という方にとって、内科は気軽に相談できる入口として有効です。
無理に一人で抱え込まず、まずは体の不調として相談してみましょう。
うつ病治療|病院はどこを選ぶ?ポイントを紹介

うつ病の治療を受けるうえで、何科を受診するかだけでなく、どこの病院・クリニックを選ぶかも大切です。
治療の進み具合や継続のしやすさには、医療機関との相性も関わってきます。
ここでは、うつ病治療のための病院選びで押さえておきたいポイントを紹介します。
専門や得意とする分野を確認する
同じ『精神科』や『心療内科』の看板が掲げられていても、医師や施設によって得意分野はさまざまです。
例えば、うつ病や不安障害を中心に診療しているクリニックがある一方で、アルコール依存症や発達障害を専門にしているクリニックもあります。
受診前に公式サイトで診療内容をチェックしたり、電話で確認したりすることで、自分の症状に合った医療機関を選びやすくなります。
通いやすさは重要なポイント
うつ病の治療は1回きりでは終わりません。通院を継続することが治療の効果にも関わってきます。
そのため、自宅や職場から無理なく通える距離にあるかどうか、診療時間や曜日が生活スタイルに合っているかなどを事前に確認しましょう。
「通うのが面倒」と感じてしまうと、それが通院のハードルになってしまう可能性があります。
評判や口コミを参考にする
病院選びの際は、インターネット上の口コミやレビューも役に立ちます。
以下のような点をチェックしてみましょう。
- 医師の対応(話をしっかり聞いてくれるか、親身になってくれるか)
- スタッフの印象(丁寧で親切か)
- 病院全体の雰囲気
- うつ病治療に関する具体的な評価
ただし、口コミには主観的な感想や一時的な印象も含まれるため、複数の情報を参考にしながらバランスよく判断することが大切です。
予約の取りやすさ・システムの使いやすさ
多くの精神科・心療内科では予約制を採用しています。
オンライン予約や予約変更に対応しているクリニックは、仕事や家庭の予定が変わりやすい方にとって便利です。
また、医師の人数に対して患者数が多い場合は、予約が何週間〜数ヶ月待ちになることもあります。
「すぐに診てもらいたいのに予約が取れない」といった事態を避けるためにも、予約の取りやすさは事前に確認しておきましょう。
入院施設の有無もチェック
うつ病の症状が重い場合や、治療の途中で状態が悪化した場合には、入院が必要になることもあります。
そのため、入院設備の有無はあらかじめ確認しておきたいポイントです。
総合病院や精神科病院は、入院施設が整っていることが多く、重度のうつ病や集中的な治療が必要なケースにも対応できます。
一方、街のクリニックには入院設備がないところがほとんどです。
ただし、必要と判断された場合には、入院可能な医療機関を紹介してもらえるため、最初の受診がクリニックであっても問題ありません。
とはいえ、「途中で転院するのは不安……」という方は、最初から入院設備のある病院を選ぶというのも安心できる選択肢です。
うつ病治療の内容

うつ病の主な治療法は、休養・薬物療法・精神療法の3本柱が基本です。
症状の程度や患者さんの状態に応じて、これらを組み合わせて治療が進められます。
それぞれの治療法について詳しく解説します。
休養
うつ病治療で重要なのが休養です。心と身体の疲れを軽減し、ストレスから距離を取ることが、うつ病回復の第一歩となります。
- 職場での配置転換や業務量の調整
- 家庭内での家事負担
- 一時的に仕事や学校を休む
など、環境を整えてストレスを減らすことが必要です。
うつ病になりやすい方には、責任感が強く、真面目で我慢強いという傾向があります。そのため「休むこと」に罪悪感を抱く人も少なくありません。
しかし、回復にはしっかりと休息を取ることが不可欠です。焦らず、ゆっくりと生活のリズムを整えていきましょう。
薬物治療
うつ病の治療では、薬によるサポートが行われることが多いです。
症状に応じて、以下のような薬が処方されます。
- 抗うつ薬(SSRI、SNRI など)
- 抗不安薬
- 睡眠導入薬
- 気分安定薬
- 非定型抗精神病薬
薬の効果はすぐには現れるものではなく、数週間以上かけてゆっくり効いていくケースが一般的です。
途中で自己判断によって服薬を中止したり、量を変えたりすると、症状の悪化や再発のリスクがあります。
医師の指示を守って、根気よく治療を続けることが大切です。
▶抗うつ薬は飲まない方がいい?副作用や種類別の特徴・対処法を解説
精神療法(心理療法)
薬だけでなく、こころの面からのアプローチも重要です。
精神療法では、うつ病の原因となった思考や人間関係のパターンに向き合い、再発予防や自己理解を深めていきます。
代表的な療法には以下のようなものがあります。
- 認知行動療法(考え方や行動のクセを見直す)
- 対人関係療法(人間関係の改善を通じてストレスを減らす)
- 森田療法(症状を受け入れつつ生活していく考え方)
- 内観療法(自分の内面を見つめ直し、自己理解を深める)
精神療法は、患者さん自身の積極的な取り組みが求められる治療です。時間はかかるものの、根本的な回復や再発予防につながる効果が期待できます。
その他の治療
基本的な治療法に加えて、以下のような補助的・専門的治療が行われることもあります。
治療法 | 特徴 |
---|---|
運動療法 | ウォーキングなどの有酸素運動を行う治療法 |
TMS(反復経頭蓋磁気刺激療法) | 磁気刺激によって脳を活性化させる治療。薬が効きにくいケースに使われることもある |
高照度光療法 | 強い光(2,500ルクス以上)を一定時間浴びる治療法 |
m-ECT(修正型電気けいれん療法) | 全身麻酔で行う電気刺激療法。重度のうつ病や薬が効かないケースに使用される |
いずれも専門の医師と相談のうえ、症状や希望に合わせて選択されます。
▶TMS治療はうつ病に有効!効果が期待できる症状の特徴やメカニズムについて解説
うつ病の発症から回復までの流れ

うつ病の治療はすぐに完了するものではなく、回復までに段階的なプロセスをたどります。
一般的に、以下の3つのステップに分けられます。
- 急性期(治療初期)
- 回復期(症状が落ち着いてくる時期)
- 再発予防期(安定後も注意が必要な時期)
それぞれの時期の特徴と過ごし方のポイントを解説します。
急性期|診断~約3ヶ月
うつ病と診断されてから最初の3ヶ月ほどが『急性期』と呼ばれます。
気持ちの落ち込み、不安感などが強く、食欲不振や不眠などの症状が強い時期です。
主な治療内容は以下のとおりです。
- 十分な休養
- 薬物治療による症状の緩和
この時期は本人も家族もつらい時期ですが、焦らず治療を続けることが大切です。
1~3ヶ月程度で症状が軽くなるケースが多いものの、改善のスピードには個人差があります。
回復期|治療開始から約4~6ヶ月
うつ病の治療を始めて数ヶ月が経つと、少しずつ調子のよい日が増えてきます。
この「よくなったり悪くなったり」を繰り返す時期が回復期です。
回復期の特徴は以下のとおりです。
- 気分や体調に波がある
- 回復の兆しが見え始める
- 気力や集中力が戻りきっていない
この時期になると、「元気になってきたから薬をやめよう」と自己判断で薬をやめてしまうケースも少なくありません。
しかし、それによって急性期に逆戻りするケースも多いため、必ず医師の指示に従うことが必要です。
また、職場や学校への復帰を考え始める方も多いですが、焦りは禁物です。
まだ波がある時期であるため、無理のない範囲で活動量を増やす程度にしましょう。
再発予防期|回復後1~2年
うつ病は、一度治ったように見えても再発しやすい病気です。
そのため、症状が安定しても、再発予防のための治療は1〜2年ほど継続するのが一般的です。
この期間に大切なのは以下のとおりです。
- 薬の服用を継続する(医師の判断で徐々に減薬)
- 再発のサインを早めにキャッチする
- ストレスマネジメントを学ぶ
社会復帰後も無理をせず、自分のペースを大切にすることで、再発のリスクを下げることができます。
迷ったときは一人で抱え込まず相談しよう
うつ病かもしれないと思っても、「何科を受診すればいいのか分からない」「通院のハードルが高い」と悩む方は少なくありません。
この記事で紹介したように、症状に合わせて『心療内科』や『精神科』を受診するのが基本ですが、迷ったときは内科を選ぶのも一つの方法です。
とはいえ、誰かに相談すること自体がつらいと感じる方もいるかもしれません。
そんな方には、医師監修のオンラインカウンセリング『かもみーる』の活用もおすすめです。
認知行動療法や休職の相談も自宅からできるため、うつ病で外出が難しい方でも安心して利用できます。
つらい気持ちを一人で抱え込まず、まずは誰かに相談することから始めてみましょう。
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