人と話すと疲れるのは病気?HSPの症状や対処法、疑われる他の病気を紹介

更新日 2025年10月22日

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人といると疲れる、人と関わると疲れる人は、気を使いすぎて疲れる病気と考えられている『HSP』かもしれません。

「喋ると疲れる病気」「気を使いすぎる病気」と思われていますが、実は病気ではありません。

HSPとは、人よりストレスを感じやすく、人の言葉に敏感なところがある、繊細な特性を生まれつき持つ人のことです。

この記事では、人と話すと疲れる、友達といると疲れるなど、周りに気を使いすぎる特性を持つHSPの症状や対処法、活かし方などを紹介します。

生きづらさを感じる特性ですが長所もあります。ぜひ参考にしてください。

HSPとは

HSPとは、人の事を気にしすぎるために生きづらさを感じ、光や音・匂いなど五感が鋭いために刺激を受けやすい特性を持つ人のことです。

『HSP』はHighly Sensitive Person(ハイリー センシティブ パーソン)の略で、「とても繊細な人」という意味があります。

以下のような、人に気を使いすぎる繊細な特徴があります。

  • 周りを気にしすぎる 
  • 人と会うと疲れる
  • 人との会話に疲れる
  • 人混みにイライラする
  • つらさに敏感になる 

HSPは生まれつき持つ特性であり、性格や環境によって変わるものではなく、病気でもないため、治療法は存在していないのが現状です。

しかしHSPの生きづらさを改善したり、問題となっている症状を軽減するという意味での治療は可能です。

また、つらさを放置することで二次的な症状が現れる場合があるため、診断を受けて対処することをおすすめします。

HSPが日常で疲れる4つの特徴

HSPにはDOESと呼ばれる4つの特性があります。

またその4つが揃うことをHSPの定義としており、これらが日常生活で疲れやすい原因です。

どれか一つでも当てはまらない場合、別の病気や特性である可能性があります。

HSPが日常で疲れる4つの原因について紹介します。

情報の処理や考えが深い(Depth of processing)

何かを始める際に多彩な観点から物事を考えるため時間がかかる、調べ物を始めると深くまで掘り下げるため知識量が多いなど、情報の処理や考えが深い傾向があります。

一を聞くと十を考える思考の深さは、社交辞令やお世辞の裏をすぐに見抜きます。

しかし深く考えすぎてしまうことは、時間も労力もかかるため、疲れてしまいます。

刺激に敏感である(Overstimulated)

HSPは脳の神経系の興奮が人より長引きやすく、些細な刺激に過敏に反応する特性があります。

友達といても何気ない言葉に傷ついたり相手の気分が気になったり、大きな音や人混みなどが苦手など、刺激を受けやすい状況が苦手です。

しかし刺激を受けやすいことで、芸術や音楽などに人一倍感動しやすいというメリットもあります。

ただの気を使いすぎる人ではなく、さまざまな刺激に過敏に反応して疲弊するという特徴があります。

感受性や共感力が高い(Emotional reactivity and high empathy)

HSPは感受性や共感力が高いため、他人との境界線がうまく引けません。

映画やドラマの登場人物に感情移入して一緒に喜んだり悲しんだりして、鑑賞後に疲れる、相手の悩みや立場に入り込みすぎてトラブルに発展するなどがあります。

また、人の仕草や顔色に敏感で、感じていることや機嫌が読み取れる特性のため、過剰に受け取ってしまいます。

人の幸せは自分の幸せ、人の不幸は自分の不幸とまで考えるほど、他人と自分の区別があいまいな状態です。

些細なことに気付く(Sensitivity to subtleties)

刺激に敏感なHSPは、対人関係以外にも、多くの人が気付かないような日常の生活音や自然現象に対しても些細な刺激に気付きます。

HSPが気付いてしまう些細な刺激の一例は以下です。

  • 人の体臭や口臭
  • 身の回りの環境の変化
  • 日光の眩しさや強い風
  • 時計や冷蔵庫の音
  • カフェインや添加物
  • 肌着などの触感

些細なことが気になると集中力を欠いたり精神的に消耗する原因となり、生きづらさにつながります。

人と話すと疲れるときのHSPの対処法

HSPの人が人間関係の疲れを軽減する方法を紹介します。

人付き合いで生ずるストレスを和らげるヒントにしてください。

ひとりで過ごす時間を確保する

HSPの特性はコントロールできるものではなく、無意識のままさまざまな刺激に反応するため、疲れてしまった場合にひとりになれる時間や場所を確保して休むようにしましょう。

周囲の人にはひとりでいる時間が必要な特性であることを伝えておき、誘いを断わる場合があることを知っておいてもらいましょう。

また、週に1日は予定を入れないと決める、自宅以外にも居場所を見つけておくなどもおすすめです。

ひとりになりたいと感じるのは心身ともに疲れているサインであるため、逃さずに受け止めてしっかりと休養をとりましょう。

相手との適切な距離をとる

HSPは気を使いすぎることから、人と近づきすぎると不快に思ってしまうことがあります。

これは、HSPのパーソナルスペースが人より広いと考えられているためです。

距離感を適切に保つためには、以下の点を意識しましょう。

  • 自分にとって心地よい距離感を普段から把握しておく
  • 自分だけでなく相手の距離感も尊重する

HSPが人間関係の疲れを軽減するには、物理的な距離だけでなく、精神的な距離感も重要です。

付き合う人を選ぶ

HSPの人は感受性の高さから、人との摩擦をできるだけ避ける傾向があるため、付き合う人と気が合うことが必要です。

できればHSPの特性を理解している人と付き合うのが望ましいですが、人間関係においては他人というだけでも相手を完璧に理解するのは難しいことです。

このような場合、何を大事に考えるか、価値観が合う・共有できるかがポイントとなります。

お互いを認め合い思いやれる相手との付き合いができれば、HSPの人も心地よい人間関係を築けるでしょう。

ポジティブな考え方を意識する

HSPの人は他人との違いをネガティブに捉えやすく自己否定をしがちであるため、ポジティブに考えるように意識することを心がけましょう。

相手の発言や行動を悪く捉えるのではなく、良い方向へと変換することで、傷ついたり疲れたりすることを軽減できます。

考え方は簡単に身に着くものではありませんが、ネガティブに捉えやすい自分に気付くと、これまでと違う行動を取れるようになります。

そのうち徐々に意識付いていくため、少しずつ慣れていきましょう。

SNSやメディアへの接触をコントロールする

HSPの人は、ニュースやSNSなどで感情に訴えられるような出来事に触れることがストレスになる場合があります。

SNSは特に刺激的な情報が多く、選択する暇を与えないまま目に入ってきてしまうため、HSPにとっては疲労の原因になります。

以下のような工夫をすることで、メディアやSNSと適切な距離を保てるでしょう。

  • SNSの1日の利用時間を決める
  • 就寝前はメディアに触れない
  • ネガティブな情報には触れすぎない
  • ニュースはタイトルのみ確認する

実際目の前にいない人との人間関係に疲れてしまわないよう、メディアやSNSとは上手に付き合い、ストレスにしないよう心がけることが重要です。

HSPの診断を受ける

HSPは病気ではないため、医療機関を受診しても診断されませんが、病気の可能性がある場合、治療を受けるための診断が必要です。

人と話すと疲れるという症状がHSPのためではない場合、以下の原因が考えられます。

  • うつ病
  • 適応障害
  • 統合失調症
  • 社交不安障害
  • 回避性パーソナリティ障害
  • 発達障害

症状が深刻で日常生活に支障がある場合、ひとりで悩みを抱え込まず、HSPと病気のどちらなのかを専門家の協力によって知ることが、治療や症状の軽減につながります。

生きづらさを解消するためのサポートや、適切な治療を受けるきっかけとするため、まずはかかりつけ医に相談し、必要となる精神科や心療内科の受診への足がかりにしましょう。

HSPと治療

HSPは生まれつきの特性であって病気ではないため、医療機関を受診しても診断は受けられませんが、二次的な症状のために治療が必要になる場合があります。

HSPにかかわるさまざまな症状や疾患に対処する治療法を紹介します。

HSPの人が引き起こしやすい二次的な疾患

HSPの人はストレスを抱えやすいため、ときに二次的な他の心の病気を引き起こすことがあり、症状によっては治療が必要になる場合があります。

HSPの人が引き起こす傾向がある二次的な疾患は以下です。

  • うつ病
  • 睡眠障害
  • 不安障害
  • 適応障害
  • 身体表現性障害

うつ病はどんな病気?特徴や重さごとの症状、なりやすい人の特性を紹介

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適応障害で疲れやすいのはなぜ?原因・対処法・治療方法について解説

HSPは病気ではないため治療が必要ではありませんが、特性だからといって苦しさやつらさを1人で抱えて我慢する必要はありません。

日常に困難を感じている、心身の不調を抱えているなどの場合は、二次的な症状を引き起こす前に、症状の改善に向けて積極的に専門家に相談しましょう。

HSPを疑う場合の受診の目安

「生きづらさを何とかしたい」「HSPかもしれない」などの不安があっても、受診のハードルを高く感じる人は多いと思います。

HSPを疑う場合、以下を目安として受診を検討してみましょう。

  • 仕事や学校、日常生活や人間関係に支障がある
  • 緊張や不安が強く、精神的な負担が重く絶望的な気持ちになる
  • 眠れない、頭痛・腹痛・動悸など、身体的な症状がみられる
  • うつ病や適応障害などの二次的な症状がみられる

これらの症状で受診する場合、身体に不調がある場合は心療内科、精神的に不調がある場合は精神科が一般的ですが、まずは区別せずにどちらかを受診してみましょう。

問診

医師による問診では、現在の症状やこれまでの経緯、家庭環境や日常の状況、生育状況などを詳しく聞かれます。

その結果、生きづらさや心身の不調の原因がHSPの特性からくるものだと判断されれば、その特性について説明を受けます。

また、HSPという特性との付き合い方や対処法・サポートなどを得られる場合もあり、安心感にもつながるでしょう。

特性への自己理解が深まることは、自分自身を受け入れる重要なステップです。

薬物療法

HSPの特性が原因となっている不眠や抑うつ気分、発作、身体症状といった二次的な症状に対して、薬が処方される治療が行われることがあります。

処方される可能性がある薬は以下の通りです。

  • 睡眠導入剤
  • 抗不安薬
  • 抗うつ薬
  • 身体症状に効果のある薬(胃腸薬・頭痛薬・吐き気止めなど)

HSPの特性に対して効果のある対処法ではありませんが、症状を和らげ日常生活を送りやすくする目的で行われます。

精神療法やカウンセリング

精神科や心療内科では、HSPの人がその特性とうまく付き合っていくためのスキルを学ぶための、精神療法やカウンセリングを提供しています。

HSPの人に適しているとされる精神療法やカウンセリングでは、以下のようなことが学べます。

  • 他人の感情や要求に影響を受けすぎないよう、他人との境界線を引く
  • さまざまにある苦手な刺激から自分を守る方法
  • 感情の表現・処理方法

自分の特性を深く理解し、そのうえで具体的な対処法やスキルを身に着けられるため、HSPと上手く付き合い、ストレスに効果的に対処するために役立ちます。

TMS治療

TMS治療(経頭蓋磁気刺激療法)は、頭部に電磁刺激を流すことで、脳の働きを正常に制御する治療法です。

非侵襲的(身体に傷をつけない)な脳刺激法であり、保険適用ではありませんが、HSPに見られる抑うつ気分に対する効果のエビデンスが確立されています。

脳に直接作用するため、即効性や継続的な治療による効果持続が期待できます。

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HSPなのか病気なのか、専門家の判断が大切

人と話すと疲れることがHSPという特性によるものなのか、それとも病気なのかを知ると、症状を軽減する方法と治療のどちらが必要なのかが分かります。

HSPは特性を理解しストレスに対処することで、生きづらさの軽減が期待できます。

一方で、HSPの特性はネガティブなだけでなく、感受性の高さは創造性に活用でき、共感力は対人関係に活かされ、観察眼の鋭さは仕事や人生に役立てられる長所です。

その強みに気付くためにも、専門家に判断をしてもらうことが大切です。

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