パニック障害の対処法|自分でできることと周囲ができるサポート

更新日 2024年03月26日

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突然の動悸や息苦しさ、強い不安に襲われるパニック障害。

パニック発作は恐怖を伴う身体症状として現れ、深刻な苦しみを引き起こします。

しかし、パニック障害は適切な対処と治療によって改善できる疾患です。

この記事では、パニック障害の基礎知識から具体的な対処法、周囲のサポート方法や治療法まで詳しく解説します。

パニック障害に悩む方はもちろん、家族や友人として支えたいと考えている方も、ぜひ参考にしてみてください。

パニック障害を理解する

パニック障害のイメージ

パニック障害は突然の強い不安や恐怖に襲われる精神疾患です。

体に異常がないにもかかわらず、動悸や呼吸困難、めまいなどの身体症状が現れ、『死んでしまうかもしれない』という強い恐怖感を伴います。

パニック障害の基礎知識

パニック障害の発作は10分程度で治まることが多いものの、その苦しさは計り知れません。

パニック発作には以下の症状が含まれます。

  • 自律神経系の症状(動悸、発汗、震え、口渇など)
  • 胸部・腹部の症状(呼吸困難、窒息感、胸部の痛みなど)
  • 精神症状(めまい、現実感の喪失など)
  • 全身症状(ほてりや寒気、しびれ感など)

病院での検査では体に異常が見つからないため、理解されない苦しみを抱えるケースも少なくありません。

パニック障害の特徴

パニック障害の大きな特徴は『予期不安』と『広場恐怖』です。

予期不安とは『また発作が起きるのではないか』という強い不安感で、この不安自体がさらなる発作の引き金になることがあります。

広場恐怖は、発作が起きた場所や逃げ出せない状況(電車やバス、混雑した場所など)を避けるようになる症状です。

男性より女性の頻度が高く(男性の約2〜3倍)、好発年齢は20〜30代です。

20〜30代は就職、結婚、出産など人生の転機が重なり、社会的責任も増す時期といえるでしょう。

職場でのプレッシャーや人間関係のストレス、生活環境の変化などが発症の引き金になることがあります。

また、過労や睡眠不足、不規則な生活習慣も自律神経のバランスを崩し、パニック障害を引き起こしやすくすると考えられています。

パニック障害について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

▶︎ パニック障害になりやすい人の特徴│性格・年代・環境や遺伝など徹底解説!セルフチェックも

パニック障害の原因は?ストレスとの関係や発症・発作のきっかけについて解説

パニック発作への具体的な対処法

対処法のイメージ

パニック発作への対処法を知っておくことは、発作の不安を軽減し、症状の悪化を防ぐために重要です。

突然の発作に襲われたとき、慌てずに対応するための具体的な方法を身につけておきましょう。

発作中にできるセルフケア

一人のときにパニック発作が起きたら、まず呼吸を意識してください。

息を止め、口からゆっくり息を吐き、鼻からゆっくり息を吸うを繰り返します

自分で秒数のルールを作って数えながら行うのもよいでしょう。

深呼吸により早くなった呼吸を整え、心拍数や血圧を下げる効果が期待できます。

発作時はめまいを伴うケースもあるため、座る、または何かにもたれるなどして無理に動かないようにするのも大切です。

パニック発作は10分程度で落ち着くことが多いため、「この発作は必ず治まる」「命に関わるものではない」と自分に言い聞かせるのも効果的です。

意識が向く先を変えるテクニック

パニック発作中は不安や恐怖で頭がいっぱいになりがちです。

このような状態から抜け出すには、意識が向く先を変えるテクニックが役立ちます。

  • 54321法:五感を使って現在の瞬間に集中する方法(目に見えるものを5つ、耳に聞こえる音を4つ、肌に感じるものを3つ、香りを2つ、味を1つ特定する)
  • 飴を口に入れて味わう(過呼吸も抑制できる)
  • 声を出さずに頭の中で好きな歌を歌う
  • 時計の秒針を見て数を数えながら呼吸のペースを一定にする
  • 指を折って順番に数字を数える

これらのテクニックは日常的に練習しておくと、いざというときに役立ちます。

日常生活での予防策

パニック発作の予防には、規則正しい生活習慣を整えることが基本です。

予防策具体的な実践方法
質の高い睡眠・起床、就寝時間を一定にする
・寝室の環境を整える
定期的な運動・ヨガ、ウォーキングなど
・自分にあった運動を習慣にする
栄養バランス・規則正しい食事時間
・バランスのよい食事内容
アルコール、カフェインの制限お酒類、コーヒー、緑茶などを控える
ストレス管理・趣味や瞑想、深呼吸など
・自分にあったリラクセーション法を見つける

予防の基本は『自分の心と体のサインに敏感になること』です。

体調が不安定なときは無理をせず、休息を優先することも大切です。

発作が起きやすい環境への対応方法

パニック発作は満員電車や混雑した場所、閉鎖的な空間など、特定の環境で起きやすい傾向があります。

こうした状況に遭遇する可能性があるときは、事前に対策を考えておくとよいでしょう。

通勤経路を変えて混雑を避ける、または可能であれば時差出勤や在宅勤務なども検討してみてください。

電車や公共の場では、出口に近い場所に位置しておけば『いざとなれば逃げられる』という安心感を得られる場合があります。

また、不安になったときのために、リラックスできる場所(公園や広場など)を把握しておくのも役立つでしょう。

環境への対応は自分にあったやり方を見つけるのが大切で、少しずつ自信をつけていくことが回復への鍵となります。

パニック障害の人に対して周囲ができるサポート

サポートのイメージ

パニック障害を抱える人へのパートナーや友人など周囲のサポートは、回復への大きな力になります。

ここでは、パニック障害の人に対して周囲ができる具体的なサポート方法について解説します。

家族や友人がパニック発作を目撃したときの対応

パニック発作を目撃したときは、落ち着いた態度で接することが重要です。

発作中は本人のペースにあわせて見守ってあげてください。

背中をさすったり手を握ったりするのが有効な場合もありますが、身体接触が不安を強める場合もあるため、本人の反応を見ながらの対応が必要です。

発作が落ち着いたら、静かな環境に移動するなど、リラックスできる状況を整えてあげましょう。

『してはいけない接し方』と『してあげられるサポート』

パニック障害を抱える人への接し方には注意したほうがよい点があります。

してはいけない接し方してあげられるサポート
・急かす
・叱責する
・突き放す
・突然の身体的接触
・腫れ物に触るように過度に気をつかう
・落ち着いて対応する
・穏やかに話す
・本人の反応を見ながら優しくサポート
・いつでも力になると伝える

日常的にできるサポートとしては、買物や外出への同行、診察に付き添うなどの行動が役立ちます。

薬の服用を見守り、自己判断で服薬を中止しないよう伝えるのも重要です。

何より、パニック障害は治療により改善する病気であると伝え、前向きな気持ちを支えることが大切です。

一緒に外出するときの心構え

パニック障害を抱える人と外出する際は、外出前に当日の行程や過ごし方について話し合い、本人の不安を軽減するのが大切です。

外出先では、本人が安心できるよう出口に近い場所に座ったり、混雑を避けたりするなどの配慮も効果的です。

発作が起きた場合に備えて、落ち着ける場所や休憩できるスポットを事前に確認しておくのもおすすめします。

一緒に外出する機会を通じて積み重ねる成功体験が、患者さんが徐々に自信を取り戻していくことにつながります。

サポートする側の心のケア

パニック障害の人のサポートは、ときに支援する側にも大きな負担となります。

一人で全てを抱え込もうとせず、家族全体や友人など複数の人でサポートを分担するのが大切です。

また、パニック障害についての正しい知識を得られれば、適切なサポートができるようになります。

必要に応じて支援者向けの相談窓口やサポートグループを利用し、付き合い方や向き合い方を学ぶのもよいでしょう。

長期的な視点で無理なくサポートを続けるためにも、支援する側の心と体の健康を大切にすることが、結果的には患者さんの回復にもつながります。

パニック障害の専門的な治療とサポート

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パニック障害には認知行動療法や薬物療法などさまざまな治療アプローチがあり、症状や個人の状況にあわせて適切な方法が選ばれます。

自分にあった治療法を見つけるため、まずは専門医への相談から始めてみましょう。

認知行動療法の効果

パニック障害の患者さんには、生理的な変化(階段を上がった時の動悸など)を『死を招くような危険な緊急事態』と誤って捉える傾向があります。

この誤った警報が不安を呼び、さらに身体症状を強めるという悪循環が生じます。

この悪循環を断ち切るために、まず自分の考え方のパターンを認識し、それを客観的に検証することを学ぶのが認知行動療法です。

また、実際に不安を感じる状況に段階的に触れる『暴露療法』も効果的です。

例えば、パニック発作が起きた場所や状況を思い出し、不安の弱いものから順に経験していき恐怖感を軽減します。

認知行動療法は、薬物療法と組み合わせによってさらに効果を発揮する場合があり、再発予防にも役立つと考えられています。

薬物療法について

パニック障害の治療で主に使用される薬剤には、抗うつ薬と抗不安薬があります。

抗うつ薬はパニック発作を抑え、予期不安を軽減する効果があり、副作用が比較的少ないため第一選択として用いられることが多いです。

抗不安薬は投与直後から効果があり、予期不安を軽くするために用いられますが、依存性があるため長期使用には注意が必要とされます。

薬の副作用や服用期間については、必ず医師に相談しながら進めるのが重要です。

オンラインカウンセリングのメリットと活用法

オンラインカウンセリングは、通院の負担なく専門家のサポートを受けられる方法として注目されています。

とりわけパニック障害の方にとっては、外出による不安や発作の恐れなく相談できる点が大きなメリットです。

自宅という安心できる環境で診察を受けられるため、リラックスした状態で自分の症状や悩みを伝えやすくなります。

オンラインカウンセリングを活用する際は、事前に診察の流れや必要な準備について確認しておくとよいでしょう。

オンラインカウンセリングについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

精神科・心療内科のオンライン診療のメリットとは│流れ&診断書の発行について解説

▶︎ パニック障害のカウンセリング

TMS治療とその特徴

TMS(経頭蓋磁気刺激)治療は、パニック障害やうつ病などの治療に用いられる新しい非薬物療法です。

この治療法は、頭部に磁気を当てることで脳の特定の部位を刺激し、神経伝達物質のバランスを整える効果があります。

従来の薬物療法とは異なり、侵襲性がなく、副作用も殆どないのが利点です。

TMS治療の特徴として、一回あたりの治療時間が短く(5~15分程度)、外来で受けられる点が挙げられます。

薬物療法で十分な効果が得られなかった方や、副作用に悩まされている方にとって、新たな選択肢となる可能性があります。

TMS治療について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

▶︎ TMS治療は何に効く?効果や適応疾患&メリット・デメリットを紹介

専門家に相談するタイミング

専門家に相談するタイミングとしては、パニック発作を複数回経験した場合や、発作への不安から日常生活に支障が出始めた段階での受診をおすすめします。

また、以下のようなサインがあれば、早めに専門家に相談しましょう。

  • 発作の頻度や強さが増してきた
  • 外出や人ごみを極端に避けるようになった
  • 不眠や集中力低下、食欲不振などが続いている
  • 自己流の対処法では改善が見られない
  • アルコールや薬物に頼るようになってきた

パニック障害は早期の適切な治療により、症状の改善が見込めます。

一人で悩まず、まずは専門家に相談してみることが、回復への第一歩です。

パニック障害は適切な対処で治療できます

パニック障害は誰にでも起こりうるもので、決して珍しい疾患ではありません。

重要なのは一人で抱え込まず、周囲のサポートを受け入れることです。

家族や友人の理解と協力や、専門家への相談も回復の鍵となるため、決して一人で悩まず、まずは周囲に助けを求めてみましょう。

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