投稿日 2026年09月27日
パーソナリティ障害は、単に「性格が悪い」「個性的すぎる」という意味ではありません。
自分自身や他者の捉え方、感情の反応、対人関係、行動のコントロールなどに持続的なパターンがあり、それによって本人に強い苦痛が生じたり、社会生活に大きな支障が出たりする状態です。
本記事では、DSM-5-TRで示される10種類の特徴、ICD-11の次元モデル、似た精神疾患との鑑別、治療まで詳しく解説します。
投稿日 2026年09月27日

パーソナリティ障害は、単に「性格が悪い」「個性的すぎる」という意味ではありません。
自分自身や他者の捉え方、感情の反応、対人関係、行動のコントロールなどに持続的なパターンがあり、それによって本人に強い苦痛が生じたり、社会生活に大きな支障が出たりする状態です。
本記事では、DSM-5-TRで示される10種類の特徴、ICD-11の次元モデル、似た精神疾患との鑑別、治療まで詳しく解説します。

パーソナリティとは、その人に比較的持続してみられる考え方・感じ方・人との関わり方・行動の仕方の特徴です。
誰にでも個性や偏りはありますが、それだけで病気になるわけではありません。
パーソナリティ障害では、そのパターンが長期間にわたり、家庭・学校・職場・友人関係など幅広い場面に現れ、状況に応じて柔軟に変えることが難しくなります。
その結果、本人の苦痛や対人関係・仕事などの明らかな支障につながっていることが重要です。
診断の基本的な考え方については、American Psychiatric Association「What are Personality Disorders?」も参考になります。

DSM-5-TRでは、パーソナリティ障害を10の類型に分類し、特徴の類似性からA群・B群・C群の3つのクラスターに整理しています。
ただし、実際には複数の類型の特徴が重なることも珍しくありません。
個々の特徴が当てはまるだけで診断されるわけではなく、長期間にわたり複数の場面で持続し、本人の苦痛や社会生活上の支障につながっているかを専門的に評価します。
群 | 種類 | 中心的特徴 | 鑑別で注意する例 |
A群 | 妄想性 | 広範な不信・疑念 | 妄想性障害、統合失調症、PTSD |
A群 | シゾイド | 対人関係への関心の乏しさ、限定的な感情表現 | ASD、うつ病、統合失調症の陰性症状 |
A群 | 統合失調型 | 独特な認知・知覚、風変わりさ、対人不安 | 統合失調症、ASD |
B群 | 反社会性 | 他者の権利の軽視・侵害 | 物質使用、双極性障害、素行症 |
B群 | 境界性 | 対人関係・自己像・感情の不安定さ、衝動性 | 双極性障害、PTSD、ADHD |
B群 | 演技性 | 過度な情動性、注目を求めるパターン | 境界性、自己愛性 |
B群 | 自己愛性 | 誇大性、賞賛への欲求、共感の乏しさ | 躁状態、他のB群 |
C群 | 回避性 | 不十分感、否定的評価への過敏さ、対人回避 | 社交不安症、ASD |
C群 | 依存性 | 世話をされたい欲求、分離への不安 | うつ・不安に伴う依存、境界性 |
C群 | 強迫性 | 完全主義、秩序、コントロールへのこだわり | OCD、ASD |
他者の動機を悪意のあるものとして解釈しやすく、広範な不信や疑念が持続します。
十分な根拠がなくても、利用される、だまされる、裏切られるのではないかと疑い、友人やパートナーの忠実さを繰り返し疑うことがあります。
情報を悪用されることを恐れて自分のことを話しにくい、何気ない発言に侮辱や脅威などの隠れた意味を読み取る、侮辱されたと感じると長く恨みを抱く、といった形で現れる場合もあります。
単に慎重な性格であることや、現実に信頼を損なう経験があったこととは区別します。
妄想性障害や統合失調症では、より固定的で明確な妄想やその他の精神病症状がみられることがあります。
PTSDなどでも警戒心が強まる場合があるため、発症時期や背景を含めて評価します。
社会的な関係から距離を置き、対人関係への関心や欲求が乏しく、感情表現が限定的なパターンがみられます。
家族を含めて親密な関係をあまり望まない、一人でできる活動を好む、他者からの賞賛や批判への関心が乏しくみえる、といった特徴があります。
楽しみを感じる活動への関心が少ない場合もあります。
一人で過ごすことが好き、内向的であるというだけでは診断されません。
ASDでは幼少期からの社会的コミュニケーションの特徴、限定された興味や反復的行動、感覚特性などを確認します。
うつ病による一時的な社会的撤退や、統合失調症の陰性症状との鑑別も必要です。
親密な関係を築くことの難しさに加えて、認知や知覚の独特さ、風変わりな行動などが持続します。
自分とは直接関係のない出来事を自分に関連づけて受け取る関係念慮、文化的背景から大きく外れた奇異な信念や魔術的思考、通常とは異なる知覚体験、独特で曖昧な話し方、風変わりな外見・行動などがみられることがあります。
親しい人が少なく、対人不安が強いこともあります。
統合失調症スペクトラムとの関連が深い診断です。
統合失調症では、明確で持続的な妄想、幻覚、著しい思考・言語の解体などが中心になります。
ASDとの鑑別では、発達歴、社会的コミュニケーション、限定反復行動なども確認します。
他者の権利を軽視・侵害する持続的なパターンがみられます。
社会的規範に従わない行動、繰り返す虚偽や欺瞞、衝動性、攻撃性、自分や他者の安全を軽視する行動、仕事や金銭面などでの持続的な無責任さ、他者を傷つけても罪悪感や後悔が乏しいことなどが問題になる場合があります。
DSM-5-TRでは18歳以上で診断し、15歳以前から素行症に該当する行動が存在していたことを確認します。
犯罪歴があること自体が診断を意味するわけではありません。
躁状態や物質使用によって一時的に脱抑制や危険行動が強まっている場合なども鑑別します。
対人関係、自己像、感情の不安定さと強い衝動性が中心です。
見捨てられることへの強い恐れから、それを避けようとして必死に行動することがあります。
対人関係では、相手を非常に理想化した状態から急激に失望・否定する状態へ変化するなど、関係性が不安定になる場合があります。
自分がどのような人間なのかという自己像や価値観が大きく揺れることもあります。
衝動的な浪費、性行動、物質使用、過食、危険運転など本人に不利益をもたらす行動がみられる場合があり、自傷行為や自殺関連行動にも注意が必要です。
強い気分反応、慢性的な空虚感、激しい怒り、強いストレス下での一過性の妄想様観念や解離症状がみられることもあります。
双極性障害との鑑別では、感情変化の誘因と持続時間、睡眠欲求低下、活動性亢進など躁・軽躁に特徴的な症状を時間経過の中で確認します。
両者が併存する場合もあり、PTSD、ADHD、摂食障害、物質使用症などの併存も評価します。
境界性パーソナリティ障害については、「境界性パーソナリティ障害とは?9つの特徴・原因・治療法と接し方を精神科医が解説」で詳しく解説しています。
過度な情動性と、他者から注目されることを強く求める持続的なパターンがみられます。
自分が注目の中心でないと不快に感じる、外見や表現を用いて注目を集めようとする、感情表現が大きい一方で急速に変化し表面的にみえる、話し方が印象的でも具体性に乏しい、といった特徴がみられることがあります。
周囲から影響を受けやすかったり、実際よりも対人関係を親密なものとして捉えたりする場合もあります。
社交的であること、感情表現が豊かなこと、外見に気を配ること自体は病気ではありません。
文化的背景や生活機能を考慮し、パターンが長期間にわたり幅広い場面で続いているかを評価します。
境界性や自己愛性パーソナリティ障害との重なりにも注意します。
誇大性、賞賛されたいという強い欲求、他者への共感の乏しさなどが持続します。
自分の能力や業績を実際以上に評価する、成功・権力・美しさなどについての空想に強くとらわれる、自分は特別で特別な人にしか理解されないと考える、過度な賞賛を求める、特別扱いされることを当然と考える、といった形で現れることがあります。
他者を自分の目的のために利用したり、他者の感情や必要性を認識しにくかったりする場合もあります。
臨床像は単純な自信過剰とは限りません。
自己評価が外部からの評価に強く依存し、批判や失敗に非常に敏感で、恥、屈辱、怒りなどが強く生じることもあります。
躁状態では一時的に誇大性が強まるため、気分エピソードとの時間的関係を確認します。
社会的な抑制、自分は劣っている・魅力がないという不十分感、否定的に評価されることへの強い過敏さが持続します。
批判や拒絶を恐れて対人交流の多い仕事を避ける、好かれている確信がなければ人と関わりにくい、恥をかくことを恐れて親密な関係でも自分を抑える、新しい対人場面を避ける、といった形で現れます。
人とのつながり自体への関心が乏しいシゾイドパーソナリティ障害とは異なり、本来は人との関係を望んでいても拒絶や恥への恐れから近づけないことが多い点が特徴です。
社交不安症との重なりも大きく、両者が併存する場合があります。
回避性パーソナリティ障害については、「回避性パーソナリティ障害とは?原因や特徴、向き合い方などを紹介」で詳しく解説しています。
他者から世話をしてもらいたいという過度な欲求があり、それに伴って服従的な行動や分離への強い不安がみられます。
日常的な判断にも多くの助言や保証を必要とする、生活の重要な領域について他者に責任を負ってもらおうとする、支えを失うことを恐れて反対意見を言いにくい、自分だけで物事を始めたり遂行したりすることに自信を持ちにくい、といった特徴があります。
支援を得るために本来望まないことまで引き受ける、一人になると自分を世話できないという強い不安を感じる、重要な関係が終わると急いで別の支えとなる関係を求める場合もあります。
身体疾患、うつ病、不安症などで一時的に依存が強まっている場合とは区別します。
秩序、完全主義、精神的・対人的なコントロールへの強いこだわりがみられ、そのために柔軟性、開放性、効率性が損なわれることがあります。
細部、規則、一覧、順序、予定などにとらわれて活動の本来の目的を見失う、完全にできないことを恐れて課題を終えられない、余暇や人間関係より仕事や生産性を優先する、といった形で現れることがあります。
道徳や価値観について過度に厳格になる、価値の乏しい物でも捨てにくい、自分のやり方に従わない人には仕事を任せにくい、頑固さが目立つ場合もあります。
強迫症(OCD)とは別の診断概念で、OCDでは本人にとって望ましくない侵入的な強迫観念と、不安を軽減するための強迫行為が中心です。
ただし両者が併存することはあります。

WHOのICD-11では、DSM-5-TRの10類型とは異なり、パーソナリティ障害の重症度と特性領域を主として次元的に評価します。
パーソナリティ機能の問題と生活への影響を評価し、軽度・中等度・重度という重症度を定めたうえで、目立つ特性を記述します。
ICD-11の特性領域 | 概略 |
否定的感情性 | 不安、怒り、恥、傷つきやすさなどの否定的感情を経験しやすい |
離隔 | 対人関係や感情的な関与から距離を取りやすい |
非社会性 | 他者の権利・感情への配慮の乏しさや自己中心性など |
脱抑制 | 長期的結果を考えず衝動的に行動しやすい |
制縛性 | 完全主義、秩序、感情・行動の強い統制など |
必要に応じて境界性パターンも付記できます。
ICD-11は「どのタイプか」だけでなく、「どの程度重いか」「どの特性が治療上重要か」を明確にしやすい点が特徴です。
ICD-11の詳細は、WHO「Clinical descriptions and diagnostic requirements for ICD-11 mental, behavioural and neurodevelopmental disorders」を参照してください。

パーソナリティ障害は、一つの原因によって生じるものではありません。
遺伝的要因や生まれ持った気質、神経発達、成長過程での対人経験、家庭・学校などの環境、社会的要因などが複雑に相互作用して形成されると考えられています。
したがって、「遺伝だけ」「幼少期のトラウマだけ」「親の育て方だけ」といった単一の要因で説明することは適切ではありません。
パーソナリティの特徴や、パーソナリティ障害に関連する特性には、一定の遺伝的影響があることが双生児研究などから示されています。
ただし、特定の一つの遺伝子によってパーソナリティ障害になるわけではなく、多数の遺伝的要因と環境要因が関係すると考えられています。
例えば、483組の双生児を対象にパーソナリティ障害関連特性を調べた双生児研究では、各特性の広義の遺伝率には幅があり、中央値は約45%でした。
一方、環境の影響も大きく、特に個人ごとに異なる環境要因が多くの特性の差に関与していました。
別の双生児研究でもパーソナリティ障害全体に遺伝的影響が示されていますが、個々の診断の推定値には研究上の不確実性があります。
不安を感じやすい、感情が強く反応しやすい、衝動的に行動しやすい、対人刺激に敏感であるといった気質にも個人差があります。
こうした生まれ持った傾向そのものが病気というわけではなく、その後の発達や環境との相互作用によって、パーソナリティの形成に影響すると考えられます。
パーソナリティ障害では、感情調整、衝動制御、脅威への反応、社会的認知などに関係する脳機能についても研究が進められています。
特に境界性パーソナリティ障害(BPD)では、扁桃体や前頭前野を含む、感情処理・調整に関係する神経ネットワークが多く研究されています。
近年のBPDの社会的認知・感情処理課題を対象とした神経画像メタ解析でも、扁桃体や前頭前野などの活動の違いが報告されています。
ただし、これらは集団レベルで認められる研究上の傾向であり、個々の患者さんについてMRIや脳機能画像だけでBPDやその他のパーソナリティ障害を診断できるわけではありません。
したがって、「パーソナリティ障害は脳のこの部分の異常が原因」と単純化するのではなく、神経生物学的な脆弱性を含む複数の要因が関係すると理解するのが適切です。
成長過程での対人経験も、パーソナリティ形成に影響する要因の一つです。
虐待、ネグレクト、家庭内の不安定さなどの小児期逆境体験と、成人後の一部のパーソナリティ障害との関連が報告されています。
特にBPDでは、この関連について比較的多くの研究があります。
97研究を統合したBPDと小児期逆境体験に関するメタ解析では、BPDのある人は非臨床群や他の精神疾患群と比較して、小児期の逆境体験を報告する割合が高いことが示されました。
とくに情緒的虐待やネグレクトとの関連が大きく報告されています。
ただし、ここで重要なのは「関連がある」ことと「原因である」ことは同じではないという点です。
多くの研究には過去の体験を振り返って回答する研究デザインも含まれており、逆境体験だけからBPDの発症を説明することはできません。
逆境体験があってもパーソナリティ障害を発症しない人は多く、反対に明確な虐待やトラウマ歴が確認されない人でもパーソナリティ障害を発症することがあります。
パーソナリティ障害を「親の育て方が悪かったから」と単純に説明することは適切ではありません。
親子関係を含む発達環境が影響する可能性はありますが、それは数多くある要因の一つです。
本人が生まれ持った気質や遺伝的素因、神経発達上の特徴、家庭外での友人・学校・職場などの経験、社会環境なども相互に関係します。
また、同じ環境を経験しても、その影響の受け方は人によって異なります。
そのため、原因を本人や家族の責任に還元するのではなく、どのような要因が現在の困りごとに関係しているかを個別に理解することが重要です。
現在の精神医学では、パーソナリティ障害を単一の原因で説明するよりも、生物学的要因、心理的要因、社会・環境要因が相互に影響するものとして捉えるのが適切です。
例えば、もともと感情反応が強い気質を持つ人が、発達過程でさまざまな対人経験を重ねることで、感情調整や対人関係のパターンが形成されていく、といった考え方です。
このように考えることで、「生まれつきだから変わらない」「幼少期の経験ですべて決まってしまった」という決定論を避けることができます。
パーソナリティの特徴には一定の持続性がありますが、治療や新しい対人経験、生活環境の変化などによって、症状や対人関係、社会生活上の機能が改善することはあります。

パーソナリティ障害は、一つの性格や行動の特徴だけで診断するものではありません。
考え方や感情、対人関係、行動のパターンが長期間にわたって幅広い場面でみられ、状況に応じて柔軟に変えることが難しく、本人の苦痛や社会生活上の支障につながっているかを総合的に評価します。
診断では、主に次のような領域を確認します。
領域 | 評価する内容 |
認知 | 自分自身、他者、出来事をどのように捉えるか |
感情 | 感情の強さ、変化しやすさ、状況との釣り合い、表現の仕方 |
対人関係 | 親密さ、信頼、拒絶への反応、関係性の持続パターン |
行動・衝動 | 衝動性、抑制、リスク行動、コントロールの仕方 |
機能・経過 | いつから、どの場面で、どの程度生活に支障があるか |
診察では、現在の症状だけでなく、生育歴、これまでの対人関係、学校や仕事での適応などを確認し、そのパターンがいつ頃から、どのような場面で続いているかを評価します。文化的背景や発達段階を考慮することも重要です。
また、うつ病、双極性障害、統合失調症などの精神病性障害、不安症、PTSD、発達障害、物質使用、身体疾患などによって、現在の状態がより適切に説明できないかも検討します。
インターネット上のチェックリストは受診を考えるきっかけにはなりますが、チェックリストだけで診断を確定することはできません。また、家族や知人の特徴に当てはめて診断名を決めつけることも避けましょう。
比較 | 共通してみえる点 | 鑑別で重視するポイント |
境界性PD vs 双極性障害 | 気分の大きな変化、衝動性 | 躁・軽躁エピソードの持続時間、睡眠欲求低下、活動性亢進など。境界性PDでは対人刺激に反応した短時間の感情変化が目立つことがある |
回避性PD vs 社交不安症 | 否定的評価への恐れ、対人回避 | 回避性PDでは不十分感や対人パターンがより広範・持続的なことがある。併存も多い |
強迫性PD vs OCD | 完全主義、こだわり | OCDは侵入的な強迫観念・強迫行為が中心。強迫性PDは秩序・完全主義・統制の持続的パターン |
シゾイドPD vs ASD | 対人関係の少なさ | ASDでは幼少期からの社会的コミュニケーションの特徴、限定反復行動・感覚特性などを確認 |
統合失調型PD vs 統合失調症 | 奇異な信念・知覚、社会的孤立 | 統合失調症では明確で持続的な妄想・幻覚・思考障害など精神病症状を評価 |
境界性PD vs PTSD/C-PTSD | 感情調整、対人関係、自傷など | トラウマ曝露と再体験・回避・過覚醒などの関連を確認。併存もあり得る |
境界性PD vs ADHD | 衝動性、感情調整の難しさ | ADHDでは小児期からの不注意・多動衝動性が複数場面に存在するかを確認 |
*PDとはパーソナリティ障害の略称
鑑別に関連する解説として、双極性障害、社交不安障害、ADHD、強迫性障害(OCD)の記事も参考にしてください。

治療は診断名だけで一律に決めるのではなく、重症度、本人が困っている症状、治療目標、併存疾患、自傷・自殺リスク、生活環境などに応じて個別化します。
中心となるのは心理社会的治療であり、薬物療法は特に境界性パーソナリティ障害では補助的な位置づけです。
治療法 | 主な考え方・対象 | 位置づけ |
感情調整、苦痛耐性、対人スキル、マインドフルネスなどを体系的に扱う | 境界性PDを中心に研究が蓄積 | |
MBT(メンタライゼーションに基づく治療) | 自分や他者の行動の背景にある心的状態を理解する力を高める | 境界性PDなどで用いられる |
TFP(転移焦点化精神療法) | 治療関係に現れる自己・他者表象を扱い、統合を促す | 境界性PDなどで研究 |
スキーマ療法 | 幼少期から形成された不適応的なスキーマと対処パターンを扱う | 境界性PDなどで研究 |
CBT等 | 認知・行動パターンを検討し、より適応的な対処を学ぶ | 疾患・問題に応じて用いられる |
心理教育・家族支援 | 診断、危機対応、関係性、セルフケアを理解する | 本人・家族双方の支援として重要 |
APAの境界性パーソナリティ障害ガイドラインでは、文献上の支持があり中核的特徴を標的とする構造化された心理療法を推奨しています。
一つの心理療法だけが絶対的な「標準治療」というより、構造化された治療を継続し、本人の状態や希望に合わせることが重要です。
代表的な心理療法の一つである弁証法的行動療法(DBT)については、かもみーるの解説記事でも詳しく紹介しています。
境界性パーソナリティ障害の治療については、American Psychiatric Association「Practice Guideline for the Treatment of Patients With Borderline Personality Disorder」を参照しています。
パーソナリティ障害そのものを一律に治療する薬は確立していません。
薬物療法を行う場合には、衝動性、怒り、感情不安定性など、治療上問題となる特定の症状を標的として補助的に用います。
APAの診療ガイドラインでも、薬物療法は特定の測定可能な標的症状に対し、期間を限定して心理療法に追加することが提案されています。
例えば、第二世代抗精神病薬のクエチアピンは、小規模なランダム化比較試験でBPD症状の改善が報告されています。
また、リチウムについても怒りや衝動性などへの効果を示唆する小規模研究があります。
NMDA受容体拮抗薬のメマンチンについても探索的なランダム化比較試験で症状改善が報告されています。
ただし、いずれもBPDに対する標準的な薬物療法として確立しているわけではありません。
薬物療法を検討する場合には、標的症状、併存疾患、副作用などを考慮し、効果を定期的に評価することが重要です。
薬物療法の位置づけについては、NICE「Borderline personality disorder: recognition and management」も参考になります。
自傷や自殺念慮、強い衝動性、物質使用などがある場合は、安全性評価が治療の優先事項になります。
危機時だけでなく、平時から本人と治療者が危機対応の方針を共有しておくことが重要です。
パーソナリティ障害は、かつては「一度形成されると生涯変わりにくい」と考えられることもありましたが、現在では、症状や対人関係、社会生活上の機能が長期的に改善することがあることが分かっています。
特に長期的な経過について研究が蓄積している境界性パーソナリティ障害(BPD)では、多くの人が時間の経過とともに症状の寛解に至ることが報告されています。
BPD患者290人を長期的に追跡した研究では、10年間で93%が少なくとも2年間の症状寛解を経験し、86%が4年以上持続する寛解を経験しました。
一方、症状の寛解に加えて良好な社会・職業機能を満たす「回復」に至った人は50%でした。
さらに同じ集団を追跡した16年間の前向き追跡研究でも、BPDでは長期的な症状寛解に至る人が多い一方、良好な社会・職業機能まで含めた「回復」は、症状の寛解よりも達成・維持が難しいことが示されています。
つまり、「診断基準を満たさなくなること」と「仕事や人間関係を含めて完全に生活機能が回復すること」は同じではありません。
感情の不安定さや自傷などの症状が改善しても、安定した就労、親密な対人関係、社会参加などの機能面が十分に回復するまでには、より長い時間を要する場合があります。
そのため治療では、「性格そのものを別人のように変える」ことを目標にするのではなく、感情や衝動をより適切に調整できるようになること、安定した対人関係を築くこと、自分自身の特徴を理解すること、そして仕事や学業を含む生活機能を改善することを目指します。
パーソナリティ障害だから一生変わらないと考える必要はありません。
適切な治療や継続的な支援によって、症状だけでなく生活上の困難も改善していく可能性があります。
診断名だけで相手のすべての言動を説明しようとしないことが大切です。
一方で、家族が何でも受け入れ続ける必要もありません。
できること・できないことの境界を明確にし、感情的な対立が激しいときには、その場で結論を出そうとせず距離を取ることもあります。
自傷や自殺を示唆する言動がある場合には、単なる「気を引く行動」と決めつけず、安全確保を優先して医療機関や救急サービスへの相談を検討してください。
家族自身が疲弊している場合には、本人とは別に専門家へ相談することも選択肢です。
対人関係や感情の問題が長く続き、仕事・学業・家庭生活に支障が出ている場合や、うつ、不安、自傷、依存などを伴う場合には、精神科・心療内科への相談を検討してください。
受診では「パーソナリティ障害かどうか」だけではなく、現在最も困っていること、いつ頃から続いているか、どのような場面で問題が起きるかを伝えると評価につながりやすくなります。
宮城県でパーソナリティ障害の相談をしたい場合は、かもみーる心のクリニック仙台院にご相談ください。
パーソナリティ障害は「一生変わらない」ものではありません。適切な心理療法や継続的な支援によって、症状や対人関係、社会生活上の機能が改善することがあります。 特に研究が多い境界性パーソナリティ障害(BPD)では、長期追跡研究において、時間の経過とともに診断基準を満たさなくなる「寛解」に至る人が多いことが報告されています。一方、症状が改善しても、安定した就労や対人関係などの生活機能が回復するまでには時間を要する場合があります。 治療では性格そのものを別人のように変えるのではなく、感情や衝動への対処、安定した対人関係、自己理解、生活機能などを改善することを目指します。
パーソナリティ障害は、遺伝や親の育て方など、一つの原因だけで生じるものではありません。 遺伝的要因や生まれ持った気質、神経発達、幼少期からの対人経験、家庭・学校などの環境、社会的要因などが複雑に相互作用すると考えられています。 虐待やネグレクトなどの小児期逆境体験と一部のパーソナリティ障害との関連も報告されていますが、逆境体験がある人すべてが発症するわけではありません。そのため、「親の育て方が悪かったことが原因」と単純に説明することは適切ではありません。
パーソナリティ障害が疑われる場合は、精神科や心療内科への受診を検討します。特に、対人関係や感情のコントロール、衝動的な行動などの問題が長く続き、仕事・学業・家庭生活に支障が生じている場合は、精神科で相談するとよいでしょう。 診察では、現在の症状だけでなく、生育歴やこれまでの対人関係、学校・仕事での適応なども含めて総合的に評価します。また、うつ病、双極性障害、ADHD、PTSDなど、似た症状を示す精神疾患がないかを確認することも重要です。 「自分がパーソナリティ障害か分からない」という段階でも受診できます。診断名を自分で決めてから受診する必要はなく、現在困っている症状や生活上の問題について相談することから始められます。
この記事の監修者
医療法人社団弘愛会理事長
赤堀 将太郎こんにちは、赤堀将太郎と申します。 心療内科のクリニックに受診するまでに心理的なハードルが大きいかと思います。 そういった場合、「かもみーる」で病院に行くべきかどうかなど気軽にご相談ください。 オンラインで御対応いたします。 また現在、どうしても仕事がつらくて休職したいと思っているが病院に行くのを迷っている方に対して、場合によっては診断書を発行することも可能です。(オンライン診察となります) そういった場合も遠慮なくお申し付けください。
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