PMSがひどいとPMDDに進行する?症状や原因、対処法や治療法を紹介

更新日 2025年09月11日

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生理の数日前から現れる、日常生活に支障をきたすPMS(月経前症候群)に悩む方は少なくありません。

PMSは、放置するとさらに重症な症状であるPMDD(月経前不快気分障害)に進行する可能性があります。

この記事では、PMSがひどい時の症状や原因、セルフケアなどの対処法、効果があるとされる薬物治療について紹介します。

生理前だから仕方ないと我慢する人が多いPMSですが、つらい症状への適切な対処のために、ぜひご一読ください。

PMSとは

PMSとは生理が始まる3~10日前に現れる、生理にまつわる心身の不調のことです。

PMSの症状は生理が始まると数日以内に改善し、生理開始4日目から13日目くらいまでは症状がみられません。

PMSでは精神的または身体的症状がみられ(後述します)、日本人女性の50~80%という高い割合で引き起こされています。

(参考:厚生労働省「働く女性の健康課題とその対策」)

その多くは日常生活に支障をきたしているといわれていますが、医療機関を受診せず、症状を我慢してしまう女性も少なくありません。

PMSとは?症状・原因・治療方法などについてわかりやすく解説

PMSの症状

PMSには精神(情緒)的症状と身体的症状の2種類があります。

以下はPMSの診断基準となる症状です。

(参考:日本産婦人科学会・日本婦人科学会「産婦人科 心療ガイドライン 婦人科外来編 2023」)

情緒的症状

身体的症状

  • 抑うつ
  • 怒りの爆発
  • 易刺激性・いらだち
  • 不安
  • 混乱
  • 社会的引きこもり
  • 乳房緊張感・膨張
  • 腹部膨満感
  • 頭痛
  • 関節痛・筋肉痛
  • 体重増加
  • 四肢の腫脹・浮腫

これらの症状が以下の条件を満たす場合にPMSと診断されます。

  • 過去3ヶ月の生理周期において、生理前の5日間に上記の症状が少なくとも1つ存在
  • 上記の症状が生理開始後4日以内に解消し13日目まで再発しない
  • 薬やアルコールなどによらない
  • 症状が現れた後、2周期にわたって繰り返す
  • 社会的、経済的、学問的活動に明らかに支障がある

排卵後から生理が始まるまでの期間に症状が現れます。

生理が始まっても下腹部が張る、頭痛や下腹部痛がひどい場合はPMSではなく月経困難症かもしれません。

PMSの主な症状は?原因と対策方法について解説

PMDDとは

PMDDは、PMSの症状が進行(悪化)し、精神症状がうつ病のような形で際立って現れる状態のことで、PMSの重症型とされています。

生理のある女性のうち3~8%の割合で存在し、症状が現れる期間はPMSと同様です。

(参考:厚生労働省「働く女性の健康課題とその対策」)

以下はPMDDの診断基準です。PMDDでは以下のような症状がみられます。

(参考:日本産婦人科学会・日本婦人科学会「産婦人科 心療ガイドライン 婦人科外来編 2023」)

A

B

  • 気分の変動が激しい・情緒不安定
  • イライラがひどく、すぐに怒る、または対人関係での摩擦の増加
  • 抑うつが著しい、絶望感がある、または自己卑下の気持ちが現れる
  • 著しい不安や緊張がある

  • 仕事・学校・趣味・友人関係などに対して興味が薄れる
  • 何事にも集中できない
  • 倦怠感、疲労感があり、気力が著しくなくなる
  • 食欲の著しい変化、過食や特定の食べ物だけを食べるなど
  • 不眠・過眠が強く現れる、意欲が低下しすぎて引きこもる
  • 圧倒される、自分のコントロールができなくなる
  • 他の身体症状。乳房痛・関節痛・筋肉痛・腹部膨満感・体重増加など

以上の症状に加えて、以下の症状を満たすとPMDDと判断されます。

  • Aの症状が1つ以上あり、かつAとBの症状を合わせて5つ以上症状があること
  • これらの症状のために日常生活が送れない
  • 対人関係に支障が出る
  • 毎月生理前にみられ、生理が始まると改善、生理後はほとんど症状がない
  • これらの症状が1年以上続いている
  • 受診してから2ヶ月間、同様の症状が見られる

生理前になると気分が変動してさまざまな症状が起こり、出かけられなくなったり、人が変わったようになってしまうこともあります。

PMSはストレスで悪化する?症状がひどくなる要因やストレス解消法について解説

PMS・PMDD以外の生理中の症状

生理に関わる不快な症状には、PMS・PMDD以外にも、PEMSや月経困難症があります。

PEMSは周経期症候群といい、PMSとは異なり症状のピークが生理中に現れるのが特徴です。

身体症状よりも精神的・社会的症状がメインで、倦怠感、無気力、一人になりたいなどの症状がみられ、生理が終わるまで続きます。

もう一つは月経困難症という、生理中の強い下腹部痛や腰痛・頭痛などの痛みや吐き気・疲労感・イライラなどがみられる症状です。

月経困難症は痛み物質が原因の機能性と、原因が疾患である器質性の2種類があり、器質性月経困難症は放置により悪化や不妊につながる可能性があるため、受診が必要です。

PMSがひどい原因とは?

PMSが悪化する原因には、女性ホルモンのバランスが急激に崩れることが挙げられます。

女性ホルモンのバランスを崩すのは、以下に紹介するストレスや生活習慣です。

ここでは、PMSの症状がひどくなってしまう原因を紹介します。

ストレス

生理前には「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが減少するため、イライラしたり落ち込んだりしやすくなります。

また、生理前は自律神経のバランスが乱れやすく、心身を緊張状態にする交感神経が優位に働き、リラックスさせる副交感神経の働きが弱まります。

このような状態のときに人間関係や仕事上のトラブルなどの問題が加わると、さらにストレスが重なり、PMSの症状が悪化します。

ストレスとは?溜まったときに見られる症状や疾患・解消法などを紹介

食生活の乱れ

食生活の乱れは、女性ホルモンのバランスや心身の変化に大きな関わりがあります。

ホルモンバランスが乱れやすい食事の一例は以下です。

  • 欠食や偏食
  • 揚げ物やファーストフードが多い
  • 野菜不足
  • お菓子などの間食が多い

栄養バランスが悪い、無理なダイエットで栄養が足りない場合などはホルモンバランスの乱れを引き起こします。

また、生理前は食欲が増したり甘いものが欲しくなったりするなど食事が変化しやすく、血糖値の乱高下がさらなる甘いものや過食への欲求を引き起こし、PMSの症状として現れます。

タバコやアルコール

タバコやアルコールは万病に対してリスクがありますが、PMSの悪化にもつながります。

タバコは血管を収縮させるため血の巡りを悪くし、栄養を全身に届けられず、身体が冷えやすくなります。

また、生理前に過度の飲酒をすると低血糖状態になりやすく、利尿作用によって生理中の脱水症状にもつながるため、PMSの症状が悪化します。

産後はPMSがひどくなる

出産はホルモンバランスを大きく変動させるため、産後はPMSの症状がひどくなる場合があります。

また、新生児の育児では睡眠不足や疲労が重なるため、症状がさらに悪化する可能性が考えられます。

産後のホルモンバランスが戻るには時間がかかるため、ひどい状態の場合は我慢せずに医師に相談することをおすすめします。

PMDDの原因とは?

PMDDはPMSの中でも精神症状が重く、日常生活に支障をきたすレベルで悪化した状態のことです。

PMSがなぜPMDDに進行するのかは分かっていませんが、ホルモンバランスの他に性格や環境要因が関係していると考えられています。

PMDDを引き起こしやすい性格の一例は以下の通りです。

  • 律儀・真面目
  • 自分に厳しい
  • 完璧主義
  • 我慢してしまう
  • こだわりが強い
  • 負けず嫌い

また、環境要因としては以下が考えられています。

  • 妊娠・出産の経験がある
  • 子育て中である
  • 仕事を持っている
  • 飲酒や喫煙の習慣がある
  • 肥満
  • 遺伝

PMDDの原因には、人それぞれの状況や条件など、以上のような要因が複合的に関与しています。

PMSがひどいときの対処法

PMSがひどいときに、自分でできる対処法を紹介します。

PMSを悪化させない、PMDDに進行させないためには、ストレス管理が重要です。

以下に紹介する方法で健康的な生活を目指し、心身のバランスを安定させましょう。

食生活を改善する

栄養が豊富な食事を摂ることで、ホルモンバランスを整える効果が期待できます。

以下は効果が期待できる栄養素が取れる食材です。

  • カルシウム:鮭、牛乳、チーズ、小松菜、豆腐、わかめなど
  • マグネシウム:アボカド、ほうれん草、ナッツ、ひじき、煮干しなど
  • ビタミンB6:鶏むね肉、レバー、バナナ、玄米、まぐろなど

栄養素だけでなく、食事を摂るタイミングを規則正しくすることも血糖値を安定させる効果が期待できます。

新鮮な野菜や果物を積極的に取り入れましょう。

軽い運動で心身をリフレッシュ

ヨガやウォーキングなどの軽い運動は、ストレスホルモンを減少させ、幸せホルモンのエンドルフィンの分泌を促進するため、ホルモンバランスの面でもリフレッシュ効果が期待できます。

呼吸法と組み合わせたり、自然を感じながら歩いたりすることで、リラクゼーション効果も高まります。

毎日気負って続けなくても、週に数回程度で効果が期待できるため、少しずつから始めてみましょう。

症状を記録する

生理周期が始まった日を基準とし、生理周期に沿って、いつ・どのような症状があったかを記録しましょう。

続けて記録しておくと、症状の予測が立てやすく、予定の管理がしやすくなります。

例えば、胸が張って痛くなる頃には身体を圧迫しない下着をつける、むくみや体重が増える時期には塩分を控えて水分をためないようにするなどです。

精神的に不安定な頃には人との約束を入れないなどの対策もできます。

市販薬を服用してみる

PMSの症状がつらい場合、一時的な対処として市販の薬を服用する方法もあります。

生理には痛みの症状がみられることが多いですが、痛みを我慢することはストレスによる症状の悪化を招いてしまう可能性があるため、鎮痛剤を利用すると良いでしょう。

また、PMSは心の不調を招く場合がありますが、抑うつやイライラ、乳房の張りや頭痛などの身体症状に効果が期待できる市販薬もあります。

ただし、市販薬はあくまでつらいときの応急処置です。根本的な原因を解決できるわけではないため長期使用は避け、なるべく早めに医療機関で相談しましょう。

医療機関を受診する

セルフケアで効果がみられない、仕事や日常生活に支障をきたしている、またはPMDDの可能性が感じられる場合は、医療機関を受診しましょう。

医療機関で検査を受け、他の疾患にかかっていないかどうかの区別をすることも必要です。

PMSはまず婦人科を受診するのがおすすめですが、PMDDで精神的な症状が強く出ている場合、心療内科や精神科の受診を検討してもいいでしょう。

心療内科や精神科を受診したことがなく不安な人は、オンライン診療で相談するのもおすすめです。

PMDDは重症例として区別されているため、自己判断で様子をみたり、一人で抱え込んだりせずに、専門家へ相談することが大切です。

PMSやPMDDの治療

PMSやPMDDの治療は薬物治療が一般的です。

PMSやPMDDには以下のような治療法があります。

  • 経口避妊薬:低用量ピル。排卵を抑制するため、PMSやPMDDの症状改善に有効
  • 漢方薬:生理に関連する症状は血の異常として、体質に合わせて処方
  • 対症療法:睡眠や精神安定、むくみなどの対症療法として薬を処方
  • 偽閉経療法:ホルモンのレベルを閉経の状態にする
  • 抗うつ薬:SSRI。セロトニン濃度を高める薬。PMDD治療の第一選択とされている
  • TMS治療:経頭蓋磁気刺激療法

TMS治療は米国FDAで認可を受けている、うつ病などの精神疾患に有効な治療法ですが、日本ではまだ一部の医療機関でしか導入されていません。

侵襲性がなく投薬に頼らない、新しい治療方法です。

PMSからPMDDへの進行を防ぐためには、生活習慣の見直しとストレス管理、そして早期の医療機関への相談と、これらの治療法が効果的です。

TMS治療はうつ病に有効!効果が期待できる症状の特徴やメカニズムについて解説

生理の不快な症状は我慢しないで相談を

生理が来るたびに不快な症状に悩まされて憂鬱な気分にさせられる人や、生理だから仕方ないということで我慢している人は多いと思います。

しかし、ひどいPMSは悪化するとPMDDにつながることもあり、治療が必要な状態です。

身体的な症状・精神的な症状のいずれの場合も、「症状がひどい」「つらい」と感じる場合は、一度医療機関で相談してみましょう。

オンライン診療・オンラインカウンセリングの『かもみーる』では、生理に付随する精神的な悩みを相談できます。

「生理の悩みなのに相談しても大丈夫?」と心配することはありません。毎月、不安やイライラ・落ち込みなどが強くて悩んでいる人は、一度ぜひお気軽にご相談ください。

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