「気づいたら涙があふれている」
「自分でも理由が分からないのに泣いてしまう」
そんな経験に、戸惑ったことはありませんか?
訳もなく涙が出ることは珍しいことではなく、心や体が発している何らかのサインかもしれません。
その背景には、ストレスや疲労、自律神経やホルモンの乱れなど一時的な要因から、うつ病や不安障害などの心の病気まで、さまざまな要因が考えられます。
今回は、涙が出る仕組みや予測される病気、日常でできるセルフケア、そして受診を考えるべきタイミングについて解説します。
一人で抱え込まず、まずは原因を知ることから始めてみましょう。
なぜ訳もなく涙が出るの?泣くことの役割と心への影響

訳もなく涙が出ると「なんで自分は泣いてしまうの?」と不安になりますが、涙には本来、人間の心と体を守る大切な役割があります。
ここでは、涙の種類や心との関係、そして泣くことがもたらすメリットについて解説します。
涙の種類と心との関係
涙の種類は大きく3つに分けられ、それぞれ心身に異なる働きを持っています。
- 基礎涙:常に分泌されており、目を潤して乾燥を防ぐ。目の健康を保つ基本的な役割を果たす
- 反射性の涙:煙や玉ねぎの刺激など外部要因で分泌され、異物を洗い流し目を守る
- 感情的な涙:悲しみや喜び、安心感など強い感情に反応して出る
特に感情的な涙には、無意識のうちに心のバランスを取ろうとする働きがあるため「訳もなく涙が出る」と感じる現象も、自然な心の反応だと言えます。
泣くことがもたらす4つのメリット
涙を流すことは、私たちの心身にプラスの効果をもたらします。
- ストレス軽減:ストレスホルモンを排出し、気持ちをリセットさせる
- リラックス効果:副交感神経が優位になり、心身の緊張を和らげる
- 情動浄化作用:感情を外に出すことで不安やもやもやが整理され、心が軽くなる
- 社会的サポート:周囲から共感や支援を得やすくなる
このように、泣くことは弱さではなく、心と体を守る自然な仕組みなのです。
涙を受け入れることが、心の健康維持につながります。
急に涙が出る・止まらないのはなぜ?

涙が急に出たり止まらなくなったりする背景には、目の不調やアレルギー、心身の疲労、さらには自律神経やホルモンの乱れなど、複数の要因が関係しています。
ここでは、代表的な要因について解説します。
目の不調やアレルギーによる影響
目のトラブルやアレルギー反応は、涙の分泌を増やします。
ドライアイ | 涙が目の表面に留まる時間が減って乾燥が進むと、反射的に涙が分泌される。パソコンやスマホの長時間使用が、原因となりやすい |
眼精疲労 | 目の酷使により疲労が溜まると、涙の調整機能が乱れ、涙もろくなることがある |
アレルギー性結膜炎 | 花粉やハウスダストなどが原因で結膜に炎症が起こり、かゆみや充血とともに涙が出る |
涙が止まらない場合は、一度目の健康状態を確認することも大切です。
ストレスや疲労による影響
心の状態は、涙の分泌に直結します。
強いストレスや疲労が重なると、感情のコントロールが難しくなり、些細なことでも涙があふれることがあります。
近年の研究では、涙液の中にストレスホルモン(コルチゾール)が含まれていることが分かってきました。
そのため「泣くことで気持ちが軽くなる」と感じる理由は、この生理的な反応と関係していると考えられています。
自律神経の乱れやホルモンバランスの変化
自律神経やホルモンは、心身の安定に大きな役割を果たしており、そのバランスが乱れると涙の出やすさに影響を及ぼします。
自律神経は交感神経と副交感神経から成り、ストレスで交感神経が優位になると感情の制御が難しくなって、涙が出やすいです。
また女性の場合、月経周期や妊娠、産後、更年期などホルモンの変動によって気持ちが不安定になりやすく、涙もろさとして現れます。
男性でも、加齢や生活習慣の影響でホルモンバランスが崩れると、本来なら我慢できるはずの場面でも涙が出てしまうことがあります。
▶【精神科医監修】更年期障害は何歳から始まる?具体的な期間や主な症状について解説 | かもみーる
訳もなく涙が出るときに考えられる病気や身体の不調とは?

訳もなく涙が出る場合、心の病気や身体の不調が隠れている可能性があります。
- うつ病
- 適応障害
- パニック障害や不安障害
- 甲状腺疾患など身体の病気
ここでは、上記4つについて解説します。
うつ病
うつ病は、脳内のセロトニンやドーパミンなど気分や意欲に関わる物質のバランスの乱れが関与していると考えられている病気です。
気分の落ち込みが2週間以上続き、何をしても楽しめない、興味が持てないといった状態が続くなどの症状が見られます。
感情のバランスが崩れることで涙もろさが強まり、集中力の低下や疲労感、食欲・睡眠の変化を伴うこともあります。
単なる気分の波と異なり、放置すると悪化して生活や仕事に支障を及ぼしかねません。
早めに医師や専門家へ相談し、適切な治療を受けることをおすすめします。
適応障害
適応障害は、生活の変化や人間関係などのストレスにうまく対応できず、涙もろさや気分の不安定さが強まる状態です。
一般的に、転職や引っ越し、家庭内の問題などで生じたストレスが引き金となると言われています。
ストレスの要因を排除する、環境が改善すると症状も軽くなる傾向がありますが、長引く場合は、専門家への相談を検討しましょう。
▶適応障害になりやすい人の特徴│性格や環境、顔つきなどを解説!予防法&治療法も
パニック障害や不安障害
パニック障害では、突然の動悸や息苦しさを伴う発作や強い不安に襲われ、その最中や直後の不安感から涙が出ることがあります。
また不安障害は、過度な心配や恐怖が続く状態です。
人前での発表や会議など緊張する場面で不安が高まりやすく、涙を流すことで「精神的に弱い」などの印象を持たれてしまうことがあります。
いずれも放置すると、生活に影響を及ぼしますが、治療によって改善が期待できます。
▶パニック障害とは?主な症状や原因、診断方法・治療法などを紹介
▶不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説
甲状腺疾患など身体の病気
身体の不調によっても、涙もろさが表れることがあります。
中でも甲状腺ホルモンの異常は、代謝や自律神経に影響し、気分の落ち込みや疲労感とともに涙が出やすくなる点が特徴です。
甲状腺機能低下症は女性に多い病気で、甲状腺ホルモンの分泌が減ることにより、抑うつ状態や意欲の低下といった精神症状が現れます。
また、バセドウ病に伴う甲状腺眼症では、眼の炎症や涙腺の異常が生じ、涙の分泌が乱れるケースもあります。
こうした症状が続く場合は、内分泌科など専門医に相談しましょう。
訳もなく涙が出るときの対処法

訳もなく涙が出てしまうときは、自分に合った方法で心を整えることが大切です。
ここでは、日常で実践しやすい4つの対処法を紹介します。
生活習慣を整える(睡眠・食事・運動)
心と体の安定には、規則正しい生活リズムが欠かせません。
特に睡眠不足は、心のバランスを大きく崩し、涙もろさや情緒不安定につながります。
就寝・起床時間を一定にすることで、体内時計が整い、気分の波が落ち着きやすくなります。
またタンパク質・鉄分・ビタミン不足は、セロトニンやドーパミンなどの働きを乱し、涙もろさを招くため、普段の食事で意識して摂るようにしましょう。
加えて、軽い運動を習慣にすることでストレスが和らぎ、セロトニンの分泌が促され、気持ちの安定にも役立ちます。
生活習慣を整えることは、涙が止まらない状況を改善するための第一歩となります。
涙が出る気持ちを否定せず受け入れる
涙は心のSOSであり、自然な感情表現です。
「泣いてはいけない」と自分を責めると、さらに心の負担が大きくなってしまいます。
涙を流すことはストレスを減らす効果があり、心を落ち着ける役割を果たすため、無理に我慢せず「今は泣きたいときなんだ」と自分自身を受け入れてあげましょう。
特に感情を抑え込むことが多い人ほど、涙は大切なガス抜きになります。
涙を受け止めることで、自分の心の声に気づきやすくなり、問題の本質を理解するきっかけにもつながります。
ノートに気持ちを書き出す
自分の気持ちをノートに書き出すことは、感情を整理する有効なセルフケア方法です。
頭の中で繰り返し考えていると不安が増幅しますが、書き出して言葉にすると、客観的に見直せるようになります。
手段として、日々の出来事や感情を自由に記録する「ジャーナリング」や、感情の強さを表す「感情ノート」などがおすすめです。
また、書き出すことで自分の気持ちを客観視でき「今どんなサポートを受けるべきなのか?」や「休むべきなのか?」などの判断をしやすくなります。
気持ちを文字にするだけでストレスが軽減され、涙に振り回されにくくなる効果が期待できます。
信頼できる人に相談する
涙が止まらないときは、想いを一人で抱え込まないようにしましょう。
信頼できる友人や家族に気持ちを打ち明けるだけでも、心が軽くなることがあります。
これは「話す」行為自体が、感情の整理につながるためです。
もし身近に相談できる人がいない場合は、オンライン診療やオンラインカウンセリングなどで、専門家に話すことも解決策の一つです。
専門家には守秘義務があるため、安心して自分のつらさを言葉にできる上に、共感や理解が得られ、孤独感が和らぎます。
誰かに話すことは、涙の背景にある心の問題を解きほぐす第一歩となります。
涙が止まらないときに受診を考えるべきサイン

訳もなく涙が出る状態が続く時の理由は、人それぞれです。
セルフチェックを行い、症状の持続や生活への影響が見られる場合は早めに受診を検討しましょう。
まずはセルフチェック:涙の頻度やタイミングを振り返る
涙が出る頻度やタイミングを振り返ることは、心の状態を把握する手がかりになります。
例えば「毎晩のように涙が出る」「人前で突然泣いてしまう」など、日常に支障がある場合は注意が必要です。
悲しい出来事がなくても涙が出るときは、心の疲れや精神的な不調のサインかもしれません。
セルフチェックを通じて、自分の感情の変化を細かく確認しましょう。
こうした振り返りをしておくと、自分の感情の変化に気づきやすくなるだけでなく、医師やカウンセラーに相談するときの大切な情報にもなります。
急に泣いてしまう状態が2週間以上続いている
気持ちの落ち込みや涙もろさが一時的であれば、休養やセルフケアで改善することもあります。
しかし、理由もなく涙が出る状態が2週間以上続く場合は要注意です。
うつ病や適応障害などの精神疾患の初期症状だった場合、放置すると悪化するリスクがあります。
「そのうち良くなるだろう」と思って先延ばしにはせず、専門機関に相談することも選択肢の一つです。
日常生活や仕事に支障をきたしている
涙が出ることが原因で仕事や家事に集中できない、趣味を楽しめなくなったといった状況は、心の不調が生活に影響しているかもしれません。
気分の落ち込みや涙もろい状態が続くと、自信を失い、人間関係や社会生活にも悪影響が出始めます。
我慢して日常を過ごしていても、症状が悪化する可能性があります。
生活の中で「今までできていたことができない」「やる気が出ない」と感じる場合は、心のエネルギーが消耗している証拠と考えましょう。
不安・動悸など他の症状を伴っている
涙が止まらないだけでなく、不安感や動悸、過呼吸、睡眠障害などを伴う場合は、心身の状態が深刻化している可能性があります。
こうした症状は、パニック障害や不安障害などとも関連しており、自己判断で放置すると生活に大きな影響を及ぼします。
特に、身体的な不調(めまい・吐き気・倦怠感など)が重なっている場合は早めの受診が必要です。
心と体は密接に関係しているため、複数の症状が同時に出ているときは「心身の危険信号かも…」と考えて適切な対処を心がけましょう。
訳もなく涙が出るときは一人で抱え込まず相談を
訳もなく涙が出る状態は、心のSOSであることが多く、軽視できません。
生活習慣の乱れや一時的なストレスで落ち着くこともありますが、症状が続く場合は、うつ病や不安障害、甲状腺疾患などの病気が背景にある可能性もあります。
涙が止まらず日常生活に支障が出る、不安や動悸を伴うといったサインがあるときは、ためらわず専門家に相談しましょう。
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