うつ病で後遺症が起こる仕組みとは?症状の特徴と日常でできる対処法

更新日 2025年06月17日

うつ病
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うつ病の治療が一段落したあとも、思考力や記憶力の低下、疲れやすさといった症状に悩まされる方は少なくありません。

これらの症状は、脳の回復過程で起こる自然な現象である可能性が高く、多くの場合は時間と共に改善していくものです。

しかし、「治ったはずなのになぜこんなに疲れるのだろう」「言葉が出てこなくて仕事に支障がある」といった不安を抱える方が多いのも事実です。

この記事では、うつ病の後遺症として現れやすい症状の特徴や発生メカニズム、日常生活でできる対処法について詳しく解説します。

治療後の体調に不安を感じている方、職場復帰を控えて心配されている方、家族の症状について理解を深めたい方は、ぜひ参考になさってください。

うつ病の後遺症とは?

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うつ病の治療後に感じる思考力や記憶力の低下、疲れやすさなどの症状について、まずは基本的な仕組みを理解しましょう。

後遺症が起こる仕組み

うつ病の後遺症とは、治療によって症状が改善したあとも残る、認知機能の低下や疲労感などの症状です。

うつ病は脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランス異常が関与するとされる精神疾患です。

治療により症状は改善しますが、脳の回復にかかる期間は個人差があります。

急性期の症状が落ち着いたあとも、認知機能や体力の回復が段階的に進むため、一時的に不調を感じる場合があります。

回復過程の特徴

この現象は、骨折後のリハビリテーションに例えると分かりやすいかもしれません。

例えば、骨がつながっても筋力や関節の動きが元通りになるまでには時間がかかります。

同様に、うつ病でも症状の改善と脳の機能回復にはタイムラグが生じるケースがあります。

回復期には気分や体調に波があることも珍しくなく、調子のよい日と悪い日が交互に訪れる場合がありますが、このような変動は回復過程の自然な現象です。

うつ病について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

▶︎うつ病はどんな病気?特徴や重さごとの症状、なりやすい人の特性を紹介

▶ストレスが引き起こす症状・病気┃限界に達したときに出る異変や受診の目安

起こりやすい後遺症の症状と特徴

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うつ病の後遺症として現れる症状は多岐にわたりますが、代表的なものを理解すると適切な対応が可能になるでしょう。

認知機能への影響

思考や記憶に関わる脳の機能に、一時的な変化が生じることがあります。

思考力の低下

複雑な判断や論理的な思考が以前のようにスムーズに進まない状態です。

会議での発言がまとまらない、複数の作業を同時に進めるのが困難になるといった症状が現れる場合があります。

これは脳の情報処理能力が回復途上にあることを示しています。

記憶力の問題

短期記憶や作業記憶に影響が出る場合があります。

約束を忘れやすくなったり、読んだ本の内容がすぐに頭から抜けてしまったりする症状です。

とりわけ新しい情報を覚える、複数の情報を同時に保持する、ということが難しくなる傾向があります。

言葉が出てこない

適切な単語や表現が思い浮かばず、会話のなかでもどかしさを感じる状態です。

うつ病の後遺症では、言いたいことは分かっているのにうまく言葉にできない経験をされるケースが多くあります。

身体的な症状

体力やエネルギーレベルに関連した症状が現れるときもあります。

疲れやすい

以前と同じ活動量でも疲労感を強く感じたり、回復に時間がかかったりする症状です。

午前中は調子がよくても、午後になると急激に疲れを感じることもあります。

脳の疲れ

頭がぼんやりとして集中力が続かない状態を指します。

読書や映画鑑賞といった以前は楽しめていた活動でも、途中で疲れてしまう場合があります。

エネルギーの不足感

やる気や意欲はあるものの、実際の行動が続かない状態です。

家事や仕事を始めても途中で休憩が必要になったり、完了まで継続できなかったりします。

症状の現れ方

これらの症状は一定ではなく、日によって現れ方に強弱があるのが特徴です。

ストレスがかかる状況や疲労が蓄積したときに、より顕著に現れる傾向があります。

また、複数の症状が同時に現れるケースも珍しくありません。

重要なのは、これらの症状が回復過程の一部である可能性が高く、適切な対処により改善が期待できることです。

後遺症が起こる理由とメカニズム

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うつ病の後遺症が起こる背景には、脳の回復過程における自然な現象があります。

この仕組みを理解することで、症状への不安を軽減できます。

脳内環境の変化と回復

うつ病では、セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスが崩れると知られています。

治療により症状は改善しますが、これらの物質が正常な状態に戻るまでにはある程度の時間を要する場合があります。

また、長期間のストレス状態は脳の神経回路にも影響を与えかねません。

回復期ではこれらの神経回路が徐々に修復されていく過程で、一時的に機能低下を感じることがあると考えられています。

エネルギー回復のプロセス

脳は体重の約2%ですが、全身のエネルギーの約20%を消費するとされます。

うつ病により消耗した脳のエネルギーシステムが回復するには、段階的なプロセスが必要になります。

これは、スマートフォンのバッテリーが完全に放電したあと、充電によって徐々に機能が回復していく過程に似ています。

急速充電でも時間がかかるように、脳の回復にも相応の時間が必要ということです。

ストレス反応システムの調整

長期間のうつ状態では、ストレスに対する脳の反応システムが過敏になっている場合があります。

治療後もこのシステムが正常な状態に戻るまでには時間がかかり、その間は疲れやすさや集中力の低下といった症状が現れることがあります。

焦らずに脳の自然な回復ペースを受け入れるのが重要です。

うつ病の方の脳内状態について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

▶︎うつ病は脳がおかしい?脳内物質の変化と回復へのアプローチ

日常生活での対処法と改善のコツ

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後遺症の症状に対して、日常生活のなかでできる対処法を実践することで、回復を促進し症状の軽減が期待できます。

認知機能回復のための工夫

脳に過度な負担をかけずに、段階的に機能回復をはかるのが大切です。

記憶力や思考力の低下に対しては、外部記憶装置の活用が有効です。

例えば、スマートフォンのリマインダー機能やメモアプリを積極的に利用し、重要な情報を記録する習慣をつけましょう。

また、複雑なタスクは小さなステップに分割して取り組めば、達成感を得ながら進められます。

集中時間についても、従来の半分程度から始めて徐々に延ばしていく方法がおすすめです。

言葉が出てこないときは、無理に思い出そうとせず、類義語や別の表現を使って伝える柔軟性を持つのが重要です。

疲労の管理とエネルギー配分

限られたエネルギーを効率的に使用することで、日常生活の質を維持しやすくなります。

例えば、一日のなかでエネルギーレベルが高い時間帯(多くの場合は午前中)に重要な作業を集中させ、午後は軽めの活動に切り替える時間配分が効果的です。

また、作業の合間には15〜20分程度の短い休憩を定期的に取り入れ、脳の疲労蓄積を防ぎましょう。

睡眠の質向上も重要な要素で、就寝前のスマートフォン使用を控えたり、規則正しい睡眠リズムを心がけたりすると翌日の体調安定につながります。

ストレス軽減と心身のケア

回復期におけるストレス管理は、症状の改善に大きく影響します。

軽いウォーキングやストレッチなど無理のない範囲での運動は、脳の血流改善と気分の安定に役立つ習慣です。

深呼吸や瞑想といったリラクゼーション技法も、緊張の緩和に効果的とされています。

社会復帰を急ぐ気持ちがあるかもしれませんが、段階的なアプローチを取るのが重要です。

まずは短時間の外出から始め、徐々に活動範囲を広げていく方法がおすすめです。

また、信頼できる家族や友人との適度な交流は、孤立感の軽減と回復への励みになるでしょう。

生活リズムを整える

規則正しい生活パターンは、脳の回復を支える基盤となります。

起床時間と就寝時間を一定に保ち食事の時間を規則的にすると、体内時計の安定化をはかれます。

これらの対処法は個人差があるため、すべてを実行するよりも自分に合った方法を見つけることが大切です。

セルフケアについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

▶︎うつ病は病院に行かないで治せる?セルフケア方法と受診のタイミング

専門的なサポートを受けるタイミング

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後遺症の症状は多くの場合時間と共に改善しますが、適切なタイミングで専門家のサポートを受けると、より安心して回復への歩みを進められます。

相談を検討したほうがよい症状の目安

症状が3ヶ月以上続いているときや、日常生活に大きな支障をきたしている状況では、専門家への相談を検討することが大切です。

  • 思考力や記憶力の低下により仕事でのミスが増えている
  • 疲れやすさが改善せず家事や育児に影響が出ている
  • 言葉が出てこないために人とのコミュニケーションに不安を感じている

こういった症状に悩まされているケースでは、早めの対応が有効です。

また、症状への不安が強くなって外出を避けるようになったり、人との関わりを控えるようになったりした際も相談のタイミングといえます。

職場復帰における支援の重要性

職場復帰を控えている方や、復帰後に困難を感じている方にとって、専門的なサポートは心強い味方となります。

集中力の低下により業務効率が上がらない、発言に自信が持てない、同僚との関係性に不安があるといった悩みは、一人で抱え込まず専門家と共有することで解決策が見つかる場合があります。

職場での配慮事項や段階的な業務復帰の計画についても、医療従事者からの助言により適切な調整が可能になるでしょう。

利用しやすいサポート体制

現在では、対面での相談が難しい方でも利用しやすいオンラインカウンセリングサービスが充実しています。

自宅からリラックスした状態で相談でき、移動の負担もないため、疲れやすさを感じている方にとって便利な選択肢です。

定期的なフォローアップにより、回復の経過を専門家と共に確認しながら、必要に応じて対処法を調整していきます。

また、家族のサポート方法についてもアドバイスを受けられるため、周囲の理解促進にもつながります。

うつ病の新しい治療法:TMS治療

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うつ病治療の選択肢として、近年注目されているのが『TMS治療(反復経頭蓋磁気刺激法)』です。

TMS治療(反復経頭蓋磁気刺激法)は、磁気刺激により脳の神経活動を調整し、うつ症状の改善を目指す治療法です。

従来の薬物療法とは異なるアプローチで、侵襲性がなく副作用が少ないという特徴があります。

治療は1回5〜15分程度の治療を週2〜3回、効果が現れるまでに合計15回程度の照射が必要とされています。

薬物療法で十分な効果が得られないときや、副作用により薬物治療の継続が困難なときに新たな選択肢として検討される治療法です。

ただし、てんかんの既往がある方などは実施できない場合があるため、医師との相談が必要です。

TMS治療について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

▶︎TMS治療はうつ病に有効!効果が期待できる症状の特徴やメカニズムについて解説

▶TMS治療は何に効く?効果や適応疾患&メリット・デメリットを紹介

うつ病の後遺症は焦らず改善を目指しましょう

うつ病の後遺症は、脳の回復過程で起こる自然な現象であり、思考力や記憶力の低下、疲れやすさといった症状は時間と共に改善していくことが期待できます。

回復のペースには個人差があるため、焦らずに自分のペースを受け入れながら段階的な改善を目指しましょう。

また、重要なのは一人で悩みを抱え込まないことです。

症状が長期間続く場合や日常生活に支障をきたしている場合は、早めの相談が回復への近道となるでしょう。

オンラインカウンセリングの『かもみーる』では、うつ病の後遺症に関する不安や悩みについて、経験豊富な医師や有資格心理士が、オンラインでサポートを提供しています。

自宅からリラックスした状態で相談でき、お一人おひとりの状況に応じたアドバイスを受けられます。

また、『かもみーる心のクリニック(東京院)(仙台院)』では、対面診療やTMS治療をお受けいただくことも可能です。

うつ病の後遺症への不安を感じている方は、お気軽に『かもみーる』へご相談ください。

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