発達障害で併発しやすい病気や症状とは?二次障害の治療方法についても解説
更新日 2025年06月02日
発達障害
発達障害は生まれつきの脳の特性によって、行動やコミュニケーション、学習などに困難を抱えやすい状態を指します。
代表的な種類には、『ADHD(注意欠如・多動症)』『ASD(自閉スペクトラム症)』『LD・SLD(学習障害・限局性学習障害)』などがあり、人によって現れ方はさまざまです。
これらの障害は単独で現れるとは限らず、複数の特性が重なる「併発」や、ストレスや周囲との不和から生じる「二次障害」を伴うこともあります。
この記事では、発達障害で併発しやすい病気や症状について解説します。
二次障害の治療方法についてもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
発達障害の種類

発達障害は生まれつき脳の働きに偏りがあることで、社会生活や日常生活に困難を抱えやすい状態で、大きく分けて以下の3つの種類があります。
- ADHD(注意欠如・多動症)
- ASD(自閉スペクトラム症)
- LD(学習障害)・SLD(限局性学習障害)
それぞれに特性があり、支援や対応方法も異なりますが、複数の障害が重なっている場合も少なくありません。
ここでは上記3つの発達障害の種類について、それぞれ解説します。
ADHD(注意欠如・多動症)
ADHDは、注意力の欠如や衝動性、多動性といった特性が目立つ発達障害です。
子どものころに気づかれることが多いものの、大人になってから診断されるケースもあります。
主な特徴は以下の3つです。
- 不注意:物事に集中できず、忘れ物やうっかりミスが多い
- 多動性:落ち着きがなく、じっとしていられない
- 衝動性:思いついたことをすぐに行動に移してしまう
これらの症状は人によって強さが異なり、全てが揃っているとは限りません。
学校や職場での人間関係、学業や仕事のパフォーマンスに影響することが多く、本人も周囲もストレスを抱えがちです。
ASD(自閉スペクトラム症)
ASD(自閉スペクトラム症)は、対人関係の困難さ、こだわりの強さ、感覚の過敏・鈍麻などが特徴の発達障害です。
以前は『自閉症』『アスペルガー症候群』などバラバラの分類でしたが、現在はこれらをまとめてASDに分類されます。
特徴は以下のように多岐にわたります。
- 対人コミュニケーションが苦手で、空気を読んだり、冗談を理解するのが難しい
- 予定外の変化に強いストレスを感じやすく、日課やルールにこだわる傾向がある
- 感覚過敏(音・光・においなど)や、逆に感覚鈍麻が見られることもある
知的障害を伴わない場合も多く、優れた記憶力や論理的思考力を持つ人もいます。
しかし社会的な場面での振る舞いが「変わっている」と受け取られやすく、誤解を受けやすいことがあります。
本人の得意分野を伸ばすことで、社会の中で活躍することも可能です。
LD(学習障害)・SLD(限局性学習障害)
LD(学習障害)は、知的発達に遅れはないにもかかわらず、読み・書き・計算といった特定の学習分野に著しい困難を示す発達障害です。
SLD(限局性学習障害)は、学習障害の中でも特に困難のある領域が明確なものを指します。
LD・SLDには以下のようなタイプがあります。
- 読字障害:文字を正確に読み取るのが難しい
- 書字障害:文字を正しく書いたり、文としてまとめるのが難しい
- 算数障害:数の概念や計算に困難がある
これらの障害は、単なる「勉強が苦手」と誤解されることが多く、本人が強い自己否定感を持つ原因になることもあります。
家庭や学校が一体となって支援することで、学びへの自信を取り戻すことが可能です。
発達障害は2つ以上の特性を併発することがある

発達障害はそれぞれ単独で現れるとは限らず、複数の特性が同時に現れるケースも少なくありません。
例えばADHDとASD、ADHDとLD・SLDなどのように、2つ以上の特性が組み合わさることがあります。
このような場合、症状がより複雑になり、本人の困りごとも増える傾向があります。
また周囲からの誤解も受けやすく、適切な支援が遅れることもあるため、なるべく早めに気づいて専門的な診断や支援を受けることが大切です。
併発している場合でも、それぞれの特性に合った支援を組み合わせることで、生活のしづらさを軽減し、本人の強みを生かすことが可能です。
ADHDとASDを併発した場合
ADHDとASDを併発するケースは比較的多く、知的障害を伴わないASDの約30%にADHDが併存しているとされています。
ADHDの『不注意』『衝動性』『多動性』と、ASDの『対人関係の苦手さ』や『こだわりの強さ』が同時に見られると、学校や職場での対人関係や学習・業務への適応がより難しくなることがあります。
しかし、それぞれの特性を理解した上で、環境を調整し、認知行動療法や薬物療法を組み合わせることで安定した生活につなげることが可能です。
本人の得意分野を尊重し、ストレスを減らすサポートをしましょう。
ADHDとLD・SLDを併発した場合
ADHDとLD・SLDを併発した場合、学習面での困難が特に目立ちます。
ADHDによる集中力の低下や注意の持続が難しいという特性に加え、LD・SLDの『読み書き』『計算』など特定の分野の困難が重なるため、学習全体に対して強い苦手意識や自己否定感を持ってしまうこともあります。
この組み合わせでは、通常の学習支援だけでは効果が出にくいことがあるため、個別に配慮したり支援計画を立てたりする必要があるでしょう。
具体的な支援方法としては、以下が挙げられます。
- 刺激になるものを取り除いて静かで集中しやすい環境を作る
- 文節ごとに区切って読む練習を提案する
- マス目の大きなノートを使う
- 一対一で質疑応答の時間を作る
上記に加え、本人の特性を理解し、学習以外の得意な分野に目を向けて自信を持たせることも大切です。
発達障害と併発しやすい病気・症状

発達障害と併発しやすい病気・症状として、以下が挙げられます。
- うつ病
- 適応障害
- 不安障害
- 双極性障害
- 強迫性障害
- パーソナリティ障害
- 依存症
- 睡眠・覚醒障害
- 生活習慣病
ここでは上記9つの病気・症状についてそれぞれ解説します。
うつ病
発達障害の人は、周囲との関係がうまくいかず孤立しやすいため、うつ病を併発することがあります。
特にASDの方は感情を表に出すのが苦手で、ストレスをため込みやすい傾向があるため注意が必要です。
またADHDでは失敗体験が重なり自己否定感が強まることで、気分の落ち込みが慢性化することがあります。
うつ病になると、意欲の低下、食欲不振、不眠、集中力の低下などが現れ、日常生活に大きな影響を及ぼします。
発達障害による困難に加えてうつ症状を発症すると、さらに生活が苦しくなってしまうため早めに専門機関を受診することが大切です。
適応障害
適応障害とは、特定の環境や出来事に強いストレスを感じ、それにうまく対処できないことで心身に不調が現れる状態です。
発達障害を持つ人は、環境の変化や人間関係への適応が苦手なため、新しい職場や学校でのストレスから適応障害を引き起こしやすくなります。
症状としては気分の落ち込みや不安、不眠などが見られます。
ADHDの場合はミスや注意散漫が原因でトラブルが続き、周囲からの評価が下がることで発症することもあります。
症状が長引くと、うつ病や不安障害へと移行するケースもあるため、無理をせず環境を調整することが重要です。
休息やカウンセリング、必要に応じて薬物療法も検討する必要があるでしょう。
▶適応障害とは?再発率や兆候・繰り返さないための対策・復職時の注意点を解説
不安障害
発達障害のある人は、予測できない出来事やコミュニケーションへの苦手意識から、強い不安を抱えることが少なくありません。
その結果、不安障害を併発することがあります。
代表的な症状には過剰な心配や不安、パニック発作(動悸、息切れ、発汗、震え、呼吸困難など)が挙げられます。
不安障害が強いと日常生活に支障をきたすため、医師の診断を受け、薬物療法や認知行動療法などで不安の軽減を図ることが大切です。
▶不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説
双極性障害
双極性障害はうつ状態と躁状態を繰り返す気分障害の一種で、発達障害と併発することがあります。
ADHDと症状が似ている面もあるため見分けがつきにくく、誤診されやすい点に注意が必要です。
例えば躁状態では気分が高揚し、多弁・多動・衝動的な行動が目立ちますが、これはADHDの特性とも重なります。
一方、うつ状態になると無気力や意欲低下が強まり、日常生活が困難になります。
双極性障害を併発すると、気分の波が大きくなり、自分でコントロールしづらくなるため、専門医による正確な診断と薬物療法が重要です。
▶うつ病と双極性障害(躁うつ病)の違いは?症状・原因・治療法とセルフチェックリスト
強迫性障害
強迫性障害は、自分でも無意味だと分かっていながら、ある考えや行動を繰り返さずにはいられなくなる障害です。
発達障害の中でも、特にASDを持つ人に強迫的な傾向が見られることがあり、併発しやすいとされています。
例えば手洗いを何度も繰り返す、物の配置を絶対に崩さない、同じ確認行動を何度もするなどの行動が特徴です。
ASDの『こだわり』や 『予測不能な変化への苦手意識』が、強迫的な行動につながることがあります。
本人にとっては安心感を得る手段であっても、日常生活に支障をきたすようであれば、医師による診断と認知行動療法や薬物療法などの治療を検討しましょう。
▶強迫性障害は何科を受診?精神科・心療内科の特徴と選び方を解説
パーソナリティ障害
パーソナリティ障害は、感情や対人関係、行動のパターンに長期的な偏りがあり、そのために社会生活や人間関係に困難を抱える障害です。
発達障害とパーソナリティ障害は、いくつかの点で症状が重なることがあり、併発しているケースも見られます。
発達障害による人間関係のトラブルや孤立が、自己評価の低下や情緒不安定につながり、それがパーソナリティ障害の発症を引き起こす場合もあります。
依存症
発達障害を持つ人は、ストレス対処がうまくいかず、依存症を併発しやすい傾向があります。
依存の対象はアルコール、薬物、ギャンブル、ゲーム、インターネットなどさまざまです。
特にADHDでは衝動性や刺激を求める傾向が強いため、快感をもたらす行動に依存しやすいとされています。
また自己肯定感の低さや対人関係のストレスから逃れる手段として、依存行動に走ってしまうこともあります。
依存症は一度陥ると抜け出すのが難しく、社会生活や健康に深刻な影響を与えるため注意が必要です。
睡眠・覚醒障害
発達障害と睡眠・覚醒障害の関係も深く、多くの人が睡眠に関する悩みを抱えています。
例えば寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝起きられない、昼夜逆転してしまうといった症状が挙げられます。
慢性的な睡眠不足は、集中力や気分の不安定さを悪化させ、発達障害の症状をさらに強めてしまうことがあるため注意が必要です。
生活習慣の見直しや睡眠環境の改善、必要に応じて睡眠導入剤の使用などが効果的です。
また、近年では不眠症を改善する方法として『TMS治療(電気刺激を与えることで脳の特定の部位を活性化させる治療法)』も注目されています。
▶TMS治療は睡眠障害にも効果がある?原因別のアプローチ法や効果を紹介
生活習慣病
発達障害を持つ人は、生活リズムの乱れや偏った食事、運動不足などの影響で、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を発症するリスクが高くなることがあります。
特にADHDでは衝動的な食行動や過食が見られることがあり、肥満やメタボリックシンドロームにつながるケースもあります。
またストレスによる過食やアルコールの過剰摂取も、発達障害で生活習慣病を併発しやすくなる要因です。
生活習慣病は長期的に健康に大きな影響を及ぼすため、発達障害の特性に配慮した生活習慣のサポートが必要です。
発達障害の二次障害の治療方法

発達障害の二次障害の治療方法は主に以下の2つです。
- 薬物療法
- 認知行動療法
ここでは上記2つの治療方法についてそれぞれ解説します。
薬物療法
薬物療法は、発達障害に伴う二次障害の症状を軽減するために行われる治療方法です。
例えばうつ病であれば抗うつ薬、不安障害には抗不安薬などが使用されることがあります。
薬はあくまで症状の緩和を目的としており、根本的な特性を変えるものではありません。
しかし過度なストレスや不調により生活が立ち行かなくなっている場合には、大きな助けとなります。
注意すべき点としては、副作用や効果の個人差があることです。
そのため、医師と相談しながら慎重に薬の種類や量を調整していく必要があります。
認知行動療法
認知行動療法は、発達障害に伴って生じるうつ病や不安障害などの二次障害に対して、広く用いられている心理療法の一つです。
この治療方法では物事の捉え方や行動パターンに注目し、ストレスを感じやすい思考のクセや行動をより現実的で前向きなものに変えていくことを目指します。
例えば「自分は何をやってもダメだ」といった思考を、「失敗しても挑戦したことは良かった」と再解釈する訓練を通じて、自己肯定感や適応力の向上を図ります。
本人の理解力や特性に合わせて、段階的に進めることが大切です。
発達障害で併発する病気や特性には適切な支援を行うことが重要
発達障害は一人ひとり異なる特性を持ち、複数の障害が重なったり、二次的な症状が現れたりすることも少なくありません。
ADHDとASD、LD・SLDの併発、さらにはうつ病や不安障害、強迫性障害などの精神的な不調を伴う場合もあります。
こうした複雑な状態に適切に対処するためには、発達障害とその周辺症状を切り分けて理解し、薬物療法や認知行動療法などを活用しながら支援を行うことが大切です。
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