適応障害について|タイプごとの特徴・発症の原因・予兆・治療法などを詳しく解説
更新日 2025年03月11日
適応障害
適応障害とは、特定の要因からくるストレスによって精神・身体にさまざまな症状が発生する疾患です。
適応障害は人によって症状・特徴・ストレスの原因が異なるため、それぞれに適した対処が求められます。
悪化すると他の精神疾患を合併するリスクがあるため、予兆や体調の変化に早めに気が付くことが大切です。
この記事では、適応障害の種類や発症しやすい環境・性格の特徴、治療法などを紹介します。
適応障害の前兆にはどんな症状があるのか知りたい人や、突然家族や知人の表情や性格が変わったような気がする人は参考にしてください。
適応障害の6つのタイプ

世界保健機構の診断ガイドライン(ICD-10)では、適応障害は『ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態』と定義されています。
そのなかでも、人によって症状や特徴がさまざまなため、以下のように大きく6つのタイプに分類されています。
1. 抑うつ気分を伴うタイプ
2. 不安を伴うタイプ
3. 不安と抑うつ気分の混合を伴うタイプ
4. 素行の障害を伴うタイプ
5. 情動と素行の障害の混合を伴うタイプ
6. 特定不能のタイプ
ここからは、各タイプについてそれぞれ詳しく解説します。
抑うつ気分を伴うタイプ
抑うつ気分を伴うタイプの適応障害は、憂うつ感・やる気の低下などのうつ症状を伴い、涙もろさや気分の落ち込みがみられるのが特徴です。
集中力・判断力の低下などのほか、思考が遅い・追いつかないなどの症状が現れます。
不安を伴うタイプ
不安を伴うタイプの適応障害は、さまざまな物事に対して過度な不安を伴うのが特徴です。
起こる前の災害や病気などに対する漠然とした不安を感じ、動悸や焦燥感などを伴いますが、不安障害まではいかないレベルのものが該当します。
不安と抑うつ気分の混合を伴うタイプ
不安と抑うつ気分の混合を伴うタイプの適応障害は、気分の落ち込みと不安感を両方伴う状態です。
抑うつ症状と不安・心配などの症状が同時に現れます。
素行の障害を伴うタイプ
素行の障害を伴うタイプの適応障害では、自分の行動への責任感が低下し、反社会的な行動をとるケースがあります。
飲酒運転や禁煙場所での喫煙、万引きなどがみられる場合があります。
情動と素行の障害の混合を伴うタイプ
情動と素行の障害の混合を伴うタイプの適応障害では、素行障害に加えて不安や気分の落ち込みなどのうつ症状を伴います。
特に子どもに多いとされている適応障害のタイプです。
特定不能のタイプ
特定不能の適応障害は、紹介した5つの特徴に当てはまらないタイプの適応障害で、引きこもりが主症状であるケースが多く、身体症状を伴う場合もあります。
その他の適応障害がここに分類されますが、適応障害のタイプで最も多いのは不安と抑うつ気分の混合を伴うタイプだとされています。
適応障害の要因となる外部の環境

適応障害の原因であるストレスは、以下の要因から発生すると考えられています。
• キャパシティを超えた仕事量
• 人間関係のトラブル
• 職場内でのプレッシャー
• 生活環境の変化
• 家族との不仲
適応障害は、仕事内容や職場での立場によるプレッシャー、転職・転居による生活環境の変化、家族との不仲などによるストレスが原因で発症するとされています。
これらの外部要因によって精神的に負担を感じると、ストレスに対処しきれずに適応障害につながるリスクが高まります。
職場に原因がある場合は休職や転職などで症状が緩和される可能性がありますが、家庭環境に原因がある場合はそれが仕事に影響することで悪循環を生み出すケースがあるため、注意が必要です。
▶適応障害の原因となる主なストレス│母親や家族の影響は?症状や治し方も解説
適応障害の予兆(サイン)

以下の症状がみられる場合は、適応障害のサインである可能性があります。
気になる症状がみられる場合は、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。
身体の症状
適応障害の予兆で現れる身体症状には、以下のものがあります。
• 動悸
• 急に涙が出る
• 頭痛
• 吐き気・嘔吐
• 腹痛・下痢
• 手足の震え
• 冷や汗
適応障害では、動悸や頭痛、吐き気・腹痛・下痢などのさまざまな身体症状を伴うことがあります。
原因となるストレスを受けることで症状が現れ、ストレス因子が取り除かれると症状も消失するのが特徴です。
症状が常にあるわけではないため、慢性的な症状を伴ううつ病とはここが大きな違いですが、ストレスの原因から離れられないケースでは適応障害でも症状が慢性化する可能性があります。
精神的な症状
適応障害の予兆で現れる精神症状には、以下のものがあります。
• やる気が出ない
• 短気でよく怒るようになる
• 普段の表情に変化が現れる
• テンションが低い・暗いことが多い
適応障害では、やる気の喪失や表情・性格の変化、常に暗くなるなどの精神症状がみられます。
心に余裕がなくなることで感情の制御が難しくなり、周囲に当たるようになるケースもあります。
また、ストレスに心身が対応できないことでエネルギー消費量が増加し、何かをする意欲が失われたり、表情が暗くなったりするのが特徴です。
行動の変化
適応障害の予兆で現れる行動の変化には、以下のものがあります。
• 仕事や勉強へのやる気が低下する
• 些細なミスが目に見えて増える
• 人とのコミュニケーションを避けるようになる
• 理由もなくそわそわしていることが多い
• 過度のアルコール摂取や、暴飲・暴食がみられる
適応障害になると、仕事や勉強での些細なミスが増えたり、落ち着きのなさ・反社会的な行動がみられたりするケースがあります。
適応障害には真面目な人がなりやすい背景がありますが、そのような人が遅刻や欠席をするようになった場合は適応障害の前兆かもしれません。
また、不安な感情からそわそわと落ち着かない状態になったり、人との関わりを避ける・自分の意見を話さなくなるなどの症状がみられたりする場合もあります。
適応障害を合併・誘発しやすい精神疾患

適応障害は、以下の精神疾患を合併・誘発するケースがあるため注意が必要です。
うつ病
うつ病は、気分の落ち込みや体のだるさによって日常生活のさまざまなことに意欲を示さなくなる精神疾患です。
嬉しい・楽しいなどの前向きな感情を喪失したり、不安や絶望感を感じたりする点で適応障害と似ていますが、適応障害の場合はストレスの原因となる環境から距離を置くことで症状が緩和します。
しかしうつ病の場合は、状況を問わず症状が消えないのが特徴で、適応障害の症状が一時的なものから慢性的なものに変化した場合は注意が必要です。
双極性障害
双極性障害は、うつ病で感じられる無気力・無価値観の症状と、気分が高揚してハイテンションになる躁状態を繰り返す精神疾患です。
適応障害は、うつ病のほかに双極性障害に移行するケースがあり、ただの気分の浮き沈みとは異なり、周囲の目から見て違和感を感じるほどテンションの浮き沈みが激しい場合は双極性障害が疑われます。
双極性障害の場合、散財やギャンブルなどの行動に走るケースがありますが、このような自分の躁状態の時の記憶があるため、うつ状態の時により強い自己嫌悪や苦しい気持ちに陥る恐れがあります。
しかし、躁状態の場合の気分の良さがあるため本人に治療の意欲が湧かないことも多く、その場合は周囲が受診につなげてあげることが大切です。
▶うつ病と双極性障害(躁うつ病)の違いは?症状・原因・治療法とセルフチェックリスト
不安障害
不安障害は、些細な出来事に対して過剰な不安や恐怖を感じる精神疾患で、日常生活に支障をきたすケースがあります。
適応障害と不安障害が併発する場合は、不安・恐怖などの症状が持続し、その原因を排除しても症状が続くほか、動悸・ふらつき・睡眠障害などの症状も発生する予兆がみられます。
この2つが併発すると、症状が複雑になることで対処や治療が難しくなる可能性があり、さらにうつ病や統合失調症を合併するリスクが高まるため注意が必要です。
▶不安障害の種類別の症状・診断基準┃セルフチェックや治療法も解説
統合失調症
統合失調症とは、脳が上手く働かなくなることで判断力や認知機能の低下を引き起こす精神疾患で、妄想や幻聴などの症状が現れるのが特徴です。
統合失調症は適応障害を併発するケースがあり、それぞれ特徴は大きく異なりますが症状が似ている傾向があるため、自己判断せずに専門家による診断を受ける必要があります。
多くの診断基準がある統合失調症は診断までに時間がかかる可能性があり、一度うつ病や不安障害など他の精神疾患と診断された後に、診断名が統合失調症へと変わるケースもあります。
そのため、医療機関を受診する前に症状がいつ頃からどれくらい続いているかや、日常生活にどの程度支障をきたしているかを自分で把握したりメモに記しておいたりするとよいでしょう。
パニック障害
パニック障害は、日常生活のなかで唐突に激しい不安や恐怖を感じ、動悸や手足の震え、呼吸困難などのパニック発作を引き起こす精神疾患です。
適応障害とパニック障害における広場恐怖は、特定の環境や場所で症状が現れる点で似ているため、関連性が指摘されるケースがあります。
適応障害とパニック障害が併発すると、原因となる環境・場所を避ける行為が強くみられることで日常生活や心の健康に影響を及ぼすため、適切な治療と状況に合わせたサポートが必要になります。
▶パニック障害になりやすい人の特徴│性格・年代・環境や遺伝など徹底解説!セルフチェックも
適応障害になりやすい人の特徴・性格

適応障害になりやすい人には、以下の特徴・性格がみられるケースが多いとされています。
責任感が強く、完璧主義である
責任感が強い人や完璧主義の人は自分に厳しく、誰かに頼られると断れないことで自身を追い込んでしまう傾向があります。
また周囲からの期待が高いため、それに応えようと自分のキャパシティを超えた働きをしてしまうことがあり、疲れやストレスの蓄積につながります。
しかしこれらの性格は決して悪いものではなく、他人思いで芯が強い素敵な人柄であるため、認知行動療法によってストレスへの考え方や受け止め方を修正する治療が有効です。
自己肯定感が低く、自分に自信がない
自己肯定感が低く、自分に自信がない人は適応障害になりやすい傾向があります。
これらの特性がある人は、例えば職場や学校(転校・クラス替え)などで過ごす環境が変わることで、新しい環境や人間関係に馴染めるか、また失敗をしてしまうのではないかという不安を感じます。
さらに物事が成功しても、たまたまだ、自分のおかげではないと思考がマイナスになりがちです。
また人からの評価が気になり、自分のことを信用できないため、人に合わせすぎることで自分の意見を飲み込んでしまい心が疲弊していく特徴があります。
繊細で些細なことを受け流せない
繊細な人は、周囲の環境や人間関係の変化を過敏に感じ取る傾向があるため、それがストレスになるケースが多いです。
感受性が高く、物事を慎重に行うのが長所ですが、些細なことを重く考えすぎてしまう特徴があります。
また、社会生活における環境や人間関係が悪い方向に変化した際に、自分が原因かもしれない、と考えてしまう傾向があります。
日常のさまざまなことが気になり受け流せず、ストレスとして蓄積することで、適応障害につながってしまうのです。
適応障害になりやすい人の特徴・性格については、こちらの記事も合わせてご覧ください。
▶適応障害になりやすい人の特徴|性格や環境・顔つきなどを解説!予防法&治療法も
適応障害の治療法

適応障害の治療は、主に「休養・環境調整」「精神療法」が行われます。
休養・環境調整
適応障害と診断されたら、ストレスの原因から離れてゆっくり休むことや、ストレスの原因となる環境を改善することが大切です。
環境調整のためには、まずストレス因子を特定しましょう。
原因が判明したら、休職・休学などの判断によって原因となる環境から距離を置き、社会復帰のことは一旦考えずに十分に休養を取ります。
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精神療法
適応障害の精神療法には、主に認知行動療法と問題解決療法の2種類があります。
認知行動療法は、自分がどんな時にどんな感情になるのかを理解し、考え方や受け取り方を修正することでストレスへの対応力を養う治療法です。
問題解決療法は、起こっている問題や症状を明確にして、患者さんとカウンセラーが一緒に解決策を模索していく方法です。
精神療法はストレスに対応できるようになることが目的であるため、薬物療法のデメリットを避けられるほか、ストレスと症状の悪循環を回避できる利点があります。
適応障害かも?と感じた場合は早めの受診を
適応障害のタイプや発症のサイン、なりやすい人や環境の特徴などを紹介しました。
適応障害は早期に環境調整や精神療法を行うことで、薬を使わずに治る可能性があります。
放置・悪化してしまうとうつ病や他の精神疾患に移行するケースもあるため、気になる症状がある場合は早めに精神科・心療内科に相談しましょう。
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原因がわからない適応障害がある方や、適応障害の初期症状かも?と気になる症状がある場合はぜひ一度お気軽にご相談ください。
なお、適応障害についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事もご参考ください。