病気不安症とは?症状や原因、診断基準や治療法について詳しく紹介

投稿日 2025年12月13日

最終更新日 2026年10月20日

不安障害
病気不安症とは?症状や原因、診断基準や治療法について詳しく紹介

病気不安症とは、重い病気にかかっている、あるいは将来かかるのではないかという強い不安が続き、日常生活に支障が生じる精神疾患です。

例えば、身体のわずかな変化を重大な病気の兆候だと考えたり、検査で異常が見つからなくても病気への不安が消えなかったりする場合があります。

また、安心するために何度も病気について調べたり、医療機関を繰り返し受診したりする一方で、病気が見つかることを恐れて受診を避ける方もいます。

この記事では、病気不安症の症状や診断基準、ほかの精神疾患との違い、認知行動療法などの治療法について解説します。

病気不安症とは

病気不安症とは「病気かもしれない」という心配や不安が過度になり過ぎて、日常生活に影響が出る精神疾患です。

まずは病気不安症の特徴について紹介します。

「病気」を心配して不安になる精神疾患

病気不安症は、病気に「かかったのではないか」「かかるのではないか」と深刻に心配して、強い苦痛を感じたり過剰に不安になる精神疾患です。

些細な不調をすぐ病気だと思ってしまったり、大きな病気、がんなどにかかってしまったと思い込んだりする特徴があります。

適切な治療やサポートを受けることで改善が期待でき、寛解を目指すことが可能です。

周囲の人には気にしすぎと捉えられがちであり、なかなか理解されないために心配や不安感がさらに強まるという傾向があります。

身体症状がある場合とない場合がある

病気不安症は身体症状がある場合と全くない場合があります。

以下は、身体症状がある場合の一例です。

  • 倦怠感
  • 吐き気・嘔吐
  • 動悸・不整脈(脈が飛ぶ)
  • 胸痛・頭痛
  • 胃痛・胃部不快感
  • 発熱・ふるえ・発汗
  • 耳鳴り・めまい
  • 肩こり・筋肉の緊張

病気不安症では身体症状を伴うことがありますが、非常に軽微な場合が多く、中には身体症状が全く見られない人もいます。

病気不安症の症状

病気不安症は身体症状の他に、病気不安症特有の症状があります。

病気不安症の主な症状について紹介します。

身体症状に過度に反応する

病気不安症の症状として、身体の些細な変化や異常に対する過度な反応がみられます。

以下はその一例です。

  • 軽い痛みや頭痛・腹痛
  • 動悸や消化音
  • 皮膚の小さな変色・リンパの腫れ
  • 疲労感やだるさ

健康な人があまり気にすることのない、少し様子を見ることができるような症状でも「大きな病気のサインではないか」というような思考につながります。

「がんの初期症状では?」「心臓病の兆候では?」など、特定の病気に関連付けることで特に注意が向きやすくなり、不安が増大するという悪循環を引き起こすこともあります。

健康に関して過剰に行動する

病気不安症の人は、健康に対して行動が過剰になったり、反対に回避行動をとったりするなど、極端な行動や思考をすることがあります。

以下は、病気不安症の人の健康に対する過剰反応の一例です。

  • 「頭痛=脳腫瘍」など、小さな問題を極端に悪い結果に結びつける
  • 不安を煽るような情報に目がいくが、安心できる情報は無視する
  • 安心できる明確な答えを得られないと耐えられない
  • 健康でなければならないという過度な責任感がある

病気不安症の人には、SNSや本などで自分の身体症状や疑っている病気について過剰に調べる行動が多く見られます。

しかし中には、信頼できないものや重篤な病気に結びつく稀なケースなどを過多に伝える情報もあり、実際にはかえって不安が強くなるため逆効果になることも少なくありません。

誰にでも多少の病気や不調がありますが、小さな症状を大きな病気につなげて考えてしまうため、健康への責任感や健康のコントロールに対する義務感を過度に感じています。

医療機関に対する偏った受診行動

病気不安症の人は、病気であるかどうかを確認することに関して両極端に分かれる行動をとるケースがあります。

一方は、重篤な病気にかかっているかもしれないと思い込み、早めに発見して治療を開始するために医療機関を受診するケースです。

実際は異常なしと診断されるため一時的に安心しますが、再び別の症状が気になったり診察の見落としを疑ったりします。

そのため、複数の医療機関を受診したり、同じ医師への再診を繰り返したりする『ドクターショッピング』と呼ばれる行動をとることがあります。

もう一方は、逆に病気が怖くて病院に行けないケースです。

身体の不調を感じても、病気の診断や発見を恐れるため受診を避け「悪い結果を知るくらいなら知らない方がいい」として、必要な診察や検査を受けずに放置することになります。

受診行動は両極端ですが、病気に対する不安はどちらも解消されません。

日常生活に支障をきたしている

病気不安症は病気の罹患を過剰に心配するあまり、日常生活にも影響を及ぼすことがあります。

過ぎた受診回数によって職場や学業に集中できず、受診費用や健康食品への出費が嵩むことは、社会的にも経済的にも大きな負担です。

また、身体的な不調を常に訴えることは周囲の人を疲れさせ、また理解もされづらく、孤立したり交流を避けたりする原因となります。

しかも不安や不調を抱える本人が最も疲弊するため、精神疾患を併発する可能性があるなど、日常生活に支障をきたします。

病気不安症のセルフチェック

病気不安症では、健康や病気に対する不安が強くなり、日常生活にさまざまな影響が現れることがあります。

次のような特徴がないか、振り返ってみましょう。

  • 身体のわずかな変化でも、重大な病気ではないかと心配になる
  • 医師から異常がないと説明されても、不安がなかなか消えない
  • 病気の症状についてインターネットで何度も調べてしまう
  • 自分の身体を繰り返し確認してしまう
  • 安心するために家族や医師に何度も確認を求める
  • 病気が見つかることが怖く、必要な受診や検査を避けてしまう
  • 病気への不安によって仕事や日常生活に支障が生じている

これらは病気不安症に関連する特徴の例であり、医学的な診断を目的としたチェックリストではありません。

当てはまる項目の数だけで病気不安症と判断することはできず、実際の身体疾患やほかの精神疾患が関係している可能性もあります。

病気への不安が長く続き、日常生活に支障が生じている場合には、精神科や心療内科などの医療機関に相談しましょう。

病気不安症の原因

病気不安症は、10〜20代の若い世代から、身体的に不安な要素が増えてくる40代以降と、年代問わず発症することが考えられる病気です。

心理的要因が多いとされますが、単一の原因ではなく社会的要因なども含めさまざまな要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

病気不安症の原因について紹介します。

身体症状について過敏である

病気不安症の人は、健康な人が気にしないような些細な症状でも大きな病気の前触れかと考えるほど、自分の身体の変化や感覚に過敏です。

例えば、軽い頭痛や不快感、筋肉のピクつきや、動悸・消化音・皮膚の小さな変色や一般的なだるさなどを大病のサインと考え、不安に捉われます。

一度不安に思うと、疑わしい病気に関連する症状が起こっていないか注意が向きやすくなり、不安がさらに募って悪循環に陥るということが少なくありません。

ストレスや悩みを抱えている

病気不安症の原因として挙げられるのは、心理的・社会的な要因によるストレスや悩みです。

もともと持っている性格として、心配性だったり完璧主義だったりする場合は悩みを抱えやすいため、発症しやすいとされています。

特に就職・転勤、人間関係のトラブルなど、環境変化や継続的なストレスなどは心身のバランスを崩しやすいため、健康不安が高まりやすいです。

また、幼い頃に過度に病気を心配されていた場合、病気に対してネガティブな刷り込みになることによって病気不安症のリスクが高まるという指摘がされています。

他にも、上述したようなインターネットやメディアによる情報の氾濫なども、病気不安症の発症に影響を与えるとされているため、注意が必要です。

過去の病気やストレスに関する経験がある

過去に自分自身や家族が大きな病気を経験したことがある場合は「病気が怖い」というイメージを強く残すため、発症の重要なきっかけとなる場合があります。

「身体の不調=病気」として関連付けられており、再発や別の大きな病気を疑うためです。

また、身体的な不調はストレスや不安が強いときに自覚しやすいです。

そのため「ストレスや不安は病気につながる」「心の弱さが体調不良の原因」などネガティブな関連付けが形成されます。

このような思考パターンが、健康を過剰に心配する原因となる場合があります。

偏った現実の解釈

病気不安症の人が不安を抱え続けるのは、現実を偏った見方で解釈してしまう「認知の歪み」と呼ばれる思考パターンが原因です。

以下が、病気不安症の認知の歪みの例です。

  • 些細な症状を、大病に結びつける
  • 自分が病気であるという不安を裏付ける情報だけを注視し、それ以外は無視する
  • 根拠不十分なまま、早まった結論を出す
  • 症状やリスクを過剰に大きく捉え、信頼できる情報や検査結果を過小に評価する
  • 自分が不安を感じることを理由に、現実に罹患していると信じ込む
  • 健康でいるために、小さな体調不良もあってはならないと考える

認知の歪みは、些細な身体の異変も病気だという自動思考が働きやすく、不安を強め、先に紹介したような過度な反応や偏った受診行動を引き起こします。

病気不安症の診断

病気不安症は単なる心配性ではなく、疾患としての診断の基準があります。

病気不安症の診断について紹介します。

病気不安症の診断基準(DSM-5-TR)

病気不安症は、米国精神医学会が発行するDSM-5-TRにおいて「身体症状症および関連症群」に分類されています。

診断では、病気への不安の強さだけでなく、身体症状の程度や健康に関する行動、症状の持続期間などを総合的に評価します。

主な診断基準の概要は以下のとおりです。

項目

主な内容

A

重い病気にかかっている、またはかかることへのとらわれがある

B

身体症状がないか、あっても軽度である

C

健康に関する不安が強く、健康状態について容易に心配になる

D

身体の確認や繰り返しの受診など、健康に関する過剰な行動がある。または、病気への不安から受診などを避ける

E

病気へのとらわれが少なくとも6か月続いている。ただし、心配する病気の種類は変化することがある

F

身体症状症、パニック症、全般不安症、強迫症など、ほかの精神疾患ではより適切に説明できない

また、病気不安症では、医療機関を頻繁に受診する「援助希求型」と、医療機関への受診を避ける「援助回避型」に分けて評価することがあります。

ただし、これらの特徴に当てはまるだけで病気不安症と診断されるわけではありません。

診断では、実際の身体疾患の可能性も含めて慎重に評価する必要があります。

参考:American Psychiatric Association:DSM-5-TR

病気不安症以外の疾患の有無を確認する

病気不安症を診断する場合、現れている身体症状が病気不安症以外の病気によるものではないことを確認するために、身体的な検査を行うことがあります。

また、うつ病や不安障害など、他の精神疾患との鑑別も重要な確認事項です。

精神疾患は併発しやすく、特にうつ病の併存は多く見られ、治療も病気不安症のみに罹患しているケースより複雑なものになります。

併存がある場合は治療方針が変わるため、重篤な病気に罹患しているかどうかより先に、治療するべき疾患が他に隠れていないかを調べる必要があります。

病気不安症と身体症状症・強迫症などの違い

病気への強い不安は、病気不安症だけでなく、身体症状症や強迫症、全般不安症などでも見られることがあります。

疾患

主な特徴

病気不安症

身体症状がない、または軽度である一方、重い病気への不安やとらわれが強い

身体症状症

苦痛を伴う身体症状があり、その症状に対する過度な思考・感情・行動が見られる

強迫症(OCD)

病気や汚染への恐怖などの強迫観念と、確認・洗浄などの強迫行為が見られる場合がある

全般不安症

健康だけでなく、仕事、家族、生活など幅広い事柄について過度な心配が続く

パニック症

突然の強い恐怖や身体症状を伴うパニック発作と、その再発への不安などが中心となる

例えば、身体症状がほとんどないにもかかわらず、がんなどの重い病気にかかっているのではないかと強く心配する場合には、病気不安症の可能性を検討します。

一方、強い腹痛や頭痛などの身体症状があり、その症状に対する過度な不安や行動が中心となる場合には、身体症状症などを考慮します。

ただし、これらの疾患は症状が重なることもあり、身体症状の有無だけで区別できるわけではありません。

診断では症状の経過や不安の対象、確認行動の特徴などを総合的に評価します。

病気不安症の治療

病気不安症の治療では、病気に対する過度な不安を和らげ、健康状態へのとらわれや繰り返しの確認行動を減らしていくことを目指します。

主な治療法には、認知行動療法(CBT)などの心理療法があり、症状や併存する精神疾患に応じて薬物療法を検討する場合もあります。

それぞれの治療法について詳しく解説します。

認知行動療法

認知行動療法(CBT)は、病気不安症に対して有効性が研究されている代表的な心理療法です。

病気不安症では、身体のわずかな変化を重大な病気の兆候と考え、不安を解消するために繰り返し身体を確認したり、インターネットで病気について調べたりすることがあります。

こうした行動によって一時的に安心できても、再び身体の変化が気になり、不安が強まるという悪循環が生じる場合があります。

認知行動療法では、こうした考え方や行動のパターンを整理し、不安への対処方法を身につけていきます。

具体的には、以下のような方法を用います。

治療方法

内容

認知再構成

身体の変化を重大な病気と結びつける考え方を検討し、別の可能性も考えられるようにする

行動実験

病気について繰り返し検索しないなど、普段と異なる行動を試し、不安の変化を確認する

曝露・反応妨害

健康に関する不確実性や不安に段階的に向き合い、過剰な確認行動を減らす

注意の調整

身体感覚に集中しすぎている状態に気付き、日常生活の活動へ注意を向け直す

例えば、頭痛が起きるたびに脳腫瘍を疑い、何度も検索してしまう場合には、検索する頻度を段階的に減らす練習を行うことがあります。

ただし、認知行動療法は必要な医療機関への受診や検査を我慢する治療ではありません。

身体疾患の可能性を適切に評価したうえで、過剰な確認行動や回避行動を調整することが重要です。

治療では、心理療法に加えて、必要に応じて睡眠や生活リズムの改善、ストレスへの対処なども組み合わせます。

薬物療法

認知行動療法のような精神療法は、病気不安症の中心的な治療法ですが、不安やうつ症状が強い場合は、薬物療法が必要に応じて行われます。

病気不安症の薬物療法では、主に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬が検討されます。

SSRIは、脳内のセロトニン神経伝達に作用する薬剤で、病気に対する過度な不安や、併存する抑うつ症状などの改善が期待されます。

症状の程度や併存する精神疾患などを考慮し、認知行動療法(CBT)などの心理療法と組み合わせて治療を行う場合もあります。

病気不安症の克服のためにはまず受診を

病気不安症は治し方のない病気ではありませんが、本人一人で克服するのは難しい病気です。

適切な治療を受けるためには専門科の受診が必要ですが、病気不安症の人は自身のことを身体の病気だとは考えても、心の病気とは考えないことが一般的です。

そのため病気不安症の治療には、心の病気であることを自覚することが重要となります。

オンライン診療・オンラインカウンセリングの『かもみーる』では、病気不安症に心当たりのある人でも相談しやすいオンラインでの利用が可能です。

受診したことのない精神科や心療内科は敷居が高く感じるかもしれませんが、病気かもしれないと悩むことが多い人は、オンラインでのご予約をぜひ一度お試しください。

この記事のテーマを相談できる医師

よくあるご質問

病気不安症かどうか、自分でチェックする方法はありますか?

病気不安症では、重い病気にかかっているのではないかという不安が続き、身体の状態を繰り返し確認したり、病気について過度に調べたりすることがあります。 また、検査で異常が見つからなくても安心できない場合や、反対に病気が見つかることを恐れて受診を避ける場合もあります。 ただし、こうした特徴だけで病気不安症と診断することはできません。診断には症状の持続期間や生活への影響、身体疾患の可能性などを総合的に評価する必要があります。

病気かもしれないという不安が止まらないときは、どうすればよいですか?

まずは、身体の状態を繰り返し確認したり、インターネットで病気について調べ続けたりする行動が、不安を一時的に和らげる一方で、長期的には不安を維持していないか振り返ることが大切です。 病気不安症では、認知行動療法(CBT)などを通して、病気に対する考え方や確認行動を見直していきます。 ただし、新たな身体症状や症状の悪化がある場合には、不安によるものと決めつけず、必要な医学的評価を受けることが重要です。

病気不安症は治療によって改善しますか?

はい。病気不安症は、適切な治療によって症状の改善が期待できます。 主な治療法には認知行動療法(CBT)があり、病気に対する過度な不安や、繰り返しの確認行動、受診を避ける行動などへの対処を学びます。 また、症状の程度や併存する精神疾患に応じて、SSRIなどの抗うつ薬を検討する場合もあります。ただし、治療効果には個人差があり、継続的な支援が必要になることもあります。

この記事の監修者

赤堀 将太郎

医療法人社団弘愛会理事長

赤堀 将太郎

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