投稿日 2026年10月18日
「文章を読むのに時間がかかる」「漢字を何度練習しても覚えられない」「計算が極端に苦手」など、特定の学習に困難を感じる場合、学習障害(限局性学習症・SLD)が関係していることがあります。
学習障害は、読む・書く・計算するといった特定の能力に困難が生じる神経発達症の一つです。
この記事では、学習障害の特徴や原因、大人・子どもにみられる症状、診断基準や検査方法、治療・支援方法について、わかりやすく解説します。
投稿日 2026年10月18日

「文章を読むのに時間がかかる」「漢字を何度練習しても覚えられない」「計算が極端に苦手」など、特定の学習に困難を感じる場合、学習障害(限局性学習症・SLD)が関係していることがあります。
学習障害は、読む・書く・計算するといった特定の能力に困難が生じる神経発達症の一つです。
この記事では、学習障害の特徴や原因、大人・子どもにみられる症状、診断基準や検査方法、治療・支援方法について、わかりやすく解説します。

学習障害(LD)は、読む・書く・計算するといった特定の学習技能の習得や使用に著しい困難が生じる状態を指します。
医療分野ではDSM-5-TRに基づき「限局性学習症(Specific Learning Disorder:SLD)」と呼び、「限局性学習障害」という表記も使われます。
神経発達症の一つで、知的能力全体の水準とは分けて評価します。
「学習障害(LD)」は教育・支援の文脈で使われる広い概念です。
文部科学省の教育上の定義では、全般的な知的発達に基本的に遅れがなく、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する能力の一部に著しい困難がみられる状態を指します。
一方、「限局性学習症(SLD)」はDSM-5-TRにおける医学的診断名で、読字・書字表出・算数という学業技能の困難を中心に評価します。
したがって、教育上のLDと医学上のSLDは重なる部分が大きいものの、評価する領域と判定の目的が異なります。
「限局性学習障害」という表記も広く用いられますが、本記事ではDSM-5-TRの日本語診断名に合わせて「限局性学習症」と表記します。
ICD-11では発達性学習症(Developmental learning disorder)に相当する診断概念があり、分類体系によって名称と記述に違いがあります。
本記事では、一般的に使われる「学習障害」という名称を用いながら、医学的な診断・治療については限局性学習症(SLD)を中心に解説します。

学習障害(限局性学習症・SLD)は、主に「読むこと」「書くこと」「計算すること」の3つの領域に困難がみられる神経発達症です。
苦手な領域や困難の程度には個人差があり、例えば、読むことだけが苦手な人もいれば、読み書きの両方に困難がみられる人もいます。
それぞれの特徴について、詳しく解説します。
文字と音の対応を覚えにくい、正確な読み取りに時間がかかる、音読が遅いなどの特徴があります。
読む作業に多くの労力を使うため、文章の理解にも影響する場合があります。
診断では困難の持続性や程度、学習歴を確認します。
漢字や綴りの誤りが多い、文章を組み立てにくい、文法や句読点の使い方に困難があるなどの特徴があります。
口頭で説明できても作文が難しい場合があります。
字が乱れる・手書きが遅い原因には発達性協調運動症などもあり、区別が必要です。
数の大小や数量の理解、基本計算、計算手順、数学的推論に困難が生じます。
繰り上がりを繰り返し間違える、数のまとまりが理解しにくいといった例があります。
学習機会の不足や算数への不安でも成績は下がるため、背景を確認します。

子どもの学習障害(限局性学習症・SLD)は、学校で読み書きや計算を学び始める時期に気づかれることが多く、年齢や学習内容によって困難の現れ方が異なります。
小学校低学年では、次のような特徴がみられることがあります。
小学校高学年から中学生以降では、学習内容が複雑になるにつれて、次のような困難が目立つことがあります。
このような特徴は、学習障害以外の要因でもみられるため、特定の学習技能に困難が集中しているか、適切な指導を受けても困難が続いているかを確認することが重要です。
また、学習上の困難が続くと、宿題を嫌がる、勉強に自信をなくす、学校に行くことに不安を感じるなど、心理面や行動面に影響する場合もあります。
子どもが勉強を嫌がる場合には、努力や意欲の問題として捉えるだけでなく、どの学習作業に負担を感じているのかを確認し、本人に合った支援方法を検討することが大切です。

学習障害(限局性学習症・SLD)は子どもの頃から特徴がみられる神経発達症ですが、大学進学や就職をきっかけに、初めて学習上の困難が明らかになることがあります。
例えば、学生時代には家族の手助けや本人の工夫によって対応できていても、社会人になって大量の資料を読んだり、報告書を作成したりする機会が増えることで、困難が目立つようになる場合があります。
大人の学習障害では、次のような特徴がみられることがあります。
また、学習障害のある人の中には、読み上げソフトや文章のテンプレートなどを活用し、苦手な作業を補いながら仕事を続けている人もいます。
実際に、成人の読字障害(ディスレクシア)と就労に関する33研究を対象としたシステマティックレビューでは、読み書きの困難に加えて、職場での支援や補助技術の利用が就労に関係する要因として報告されています。
参考:成人のディスレクシアと就労に関するシステマティックレビュー
大人の女性にも同じ診断基準が適用されます。 読字障害の男女差を検討したメタ解析では、男性の方が読字の困難を示す割合が高いことが報告されていますが、女性にも読字障害はみられます。
参考:読字障害の男女差に関するメタ解析(Quinn, 2018)
なお、成人になって初めてSLDの診断を検討する場合には、現在の仕事上の困難に加えて、子どもの頃の学習状況を確認することが重要です。
例えば、「小学生の頃から音読が苦手だった」「漢字の書き取りに人一倍時間がかかっていた」といった学習歴は、診断の参考になります。
また、ADHDによる不注意、睡眠不足、ストレス、教育機会の違いなども仕事上の困難に関係するため、必要に応じて学業技能の検査を行い、背景を総合的に評価します。
参考:成人の限局性学習症の診断に関するレビュー(Harrison & Sparks, 2026)
「文章が書きにくい」「指示を理解しにくい」「計算ミスが多い」といった困難には、SLD以外にもADHD、言語能力の問題、疲労、学習・職務経験などが関係します。
見分ける手がかりは、子どもの頃から特定の学業技能の困難が続いているか、そして困難が生じる作業を具体的に確認することです。
困りごと | SLDで注目する特徴 | 併せて検討する要因 |
文章を読むのが遅い | 文字・単語を正確かつ流暢に読むことが難しい | ADHDによる注意の逸れ、言語理解、疲労 |
メール・報告書が書きにくい | 綴り・文法・文章構成に持続的な困難 | 語彙・語用、推敲習慣、職務経験 |
計算ミスが多い | 数量・位取り・計算手順の習得が難しい | ADHDによる不注意、疲労、業務への不慣れ |
指示を誤解する | 書かれた指示を読む困難が影響する場合がある | 口頭を含む言語理解、注意、ワーキングメモリ |
例えば、口頭では自然に説明できる一方、作文や報告書では文法・文章構成に一貫した困難がある場合、書字表出の技能を評価する手がかりになります。
一方、口頭で受けた指示も繰り返し別の意味に理解する場合は、書字技能に加えて言語理解、注意機能、情報整理の過程も確認します。
不自然な熟語や名詞止めが多い、ビジネスメールの敬語が不適切といった特徴だけでSLDと判断することはできません。
文書の目的に合った書き分けには、文章技能のほかに社会的なコミュニケーションや経験も関係します。
診断では、幼少期からの学習歴、現在の生活への影響、適切な指導を受けても続く困難を確認し、必要に応じて標準化された読字・書字・算数の評価を行います。
ADHD、ASD、言語症などの疾患との鑑別も総合的に検討していきます。
参考:限局性学習症の評価とマネジメントに関する臨床実践ガイドライン

DSM-5-TRでは、下記A~Dを総合して診断します。
A:読字の正確さ・流暢さ、読解、綴り、書字表出、数概念・計算、数学的推論のうち1つ以上の困難が、困難に応じた介入を受けても少なくとも6か月持続すること、
B:年齢から期待される学業技能より著しく低く、学業・職業・日常生活に支障があること、
C:学齢期に始まること、
D:知的発達症、矯正されていない感覚障害、他の神経・精神疾患、心理社会的逆境、指導言語の習熟不足、教育機会の不足などで、より適切に説明される状態ではないこと
参考:米国精神医学会:Specific Learning Disorderの診断
診断では障害のある学業領域(読字・書字表出・算数)と重症度を特定します。
知能指数と学力の差が一定以上あることを必須とする旧来の方法とは異なり、学業技能の評価、臨床面接、学習歴、支援への反応を組み合わせます。
参考:International Dyslexia Association:DSM-5の変更点
教育現場では医学的な確定診断だけを出発点とせず、学習上の困難を把握して支援内容を決めます。
文部科学省の判断基準(試案)は、
①知的能力の状況
②聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する技能の著しい困難
③学習機会や視聴覚の状態、教育環境
などの関連要因を、複数の資料から総合的に検討する考え方です。
これは学校での教育的判断のための枠組みであり、DSMの医学的診断基準とは目的が異なります。

①初診で発達歴、学齢期からの学習歴、家庭・学校・職場での困難、既往歴を確認します。
②視力・聴力、教育機会、使用言語、知的発達、ADHD・ASDなどの併存や鑑別を検討します。
③必要に応じて標準化された読字・書字・算数の技能検査、認知検査、学習成果物の分析を行います。
④臨床所見と検査結果を統合し、DSM-5-TR等の基準に照らして診断します。
⑤本人・家族・学校・職場と共有できる支援計画につなげます。
検査名や組み合わせは年齢・言語・主訴に応じて変わります。
発達歴、学校での学習状況、過去のノートや作文、本人・家族の困りごとを確認します。
必要に応じて標準化された読み書き・算数の技能検査を実施します。
日本語の読み書きではSTRAW-Rなどが用いられる場合があります。
WISC・WAISなどの知能検査は認知特性の把握に役立ち、SLDの診断には学習技能の評価と臨床的な情報を組み合わせます。
検査内容は年齢と施設により異なります。
インターネット上の簡易チェックは、専門家への相談を考えるきっかけとして活用できます。
確定診断には発達歴や学習歴、技能評価などを組み合わせた総合的な判断が必要です。
□ 文章を読む速さや正確さが同年代と比べ著しく低い
□ 練習を重ねても特定の読み書き・計算技能が身に付きにくい
□ 口頭では説明できるのに文章にまとめると極端に難しい
□ 学習上の困難が長く続き、学校や仕事に支障がある
□ 子どもの頃から似た困難があった
該当項目がある場合は、視聴覚機能、教育歴、注意機能なども含めた専門的な評価が役立ちます。
参考:International Dyslexia Associationのアセスメントガイドライン(英語)
①本人・保護者・教員から、困難が起こる教科や場面を確認します。
②授業中の様子、学習成果物、学力・認知面の情報を集め、困難の背景を整理します。
③学校の特別支援教育コーディネーター等を中心に、読み上げ、教材調整、個別指導などを検討します。
④実施後の学習状況を確認し、支援を調整します。
必要に応じて医療機関や専門機関と連携します。
教育的支援は医学的診断の有無にかかわらず、具体的な困りごとに基づいて検討できます。

学習障害(限局性学習症・SLD)の発症には、脳の情報処理に関わる発達の特徴や遺伝的要因などが複雑に関係していると考えられています。
特に、文字を読むことに困難が生じる読字障害(ディスレクシア)では、脳機能や遺伝子に関する研究が進んでおり、学習障害の原因を理解する手がかりとなっています。
学習障害では、読む・書く・計算するといった特定の学習技能に関わる情報処理に特徴がみられます。
例えば、読字障害(ディスレクシア)では、文字と音を結びつける処理(音韻処理)や、文字・単語を素早く認識する処理に困難が生じることがあります。
脳画像研究では、読字障害のある人とない人を比較した際に、左側の側頭頭頂領域や後頭側頭領域など、読むことに関わる脳のネットワークの活動に違いがみられることが報告されています。
ただし、こうした違いは集団を比較した研究結果であり、脳画像検査だけで個人の学習障害を診断することはできません。
参考:読字障害に関わる脳のネットワークについての研究(Richlan, 2012)
学習障害には遺伝的要因も関係しており、家族内で似た学習上の困難がみられることがあります。
特に読字障害については、双生児研究などから、遺伝率がおよそ40〜70%と推定されています。
ここでいう遺伝率とは、集団内でみられる読字能力や読字障害の個人差のうち、遺伝的な違いによって説明される割合を示す指標です。
遺伝率についての詳しい考え方については、「ADHDは遺伝する?親から子どもへの遺伝確率や父親・母親との関係を解説」にて解説しています。
また、2022年に医学誌『Nature Genetics』に掲載された大規模研究では、読字障害の診断歴を自己申告した成人約5万2,000人と、対照群約109万人の遺伝情報を解析し、読字障害と統計学的に関連する42か所のゲノム領域が特定されました。
この研究は、読字障害に多数の遺伝的要因が関与していることを示しています。
一方、それぞれの遺伝的要因が及ぼす影響は小さく、現時点では遺伝子検査によって個人の学習障害を確定診断する段階には至っていません。
参考:読字障害に関連する42の遺伝子座を特定した大規模研究(Doust et al., 2022)
学習障害の発達には、遺伝的要因に加えて、学習経験や言語環境なども関わります。
例えば、読み書きの技能は、使用する言語の文字体系や学習経験によって発達の仕方が異なります。
また、本人に合った指導を早期から受けることは、学習技能の習得や日常生活での困難の軽減につながります。
一方、学習機会の不足や使用言語への習熟不足によって生じる学習上の困難は、医学的な診断では区別して評価する必要があります。
学習障害が疑われる場合には、本人の発達歴や家族歴、学習環境などを総合的に確認し、困難の背景を把握することが大切です。

学習障害(限局性学習症・SLD)は、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)と同じく、神経発達症に分類されます。
いずれも学習上の困難がみられることがありますが、SLDでは読む・書く・計算するといった特定の学業技能の習得に、ADHDでは注意の調整や衝動性に、ASDでは社会的コミュニケーションや行動・興味の特徴に注目して評価します。
また、これらの疾患は併存する場合もあるため、それぞれの特徴を確認することが重要です。
疾患 | 主な特徴 | 学習上の困難の例 |
SLD(限局性学習症) | 特定の学業技能の習得に持続的な困難 | 文字・単語を正確に読むことが難しい、計算技能を習得しにくい |
ADHD | 不注意、多動性・衝動性 | 読み飛ばし、ケアレスミス、課題管理の困難 |
ASD | 社会的コミュニケーションと、限定的・反復的な行動や興味の特徴 | 文脈や暗黙の意味の理解の難しさ、感覚刺激による集中の困難 |
知的発達症 | 知的機能・適応機能の全般的な困難 | 複数の学習領域や日常生活にわたる困難 |
ADHDでは、不注意やワーキングメモリ、実行機能の問題などによって、文章の読み飛ばし、計算ミス、課題の提出忘れなどが生じることがあります。
一方、SLDでは、文字と音を結びつけること、単語を正確に読むこと、綴りを覚えること、数の概念を理解することなど、特定の学業技能そのものの習得に持続的な困難がみられます。
例えば、文章を読むのが苦手な場合でも、ADHDでは注意がそれて行を読み飛ばすことがあるのに対し、読字障害では一文字ずつ読むことに時間がかかったり、単語を正確に読めなかったりすることがあります。
ただし、ADHDとSLDは併存することもあります。
ADHDとSLDの関連を調べた研究では、ADHDのある子どもの約3分の1にSLDが併存するとの報告があります。
また、読字障害とADHDには、遺伝的要因や認知機能の一部に共通する特徴があることも指摘されています。
そのため、診断では注意機能だけでなく、読字・書字・算数の技能をそれぞれ評価し、困難の背景を確認します。
ASDでは、社会的コミュニケーションの特徴や、興味・行動の偏り、感覚過敏などが学習に影響することがあります。
例えば、文章を読むことができても、登場人物の気持ちを推測したり、文脈から省略された意味を理解したりすることに難しさを感じる場合があります。
一方、読字障害を伴うSLDでは、文字や単語を正確かつ流暢に読む技能そのものに困難がみられることがあります。
2013年に発表された36研究を対象としたメタ解析では、ASDのある人は対照群と比較して読解力に困難がみられる傾向が報告されています。
ただし、ASDのある人の読字能力には大きな個人差があります。
また、ASDとSLDが併存する場合には、文字を読む技能と文章の意味を理解する技能の両方に困難が生じることがあります。
診断では、文字を正確に読めるか、文章の内容を理解できるか、社会的コミュニケーションにどのような特徴があるかを分けて評価することが重要です。
参考:ASDにおける読解能力のメタ解析(Brown et al., 2013)
知的発達症では、知的機能と適応機能の両方に発達上の困難がみられ、学習だけでなく、日常生活や社会生活のさまざまな場面に影響が及びます。
一方、SLDでは、読む・書く・計算するといった特定の学業技能に、本人の年齢や発達水準から期待される程度を下回る困難がみられます。
例えば、会話や日常生活では年齢相応の理解力がありながら、文章を読むことだけに著しい困難がある場合には、SLDを検討します。
知的発達症がある場合でも、特定の学業技能の困難が全般的な知的発達の水準から予想される程度を明らかに超えていれば、SLDの併存を検討することがあります。
診断では、知能検査の結果に加えて、適応機能、学習歴、読字・書字・算数の技能を総合的に評価します。

学習障害(限局性学習症・SLD)の治療では、苦手な学習技能に合わせた専門的な指導と、学習や仕事を進めやすくする環境調整を組み合わせることが重要です。
例えば、文字を読むことが苦手な場合には、文字と音の関係を段階的に学ぶ指導を行い、文章の内容を理解する際には音声教材を活用します。
また、学習上の困難が長期間続くと、自信の低下や不安、学校への行きづらさなどにつながる場合もあるため、心理面への支援も大切です。
支援方法は、本人の年齢や困難の程度、得意な能力などを踏まえて個別に検討します。
読字障害(ディスレクシア)では、文字を正確に読むことや、文章を滑らかに読むことに困難がみられます。
支援では、文字と音の対応を学ぶ指導や、音韻認識を高める練習などを行います。
例えば、次のような方法があります。
英語圏の研究では、音韻認識や文字と音の対応を明示的・体系的に指導する方法について、有効性を支持する研究が報告されています。
ただし、日本語と英語では文字体系が異なるため、実際の指導では、ひらがな・カタカナ・漢字それぞれの特徴を考慮することが重要です。
参考:読字障害に対する介入の有効性を検討したメタ解析(Galuschka et al., 2014)
書字に困難がある場合には、文字の形を覚えること、正しい綴りで書くこと、文章を組み立てることなど、苦手な技能に合わせて支援します。
例えば、次のような方法があります。
例えば、漢字を書くことに強い困難がある子どもでは、何度も書き写す練習だけでなく、漢字の構成を理解する学習と、ICT機器を活用した文章作成を組み合わせることが考えられます。
書字の支援では、文字を書く技能の習得を目指す指導と、自分の考えを文章で表現するための補助技術を併用することが重要です。
参考:書字指導の有効性に関するメタ解析(Graham & Perin, 2007)
算数障害(ディスカリキュリア)では、数の大小や数量の理解、計算手順の習得、文章題の理解などに困難がみられることがあります。
支援では、数の概念を具体的に理解することから始め、計算や問題解決へと段階的に学習を進めます。
例えば、次のような方法があります。
例えば、繰り上がりのある足し算が苦手な場合には、具体物を使って「10のまとまり」を作る練習を行い、その後に数字だけの計算へ移行する方法があります。
また、算数の学習支援では、本人がどの段階でつまずいているかを把握し、習得状況に応じて指導内容を調整することが重要です。
参考:米国教育科学研究所(IES):数学に困難のある児童への指導ガイド
学習障害のある人が能力を発揮するためには、学校や職場での合理的配慮も重要です。
合理的配慮とは、障害によって生じる困難を軽減し、教育や就労の機会を確保するために、個々の状況に応じて行う調整のことです。
学校での合理的配慮の例
例えば、文章を読む速度が遅い子どもでは、試験時間を延長することで、読字速度の影響を軽減し、学習内容の理解度を評価しやすくなる場合があります。
職場での合理的配慮の例
合理的配慮は、本人の困難や業務・学習内容に応じて検討し、実施後も効果を確認しながら調整します。
学習障害では、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの神経発達症が併存する場合があります。
また、学習上の困難が続くことによって、不安や抑うつ、自己肯定感の低下などが生じることもあります。
SLDの読字・書字・算数の困難そのものに対して、標準的な薬物療法は確立されておらず、専門的な教育的介入が治療の中心となります。
一方、ADHDが併存している場合には、ADHDに対する薬物療法によって注意機能や課題への取り組みやすさが改善することがあります。
例えば、ADHDと読字障害を併存する子どもでは、ADHDの治療によって授業に集中しやすくなり、読字に対する専門的な指導を受けやすくなる可能性があります。
ただし、ADHDの薬物療法だけで読字障害の中核的な困難が十分に改善するとは限らないため、両方の特性に応じた支援を組み合わせます。
また、不安症や抑うつ状態を伴う場合には、心理療法や必要に応じた薬物療法などを検討します。
本人の得意な能力を活かしながら、学習技能への支援と心理面への治療を並行して進めることが大切です。
子どもは学校の担任・特別支援教育コーディネーター、教育相談窓口、小児科・児童精神科などが相談先です。
大人は発達障害を診療する精神科などや発達障害者支援センターに相談できます。
専門的なSLD検査の実施状況は医療機関により異なるため、事前に確認しましょう。
学習障害(限局性学習症・SLD)は、読字・書字表出・算数などの特定技能に持続的な困難が生じる神経発達症です。
困難のある技能とその程度を具体的に確認し、適切な支援や環境調整につなげることが重要です。
本人の強みを生かした学習・就労の方法を一緒に考えていきましょう。
宮城県で学習障害の相談を検討されている方は、かもみーる心のクリニック仙台院の診療案内をご確認ください。
学習障害(限局性学習症・SLD)の可能性を把握するために、チェックリストや学習技能の検査が役立つことがあります。ただし、医学的な診断では、読字・書字・算数の技能だけでなく、子どもの頃からの学習歴、困難の持続期間、学習や日常生活への影響などを総合的に評価します。そのため、セルフチェックは相談のきっかけとして活用し、学習障害が疑われる場合には、専門の医療機関などで評価を受けることが大切です。
はい。学習障害は子どもの頃から特徴がみられる神経発達症ですが、大人になって初めて診断されることもあります。例えば、学生時代には周囲の援助や本人の工夫によって対応できていても、就職後に大量の資料を読んだり、報告書を作成したりする機会が増えることで、困難が目立つ場合があります。診断では、現在の仕事上の困難に加えて、幼少期からの学習歴や読字・書字・算数の技能を確認します。
学習障害による困難は、本人に合った専門的な指導や環境調整によって、改善が期待できます。例えば、読字障害では文字と音の対応を学ぶ練習、書字の困難には文章構成の指導、算数障害では数の概念を段階的に理解する指導などが行われます。また、読み上げソフトや音声入力、試験時間の調整といった合理的配慮を組み合わせることで、学習や仕事への負担を軽減できます。改善の程度には個人差がありますが、得意な能力を活かしながら、長期的に学習や仕事を続けられる環境を整えることが重要です。
この記事の監修者
医療法人社団弘愛会理事長
赤堀 将太郎こんにちは、赤堀将太郎と申します。 心療内科のクリニックに受診するまでに心理的なハードルが大きいかと思います。 そういった場合、「かもみーる」で病院に行くべきかどうかなど気軽にご相談ください。 オンラインで御対応いたします。 また現在、どうしても仕事がつらくて休職したいと思っているが病院に行くのを迷っている方に対して、場合によっては診断書を発行することも可能です。(オンライン診察となります) そういった場合も遠慮なくお申し付けください。
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