投稿日 2026年10月18日
「自分にADHDがあると、子どもにも遺伝する?」「父親と母親のどちらの影響が大きい?」。子どもの発達を考えるとき、こうした疑問を持つ方は多いでしょう。
ADHD(注意欠如・多動症)には、遺伝的な要因が大きく関わっています。
一方で、親にADHDがあるからといって、子どもの将来が決まるわけではありません。
この記事では、研究でわかっていることを、数字の意味から日常生活での対応まで順に解説します。
投稿日 2026年10月18日

「自分にADHDがあると、子どもにも遺伝する?」「父親と母親のどちらの影響が大きい?」。子どもの発達を考えるとき、こうした疑問を持つ方は多いでしょう。
ADHD(注意欠如・多動症)には、遺伝的な要因が大きく関わっています。
一方で、親にADHDがあるからといって、子どもの将来が決まるわけではありません。
この記事では、研究でわかっていることを、数字の意味から日常生活での対応まで順に解説します。

ADHDは家族の中でみられやすい特性です。
親にADHDがある子どもでは、一般集団と比べてADHDと診断される割合が高いことが、家族研究などから報告されています。
その背景には、たくさんの遺伝的な要因が少しずつ関わっています。
身長にさまざまな遺伝子が関係するのと似た仕組みです。
また、同じような特性があっても、学校や家庭での過ごしやすさ、周囲のサポートによって生活上の困りごとは変わります。
ADHDの診断では、特性があるかどうかに加えて、その特性によって日常生活にどの程度の支障が生じているかを確認します。
家族に似た特徴があっても、本人の様子を丁寧にみることが大切です。
ADHDの基本的な症状については、ADHDの特徴と診断で詳しく解説しています。

ADHDの遺伝率は、双子を対象とした研究などから70〜80%程度と推定されています。
遺伝率とは、ある集団でみられる個人差に、遺伝的な要因がどの程度関わっているかを示す数字です。
研究ではADHDと診断されていない人も含め、不注意や多動性などの症状の強さを数値化します。
そして、一卵性双生児と二卵性双生児で、症状がどの程度似ているかを比較します。
① 双子のADHD症状スコアの比較例
点数が高いほど、不注意や多動性などの特徴が強いと仮定した架空の例です。
双子の種類 | 1人目 | 2人目 | 点数の差 |
一卵性双生児 A組 | 3点 | 4点 | 1点 |
一卵性双生児 B組 | 8点 | 7点 | 1点 |
二卵性双生児 C組 | 3点 | 8点 | 5点 |
二卵性双生児 D組 | 7点 | 2点 | 5点 |
※説明用の架空データです。実際の研究結果ではありません。
② 多数の双子を調べた場合の相関係数
実際の研究では、多数の双子について症状の点数を調べ、双子同士の点数がどの程度似ているかを統計的に分析します。
双子の種類 | 相関係数(仮定) | 意味 |
一卵性双生児 | 0.80 | 症状の強さがよく似ている |
二卵性双生児 | 0.45 | 一卵性双生児より類似性が低い |
※説明用の架空データです。実際の研究結果ではありません。
この仮定では、簡易的な計算によって遺伝率70%が得られます。
2 × (0.80 − 0.45) = 0.70(70%)
※これは双生児研究で用いられる簡易的な計算例です。実際の研究では、共有環境なども考慮した統計モデルによって遺伝率を推定します。
こうした研究から、ADHDの症状の強さにみられる個人差の約70〜80%は、遺伝的な違いによって説明できると推定されています。
また、遺伝率は研究対象の年齢や評価方法、集団が置かれた環境によって変わります。
研究結果を読むときは「何を、誰に、どのように調べた数字なのか」を確かめるようにしましょう。
参考:MedlinePlus GeneticsのADHD解説
親がADHDの場合、子どもがADHDと診断される可能性は一般集団より高くなります。
親にADHDがある子どもを対象とした4つの研究を統合した解析では、ADHDの有病率は約38%と推定されています。
ただし、個別の研究では9〜57%と大きな幅があり、子どもの年齢や診断方法などによって結果が異なります。
親がADHDの場合は、子どもの発達や日常生活の様子を見守り、気になる症状があれば医療機関に相談するとよいでしょう。

ADHDに関係する遺伝的な要因は、父親と母親の両方から受け継がれます。
父親にADHDがある場合、息子にも娘にもADHDの特性が現れる可能性があります。母親にADHDがある場合も同様です。
一部の研究では、母親にADHDがある場合の方が、父親にADHDがある場合よりも子どものADHD診断との関連が強いと報告されています。
ただし、この結果には診断のされやすさや家庭環境なども関係するため、母親由来の遺伝的な影響が父親より強いことを直接示すものではありません。
参考:Faraoneら(2021):親のADHDと子どものADHD発症リスクに関する大規模家族研究
両親ともにADHDがある場合は、片方の親だけにADHDがある場合よりも、子どもがADHDになる可能性が高まると考えられています。
また、親子でADHDの特性が似ていても、症状の強さや現れ方には個人差があります。子どもの得意なことや苦手なことを把握し、適切な支援につなげることが大切です。

ADHDは遺伝的な影響が強いため、親子だけでなく、兄弟姉妹や祖父母などの親族にも似た特性がみられることがあります。
兄弟姉妹の一人がADHDの場合、ほかの兄弟姉妹もADHDになる可能性は一般集団より高くなります。
例えば、兄はADHDと診断されていても、妹には目立った症状がない場合があります。また、兄は多動性が強く、妹は不注意が中心となるなど、同じ家族でも症状の現れ方はさまざまです。
これは、兄弟姉妹で受け継ぐ遺伝的な要因の組み合わせが異なり、成長過程や生活環境にも違いがあるためです。
祖父母にADHDがある場合も、孫にADHDの特性が現れる可能性があります。
例えば、祖父に強い不注意の傾向があり、父親には目立った症状がなく、孫がADHDと診断されるケースも考えられます。
ADHDには多数の遺伝的要因が関わるため、家族の中で症状の強さや現れ方に違いが生じます。
家族にADHDの診断歴や似た特徴がある場合は、診察時に伝えることで、子どもの発達の特徴を理解する手がかりになります。
ADHDと同じく、自閉スペクトラム症(ASD)や限局性学習症(SLD)などの発達障害にも、遺伝的な要因が関係しています。
例えば、ADHDとASDには共通する遺伝的な要因があることが研究で報告されています。
そのため、親にADHDがあり、子どもにASDの特性がみられるなど、家族の中で異なる発達障害の特徴が現れることもあります。
ただし、発達障害の種類によって遺伝的な影響の大きさや症状の現れ方は異なります。
発達障害全般の特徴については、発達障害の種類と特徴をご覧ください。

ADHDには、注意力や衝動性を調整する脳の働きが関係しています。
特に、物事に集中したり、計画を立てたりする「前頭前野」や、行動や意欲の調整に関わる脳の回路について研究が進められています。
また、脳の神経細胞同士で情報を伝える「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」という物質も、注意力や行動の調整に重要な役割を果たしています。
例えば、授業中に周囲の音が気になって集中が途切れたり、思いついたことをすぐに行動に移したりする特徴には、こうした脳の働きが関係していると考えられています。
ADHDに関連する多数の遺伝的要因は、脳の発達や神経細胞の働きに影響する可能性があり、現在も研究が進められています。
参考:ADHDの脳の仕組みと遺伝的要因に関する研究(2016年)
近年の研究では、ADHDに関連する遺伝子の領域が次々と見つかっています。
2023年の大規模研究では、ADHDのある38,691人と対照186,843人を解析し、統計学的に関連する27の領域が報告されました。
この研究の詳細は、Demontisらの2023年のゲノム研究に掲載されています。
ただし、一つひとつの遺伝的変異の影響は一般に小さく、多くの変異が組み合わさってリスクに関わります。
こうした研究はADHDの仕組みを理解するうえで重要ですが、現在の診療では、遺伝子検査だけでADHDを診断する方法は確立していません。
多数の遺伝的変異をまとめて評価する「ポリジェニックリスクスコア(PRS)」も研究されています。
現時点では集団によって予測精度に差があり、個人の診断には発達歴や生活上の支障などを確認する臨床評価が中心となります。
現在のADHDの診断では、遺伝子検査よりも、本人の症状や発達歴、日常生活への影響を確認することが重要です。

ADHDの発症には、遺伝的な要因だけでなく、妊娠中や出生時の環境なども関係すると考えられています。
例えば、早産や低出生体重で生まれた子どもは、ADHDと診断される割合が高いことが研究で報告されています。
ただし、こうした関連には遺伝的な背景なども影響するため、現在も研究が進められています。
また、睡眠不足やストレス、家庭・学校での環境などは、ADHDの症状の現れ方にも影響します。
例えば、睡眠不足が続くと集中力が低下し、落ち着きのなさが目立つことがあります。
また、授業の内容が難しすぎたり、周囲が騒がしかったりすると、不注意の症状が強く現れる場合があります。
このように、ADHDには遺伝的な要因と環境要因が関係しており、生活環境を整えることで、日常生活の困りごとを軽減できる場合があります。
ADHDの発症に関わる要因については、ADHDの原因と環境要因でも詳しく解説しています。
親子でADHDの特性が似ていても、症状の現れ方は一人ひとり異なります。
例えば、父親は仕事の予定管理が苦手で、子どもは授業中にじっと座っていることが難しい、といったケースがあります。
また、母親は忘れ物が多く、子どもは衝動的に発言してしまうなど、親子で異なる特徴が目立つ場合もあります。
ADHDの症状は年齢によっても変化し、子どもの頃は落ち着きのなさ、成人では仕事の段取りや時間管理などが問題になることがあります。
詳しくは、ADHDの症状と特徴をご覧ください。
親にADHDがある場合は、子どもの不注意や多動性、衝動性などの特徴に目を向けるとよいでしょう。
例えば、忘れ物が多い、授業中に集中しにくい、順番を待つことが難しいなどの特徴がみられることがあります。
こうした症状が長く続き、家庭や学校で生活上の支障が生じている場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
診察では、発達歴や家庭・学校での様子を確認し、必要に応じて学習症や自閉スペクトラム症などとの鑑別や併存も評価します。
家庭では予定を見えるようにする、指示を短く伝えるなどの工夫が役立ちます。
詳しくは、ADHDの診断と相談やADHDの治療方法をご覧ください。
ADHDには遺伝的な要因が強く関わり、家族の中で特性がみられることがあります。
ただし、遺伝率と親子間の発症確率は異なる数字です。
親子やきょうだいでも症状の現れ方には個人差があり、周囲の支援によって日常生活の困りごとを軽減できます。
気になる症状が続くときは、発達経過や生活への影響を専門家と一緒に確認しましょう。
親にADHDがある場合、子どもがADHDと診断される可能性は一般集団より高くなります。親にADHDがある子どもを調べた研究では、ADHDの有病率は9〜57%と幅があり、4つの研究を統合した解析では約38%と推定されています。実際の割合は子どもの年齢や診断方法などによって異なります。
ADHDの特性が祖父母と孫にみられ、親には目立った症状がないケースもあります。ADHDには多数の遺伝的要因が関係しており、受け継ぐ組み合わせや症状の現れ方は世代によって異なります。
ADHDに関連する遺伝子の研究は進んでいますが、現時点では遺伝子検査によってADHDの診断や子どもの発症確率を正確に予測することはできません。診断では、本人の症状や発達歴、日常生活への影響などを総合的に評価します。
この記事の監修者
医療法人社団弘愛会理事長
赤堀 将太郎こんにちは、赤堀将太郎と申します。 心療内科のクリニックに受診するまでに心理的なハードルが大きいかと思います。 そういった場合、「かもみーる」で病院に行くべきかどうかなど気軽にご相談ください。 オンラインで御対応いたします。 また現在、どうしても仕事がつらくて休職したいと思っているが病院に行くのを迷っている方に対して、場合によっては診断書を発行することも可能です。(オンライン診察となります) そういった場合も遠慮なくお申し付けください。
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